20話「旅の始まり」
第一章最終回です。
翌朝、バルテアの街はドランゴファミリーを巡る大騒ぎの余韻に包まれていた。街の人々は昨夜の一連の出来事についてざわつき、噂話が飛び交っていた。街を牛耳っていたギャング組織、ドランゴファミリーがついにその勢力を崩壊させられたという報せが瞬く間に広まり、住民たちの中には安堵の表情を浮かべる者もいれば、まだ事態の深刻さを理解しきれていない者もいた。
ブルーノ・ドランゴはもちろん、彼の部下たちも全員が衛兵によって拘束され、バルテアの地下牢に収監された。これまでの違法な取引、そして数々の暴力行為に手を染めていたドランゴファミリーは、街の中でも悪名高い存在だったが、ついに彼らはその支配を終わらせることとなった。ドランゴファミリーに取り囲まれていた者たちも、その力が失墜したことで、街にはしばしの平穏が戻るかのようだった。
しかし、カイたちもまた、ドランゴファミリーとの戦いでの行為について問われることになった。いくら悪名高いギャング組織とはいえ、街中で剣や魔法を使い、混乱を巻き起こしたのは事実だった。そのため、カイたちは一度衛兵たちに呼び出され、調査が行われることとなった。
「お前たち、ドランゴファミリーの屋敷内だからとって、街中であれだけの魔法と剣を振るうとは正気か?」衛兵長は厳しい表情で問い詰めた。衛兵たちも、カイたちの行動を見過ごすわけにはいかない。法を破った者が裁きを受けるのは当然であり、特に公共の場での暴力行為は厳しく取り締まられるべきものだった。
だが、衛兵長は続けて言葉を付け加えた。「……だが、今回の件については特例だ。ドランゴファミリーを倒し、逮捕に繋がった功績は大きい。これに免じて、特別に不問とすることを決定した。」
この言葉を聞き、カイたちは無言で安堵の息をついた。彼らはギャングとの戦いにおいて街の安全を守り、結果として大きな貢献を果たしたのだが、その行為が罪に問われるかもしれないというリスクを常に感じていた。しかし、その功績が認められたことにより、今回は許されることとなった。
衛兵長は最後に一言、忠告を付け加えた。
「だが、二度とこんなことはするな。今後同じようなことがあれば容赦しない。」
カイたちは無言で頷き、その場を後にした。
「エリーが?」カイは眉をひそめた。
衛兵達から開放された帰り道、レオンはゆっくりと頷きながら説明を始めた。「ああ、彼女の力でレイナと私の傷が治ったんだ。正直、驚いたよ。魔力は多少感じたけど、あれは単なる治癒魔法とは違う気がする。」
カイは無言で考え込む。エリーが記憶を失っていることは知っていたが、彼女にそんな力があるとは思わなかった。
「謎が一つ増えたな」とカイは前でレイナと話すエリーを見ながら呟いた。
レオンも同意するように静かに頷いた。「あんな力は私も聞いたことも見たこともない。彼女はおそらく、何か特別な力を持っているんだろう。だが、その答えを探すには、まだ時間が必要だ。」
カイはエリーの無邪気な笑顔を見ながら、彼女の力の秘密がこの先の旅路でどんな意味を持つのか、少しずつ感じ始めていた。
一方で、フィーナとその妹ルナは、カイたちの手助けによって無事に自由の身となった。フィーナは妹を守るために奴隷として長い間苦しんできたが、その苦しみから解放された今、彼女たちには新たな生活が待っていた。街の慈善家たちや教会の協力のもと、二人は孤児院に引き取られることが決まり、これからは安全な場所で生活することができるようになった。孤児院の運営者は、二人の過去を知った上で温かく迎え入れ、二人に新たな家族のような環境を提供することを約束していた。
フィーナはその場を後にする際、カイたちに深々とお礼を述べた。
「本当に、ありがとうございます。私たちは、やっと普通の生活を送ることができるんですね……」
フィーナの目には感謝の涙が浮かんでいた。カイたちはその様子を見守りながら、静かに頷いた。エリーはフィーナの手を取り、優しく微笑んだ。
「フィーナ、大丈夫だよ。これからは安全だし、きっと幸せになれるよ。」
フィーナはその言葉に力をもらい、妹ルナとともに孤児院へと向かっていった。
数日が経ち、カイたちは街を離れる準備を整え、城門の前で最後の別れを交わしていた。フィーナとルナも見送りに来ており、二人はカイたちに感謝の気持ちを伝えていた。フィーナは少し涙を浮かべながら、妹のルナの手をしっかりと握り締め、何度も頭を下げた。
「本当に、ありがとうございました。おかげで私たちは新しい生活を始めることができます。皆さんに助けてもらえなかったら、こんな未来はなかった……」
フィーナの言葉に、カイは静かに頷き、短く答えた。「大丈夫だ。これからは妹と一緒に幸せに暮らせ。」
ルナも恥ずかしそうに笑いながら、「お姉ちゃんと頑張ります!」と元気よく言った。エリーはその言葉に満面の笑みを返し、二人を抱きしめた。
「また会えるかもしれないし、元気でね!」
レオンやレイナもそれぞれ別れの言葉を交わし、温かい雰囲気が漂っていた。
リーラはふとカイに目をやり、彼にしか聞こえない声で話しかけた。
「あんた、少し変わったんじゃない?なんだか柔らかくなったわ」
「………………気のせいだろう」
変わった……か。なにがどう変わったのか具体的にはわからないが、たしかに前の自分とは少し違う気がする。少なくとも、前まではこんな穏やかな気持ちになることはなかった。
「そういえば、レイナ、ほんとに私たちについてきてもいいのかい?」
レオンがふとした感じでレイナに聞いた。
「はい、もともと当てのない旅でしたし、みなさんが迷惑でなければ、ご一緒したいです」
「迷惑じゃないよ!レイナとこれからも一緒で嬉しい!」
「ふふ、ありがとう。エリーちゃん」
別れが終わり、カイたちはついに出発の時を迎えた。カイはふとロウのことを考えていたが、彼の姿は見えず、来る気配もなかった。「あいつ、見送りに行くと言っていたが……」と心の中で思ったが、もう出発の時間だった。
「行こうか」とカイが言い、一歩を踏み出したその瞬間、背後から「おーい!」と大きな声が響いた。
振り返ると、ロウが大きな荷物を抱えて全速力で走ってきた。汗をかきながら息を切らし、にやりと笑みを浮かべていた。
「ふぅ、なんとか間に合ったな」
カイは少し驚きながらも、どこか呆れたようにロウを見つめた。「見送りに来たのか、お前にも世話になったな」
「いいってことよ。あと、おれは見送りに来たわけじゃないぜ」
その言葉の意味が分からなく、カイは眉をひそめ、レイナは「どういうことですか?」と首をかしげた。
「この荷物が見えないか?ぎりぎりまで悩んだが、おれもあんたらの旅に連れて行ってくれ」
その言葉に、カイたちは驚いた。
ロウは肩で息をしながら、「俺は、商人としてある遺物を探してるんだ。そのために前々から旅に出たいと思っててな。それに、商人としての勘がビンビンに働いてるぜ。あんたらについていったら面白いってな」と言い、肩に背負った大きな荷物を少し持ち上げて見せた。
「俺の商売道具とかもちゃんと持ってきたし、これからはみんなの役に立てると思うぜ。どうだ、同行させてもらってもいいか?」
カイは一瞬考えたが、ロウの無邪気な笑みを見て少し笑みを浮かべ、他の仲間たちに視線を投げた。リーラもレイナも、どちらかと言えば歓迎する様子で、エリーはすでにロウを見て楽しそうに手を振っていた。
「いいんじゃない?実際彼には助けられたし、面白そうだわ」とリーラが肩をすくめて言い、レオンも「ああ、彼の情報網や頭のキレは役立つだろうな」と同意した。
カイは軽く頷いて、「よし、行くか」と言い、馬を進め始めた。ロウはその言葉に嬉しそうに笑い、荷物を持ち直しながらカイたちの後を追っていった。
「お兄さんたち!ありがとうございました!さようならー!」
フィーナとルナがいつまでも手を振っていた。レイナやエリーは歩きながら手を振り返していたが、カイは前だけを向いて進んでいく。
こうして、カイたちの新たな旅は始まった。青空の下、彼らは広がる道を進んでいき、次の冒険へと向かっていった。
こうして、運命に導かれるかのように、カイたち6人は出会い、共に旅立つこととなった。それぞれ異なる過去と目的を抱えた彼らが、やがて共に歩む運命の道をこの時はまだ誰も知らなかった。
復讐の剣士カイ、兄を探す暗殺者リーラ、謎の少女エリー、古代文明の謎を探求する研究者レオン、生きる意味を探す戦士レイナ、ある遺物を探す商人ロウ。この6人は、後の世に「六星」と呼ばれる存在となり、その名は歴史に燦然と輝くこととなる。世界を揺るがす脅威に立ち向かい、多くの人々の運命を背負うことになる彼ら。しかし、その道のりは決して平坦ではなく、数多の試練と苦難が待ち受けている。
それでも彼らは進み続ける。絆を深め合い、互いの力を信じて。そして、運命に抗いながら、やがて世界の命運を握る戦いに身を投じることになる。その旅路の第一歩が、今、ここから始まったのだ。
これにて第一章完です。思ったより長くなってしまいました。
今後少し様子見て、高評価でしたら続きを書いていこうと思います。構想自体はできてるので。
さて、やっと6人集まりました。これまではいわば序章です。ここからが本編です。この物語はカイをメイン主人公、他の5人をサブ主人公として扱っていきます。6人の冒険を、どうぞよろしくお願いいたします。
やる気が出るので、ぜひ評価お願いします。




