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【#16】地下17階・第四話:崩れ落ちる前に

 炎の熱が肌を焦がす。

 燃え盛る足場、崩れ落ちる岩盤、空中を飛び交う短剣。

 それら全てを乗り越え、俺は勝ちにいく。


「……ミスティ、行くぞ」

「了解」


 追跡者は依然として飛行能力を駆使しながら、俺の死角を狙って短剣を投擲してくる。

 一方で、ラヴァリザードは崩れゆく足場の上で咆哮を上げ、今にも新たな灼熱のブレスを放とうとしていた。


 ——このままじゃ埒が明かねぇ。


 ならば、俺の方から仕掛ける。


「……ッ!!」


 俺はわざとバランスを崩すように足場の端へと移動した。

 追跡者の目が鋭く光る。


 ……来る。


 俺が今いる足場は、すでに半分崩壊していて、今にも崩れ落ちそうだ。

 だからこそ、奴は俺を仕留めるために突っ込んでくるはず——!


 案の定、追跡者は短剣を構え、空中から一気に距離を詰めてきた。


 ——来い。


 あと……もう少し……


「今だッ!!」


 俺は全力で足場を蹴り、一気に側面へと回り込む。


 直後——


 ズズゥゥゥンッ!!!


 ラヴァリザードの巨大な前足が、俺のいた足場を踏み砕いた。


 その直上には——追跡者。


 奴は突進の勢いを殺せず、直撃を受ける形となった。


「——!」


 追跡者の身体がラヴァリザードの巨体に叩きつけられ、衝撃で短剣を手放す。

 さらに、ラヴァリザードが放ったブレスの余波が巻き込み、奴の全身を焼いた。


「……あばよ!」


 俺はその隙を見逃さなかった。

 ミスティを振るい、空中の追跡者の胸を貫く。


「——……」


 無言のまま、追跡者の身体が消滅していく。

 不死身の奴だが、ダメージを負えばしばらくの間は再生できない。

 今ので、しばらくは姿を見せないはずだ。


 ……残るは、ラヴァリザード。


 奴は足場を踏み砕きながら、最後の抵抗を試みるかのように吼えた。


「……命乞いは、聞き飽きた」


 俺はミスティを構え、跳躍する。


 ——狙うのは、奴の首。


 ラヴァリザードは巨体ゆえに、機動力は低い。

 さらに足場が不安定なせいで、思うように動けていない。

 俺はその隙を突き、一閃。


「……終わりよ」


 ミスティが囁くように呟いた瞬間——


 ザシュッ!!


 ラヴァリザードの首が、一瞬のうちに斬り飛ばされた。

 血飛沫が燃える溶岩へと降り注ぎ、ジュッと音を立てる。

 巨体が足場の上でバランスを崩し、最後の咆哮を上げながら落ちていった。


 そして——


 ドボォン……!


 ラヴァリザードは溶岩の海へと沈んでいった。


 ……勝った。


「……ハァ……ハァ……」


 全身が燃えるように熱い。

 汗が滲み、服の一部は焼け焦げていた。

 それでも、俺は生きている。


「……行くぞ、ミスティ」

「承知しました」


 俺は崩れかけた足場を跳び移りながら、慎重に進む。


 やがて視界の先に——


 地下16階への階段


 その壁には、またしても青白く光るエルゴスの紋章が刻まれていた。


「……またか」


 俺がその横を通り抜けると、紋章は赤く光る。

 お前を監視している、とエルゴスが告げているかのようだ。

 追跡者の発生と関係があるのだろうか。だとすると、他にも何か仕掛けてくるかも知れない。


(……考えても仕方がない、か)


 俺は息を整え、慎重に階段を上る。


 次の階には、一体何が待ち受けているのか——

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