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【#13】地下17階・第一話:不安定な足場

 ——ギィィィ……ン……


 階段を登りきると、わずかに焼け焦げた空気が鼻を刺した。


「……これはまた、面倒そうな階層だな」


 目の前に広がるのは、底の見えない深い闇と、その上に浮かぶ無数の岩の足場。

 そして、下から吹き上がる熱気。

 足場の隙間から覗き込めば、遥か下に赤々と煮えたぎる溶岩の海が見える。


「落ちたら即死か……」


 目の前の床はかろうじて安定しているが、その先は大小さまざまな浮遊する足場が点在しているだけ。

 まっすぐ進める道はない。


「蓮、注意して。前方の足場のいくつかは不安定よ」

「……だろうな」


 ミスティの指摘を受けつつ、俺は試しに近くの小さめの足場へ向かって石を投げた。


 ——バキッ!


 鈍い音を立てて、その岩盤は脆く崩れ、溶岩の中へと消えていく。


「見た目じゃ分からん、か……」


 しっかりしているように見えても、崩れる床が混ざっている。

 無闇に飛び移れば、それだけで死に繋がる。


「……まぁ、考えても仕方ない。行くか」


 俺は一つ深呼吸をすると、目の前の安定した足場へと跳躍した。

 着地した瞬間、ぐらりと揺れる。


「おっと……」


 バランスを取りながら次の足場へ移動する。

 距離感を測りながら進めば、渡ること自体は不可能ではない。


 だが——


「こんな場所でも魔物は生きていけるんだな」


 前方の足場の影から、赤黒い眼を光らせる魔物が現れた。


 ヘルバット——巨大な蝙蝠型の魔物


 その群れが、甲高い鳴き声を上げながらこちらへと飛来する。


「飛行型か。面倒だな……!」


 空を飛ぶ魔物相手に、不安定な足場の上で戦うのは厄介極まりない。


 だが——


「蓮、下!」

「——!」


 ミスティの言葉に反応し、直前に立っていた足場を蹴って飛び退く。


 直後——


 ドゴォォォン!!


 ヘルバットの群れが突撃した足場が崩れた。

 崩壊する岩盤に飛行を阻害され、ヘルバットは瓦礫もろとも溶岩の海に落下した。


「……なるほど、こういう使い方もあるか」


 敵の動きを誘導し、脆い床へと誘い込む。

 そうすれば戦わずとも魔物を処理できる。

 俺はすぐに別の足場へ飛び移りながら、ヘルバットを誘導するように動いた。


 そして——


「こっちだ、来いよ!」


 挑発するように剣を振り上げる。

 その瞬間、ヘルバットの群れが怒り狂ったように一斉に突っ込んできた。


「……落ちろ」


 俺はギリギリまで引きつけてから、最後の足場へ飛び退く。


 ——バキバキバキッ!!!


 魔物の群れが激突した足場が、一瞬のうちに崩壊。

 ヘルバットたちは制御を失い、次々と溶岩の海へと消えていった。


「合理的な戦闘ね」

「……まぁな」


 剣を構え直しながら、俺は先へと進む。

 だが、その時だった。


 ——ザッ……


 微かに、足場の向こうから何かが着地する音がした。


「……来たか」


 視線の先に立っていたのは——


 俺と同じ姿をした影。

 黒い短剣を両手に持ち、微動だにせず俺を見つめる追跡者だった。


「……今度は飛行能力付きか。俺にも分けてもらいたいものだな」


 短剣の黒い霧が、わずかに靄のように揺れる。


 そして——


 次の瞬間、追跡者は軽く膝を曲げたかと思うと、ふわりと足場から浮かび上がった。

 まるで風に乗るように、俺のほうへと滑るように移動してくる。


「これは……厄介だな」


 溶岩の海というリスクが相手には通用しない。

 そして奴は、迷いなく短剣を構え——


 俺を殺すために、一気に間合いを詰めてきた。


「——上等だ」


 俺は剣を握り直し、迎え撃つために踏み込んだ。

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