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ルシカ(手紙)

東の地で夕日を眺めているであろうあなたへ

この手紙が到着したという事はとおるちゃんへ悲しい事を伝えねばならぬということです

とおるちゃんが可愛がっていた三毛猫のルシカは今朝、息を引き取りました。

享年十二歳でした。

ルシカはあなたが小学生の時に突然、拾ってきた子でした。あの時はすぐに叱ってごめんなさい、引っ越してからは一度も猫を飼ったことがなかったですから。

きちんとお世話すると約束を守ってあなたは

ルシカをほんとうに愛してくれました。

出かける前と学校から帰ってきたらごはんを

あげて、たまにお風呂で喧嘩したりもしていましたね。だからこそルシカはいつもあなたのそばで寝ていたのだと思います。

バイトが出来るようになってからは餌代と病院代もあなたが出してくれました、それぐらい私が出すよと言ってもあなたはそれを止めることはありませんでした。

最後にルシカとあなたが会ったのは二年ぐらい前でしたか、あの時もあなたはルシカに餌をやってそれから泣いていましたね。

ルシカはそれがお別れとも知らずきょとんと

した顔で「にゃぉん」と鳴いたのを覚えています。ルシカは強い猫でした、近所の猫とは

何度も喧嘩しては怪我ひとつなく帰ってくるし、鳥や虫をとるのなんてお得意のもの、お陰で庭になんにも来なくなってしまいました

それでいて、ルシカは人の気持ちが分からないのか、泣いていても、笑っていても、怒っていても、いつも「そばで寝たいの」と近づいてくるのでした。小さい頃のあなたそっくりでしたよ、実は。だから私はルシカが来てから子供が三人になったみたいで、ずっとふわふわした気分で過ごしていたのです。

だから今、すごくさびしいです。空になった

ツナ缶を窓脇で乾燥させていますが、これを

舐める子はもう居ないのですから。

だからね、そろそろ帰ってきてくれませんか

もうすぐ春が来ます、春が来たら保育園が

桜だらけになりますよ。そしたら、桜餅でもカレーライスでも唐揚げでも食べられるだけ

食べて、あの子みたいにぐうたら横になって

寝てみませんか。

最後にルシカの不思議な話をしましょう

ルシカは雨が降りそうになると窓の近くに

寝転んで、外を眺めていました。

ルシカの雨の予言はほぼ、当たるのです

だけど、ルシカが唯一、予言を外した時があります。あなたが小学校の遠足の日、早朝、ルシカが窓辺にきちんと座っていました。

私は「ああ残念ながら今日は雨かぁ」とガッカリしたのですが、あなたが家を出る頃には太陽さんがにっこり笑った姿を見せてくれました。それがルシカが予言を外した唯一の日です、そして不安で眠れないあなたのそばで

寝なかった翌日のこと、私、ルシカはほんとうは雨じゃなくて晴れも予言出来たんじゃないかと思ってるんです。だって息を引き取る

そのすぐ前にあの子は窓まで歩こうとしたのですから。もちろん、その後は青空が広がっていましたよ。ルシカの目には残念ながら

その空がうつることは無かったです

ああ、ルシカがいないとお天気が分からなくて雨が降るのか分からないわ。

でもきっと今日は雨かしら


さびしがりやのお母さんより

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