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メトロン部屋で平等について考える

これは小説習作です。とある本を開き、ランダムに3ワード指差して、三題噺してみました。

随時更新して行きます。

【お断り】「平等、言葉、周囲」の三題噺です。


(以下、本文)


ゴミゴミした下町の、

日もささない、

風呂なしトイレ共同の、

叩けばカビが舞いそうな湿っぽい畳を敷き、

タンスの鍵みたいなドア・セキュリティしかないボロアパートで、

三匹のお化けが、ちゃぶ台を間に置いて茶話会をしておりました。


「ウルトラセブン」第8話に出て来るメトロン星人の潜伏先と言えば想像できますでしょうか。


ご参集したお化けは、くねくね、黒巫女、そしてパンデミックウイルスを擬人化した通称「親方」。


背筋をシャンと伸ばした「くねくね」が、きちんとしたお手前で茶を喫しながら「親方」に話しかけました。


「そう言えば親方、最近、お仕事関係のお噂を聞きませんが?」


アルマーニのスーツをマフィアみたいに着こなしたオットコマエな「親方」が口を開きました。


「なぁに。長期休暇も、あともうちょっとさ。スーパーストロングな抗生物質が認可まで、あと少しと言ったところでね。あれをまた必要もないのにガパガパ処方して、勝手に免疫力を下げてくれれば、こちとらウハウハの入れ食いよ。」


くねくね、ちょっとため息をついて、


「いいなあ。私の方はどんどん仕事がやりにくくなってましてね。『夏休みに、おじいちゃんちに帰省したら』と言う例の設定に無理が来つつあるんですよ。おじいちゃんは子どもたちに引き取られて介護施設。残された古民家はガラスが割れたら狸やハクビシンの無料住宅です。限界集落と運命を共にする積もりはありませんが、今日び、出方をまちがえるとネットで叩かれますからね。」


「お化けが炎上? やられたら、やり返しゃいいじゃない。どっちが上なんだか教えてあげたら?」と黒巫女。


「いやいや、ああいうのは無視するのが一番ですよ」とくねくね。


「ゆるくないわよね、お互い。私もこんなメイクだからさあ、出て行くモンばっかりで。」


と言った黒巫女は、見ればパックリ割れた頭蓋骨。はだけた巫女装束の胸元から見えるのはウジが湧いた肋骨。全身が半乾きの血糊でべっとり。


なるほど、これが毎日の事じゃお金がかかりそうですな。


アルマーニ親方が混ぜっ返します。


「よせやい。アンタ、白巫女だったころと、やってんのは一緒じゃん。心の弱った相手と見れば、脅かし上げて、あるったけのモンを絞り取ってさ。」


黒巫女、ムッとして言い返す。


「あ・の・ね、昔は神社やお寺に集客力があったの。みかじめ取られても割に合ったのよ。それが今や中間搾取しか考えてないもん。特に本山スジが。占い、スピリチュアルと言った黄色に日和ればコンプライアンス、コンプライアンスでうるさいし、好きにやりたきゃ黒しかないのよ。」


なるほど、「ITサイコー、宗教つばペッペ」の今のニッポンでも、ホラー系・オカルト系は、ほそぼそと食って行けるんですな。


オロオロ顔のくねくねが止めに入る。


「せちがらい話は、これくらいにしておきましょうよ。お互い、もう死んでるんだし。」


「オレ、生きてるよ」と親方が言い返す。


「すいません」と、くねくねせず、ちゃんと頭を下げるくねくね。

こう言う素直な分かりやすさが、くねくねさんの、いいところなんですよね。

やると決めたら徹底してやる、仕事に妥協がない誠実な性格だし。


「時にみなさん、平等って言葉、知ってます?」


オッ。くねくねさん、ポンと違う話題を振って来た。


「なにそれ? ははあん、くねくねさん。ネットのまとめ記事や時事解説系動画にハマったんでしょう?」と黒巫女。


「よせよせ。どうせ人間の気まぐれだろ。身分でも運命でも、要はナットクできりゃいいのさ。どの道、自分と周囲を比較する以上の世界は持ってないんだから、人間なんて。平等 what? だよ。動物だって草だって、同じ個体は二つとないのに。」


ウイルスの目で見た人間って、こんなミクロなものなんですかね。


くねくねさん、自分のペースで話を進めます。


「いえね。ネット検索してると『くねくね』でも『手こねハンバーグ』でも等価で相互に置き換え可能なネットコンテンツに過ぎないんじゃないか。平等じゃないかって気が、時々チラッとするんです。」


親方、間髪入れずに返す。


「よせやい。政治とコロナとヤンデレが一緒なワケないだろ。」


確かに、どれも病んではいますな。


黒巫女がロコツにバカしたような顔をして、鼻をフンと鳴らしました。


「だったら、せいぜい迷ってもらおうじゃない? 迷いが私のメシのタネ。平等って言葉が悩まなくてもいい悩みを増やしてくれるなら、私、大歓迎よ。」


くねくねさん。くねりながら、くねりながら、大きくうなづく。


「はい。私もそう思います。実は先日、私のシマ内で妙な事を吹いて回るヤツがいたんですよ。こんな事を言うんです。」


「天から与えられた物は人みな違うのに、行き着くところは同じ『死』なのはなぜなんだろう。

人の命に値段はあるけど、どの道200年生きた人間はいないじゃないか。」


「と、こうですよ。つまらない事を言うから、サッサと殺してやりましたよ。今も昔も、悟り切った人間はお化けの敵ですからね。」


「おい、オレは生き物だよ」とパンデミック親方。


この三匹に「人の命は地球より重い」って言ってやりたいですね、人間として。

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