表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

19/102

【#18】地下16階・第二話:絡みつく枝

 追跡者の刃を弾いた瞬間、周囲の枝が一斉に襲いかかってくる。


 ——まずい。


 この森にいる限り、俺の動きを封じるように魔物の枝が絡みついてくる。まともに立ち回れる状況ではない。


「……クッ!」


 瞬時に身を屈め、最も太い枝の攻撃を回避する。同時にミスティを振り抜き、迫り来る細い枝を両断した。手応えはあるが、完全に切り裂くには至らない。やはりこいつらの防御力は異常だ。


 ——ガギィンッ!


 俺が枝の攻撃をかわした直後、鋭い金属音が響く。

 見ると、追跡者の短剣が魔物の枝とぶつかり、弾かれていた。


「……なるほど」


 こいつらの防御力は、俺だけでなく追跡者にとっても厄介らしい。となれば、この森のギミックを利用しない手はない。

 俺は素早く周囲を見渡し、枝の動きが少ない隙間を見極める。


「森を突っ切る。ミスティ、誘導してくれ」

「了解しました」


 感情のない声が返るのを確認し、俺は即座に前方へ駆け出した。


 ——シュバッ!


 追跡者が空を蹴り、一瞬で俺の真横に並ぶ。

 速い。しかも短剣のリーチを活かし、俺の動きを先読みするように攻撃を繰り出してくる。


「クソ……!」


 右へ回避すると、待ち構えていたかのように魔物の枝が俺の足元を狙う。跳躍してかわすと、今度は上から別の枝が振り下ろされてきた。

 この階の構造は明らかに俺の動きを封じるようにできている。しかも、追跡者の機動力がそれをさらに厄介にしている。


 ——ならば、逆に利用するしかない。


 俺は一瞬、追跡者の動きを観察する。

 こいつは俺の行動をコピーし、最適な攻撃手段を選んでくる。つまり、俺が追跡者の進行ルートを意図的に作り、魔物の枝にぶつかるように仕向ければ——。


「……来い。こっちで相手をしてやる」


 俺は森の奥へと跳び込む。

 追跡者は即座に反応し、俺を追う。短剣を構え、致命傷を狙うように一直線に接近してきた。


 しかし、その瞬間——。


「——ッ!」


 俺が踏み込んだ場所の枝が、突然、四方から勢いよく収束する。

 追跡者の動きが鈍る。足を止めたその一瞬の隙を逃さず、俺は渾身の一撃を叩き込んだ。


「はぁっ!!」


 ミスティの刃が追跡者の胴を斬り裂く。


 ——ドシャッ!


 追跡者が後方へ吹き飛ばされ、枝の群れに飲み込まれる。すぐに起き上がろうとするが、無数の枝が絡みつき、逃げ場を奪っていた。


「……よし」


 追跡者は不死身だが、ダメージを受ければ回復に時間がかかる。今のうちにこの森を抜けなければならない。


「行くぞ、ミスティ」

「了解」


 俺は息を整え、再び前へと走り出した。


 地下16階の攻略は、まだ始まったばかりだ。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ