決闘/前編
一部変更、白槍のリロード方式をレバコキライフルのようなリロード方式に変更
コッキング方式はAK系統
すんません、色々考えてたらマガジンじゃとり回ししづらいということに気づきました
スキル[装備品創造]を使って、
<ウォー・キャスターⅠ>を手に入れた俺。
最初のダンジョンから無事に脱出した後、
俺はそのままランカーギルドへ向かうことにした。
目的は、これまでの奴隷みたいな生活から
おさらばするための、冒険者ランクの昇格試験だ。
それにしても、この装備の可変機能は
本当に便利だな、と歩きながらしみじみ思う。
ギルドへ入る前に、俺は脳内でイメージして、
<ウォー・キャスターⅠ>の外見を
ごく普通の「皮の装備」に変形させておいた。
最新鋭のメカニカルな装甲を内側に畳み込み、
表側には年季の入った、
どこにでもある安物の革鎧の質感を投影する。
見た目はただの初心者用の頼りない防具だけど、
驚異的な防御力やパイルバンカーの機能は
すべて内側に格納されたままだから、
この状態でも実はめちゃくちゃ強いんだよね。
ギルドに到着して、
俺は受付で真っ直ぐに昇格試験を申請した。
試験の内容は、ギルドが用意した
訓練用の魔物やシミュレーターを相手に、
規定の時間内にどれだけ正確な戦闘ができるかを
測るというものだった。
結果は、言うまでもなく余裕で合格。
Fランクの最底辺だった俺のランクは、
晴れてEランクへと上がった。
普通の探索者なら、
ここで喜んで一度帰宅するんだろう。
だけど、皮装備に身を包んだ俺の胸の奥では、
これまで溜まっていた鬱憤が、
心地よい全能感へと書き換わっていた。
「……これ、どこまで行けるんだ?」
せっかく手に入れた規格外のチートスキルだ。
どうぜなら、今日行けるところまで
一気に限界に挑戦してみよう。
そう思った俺は、ギルドの受付で、
連続して上のランクの昇格試験を申請し続けた。
普通なら「生意気な新人が無茶をしている」と
止められるところだけど、
試験官をクリアするたびにシステムが自動で
次の受験資格を更新していくから、
ギルドの職員たちも手続きをせざるを得ない。
EからDへ、DからCへ。
試験の難易度が上がるにつれて、
対戦相手となる魔物もどんどん凶暴になり、
ギルドの専用試験官たち
直接、相手をしてくれるようになった。
だけど、誰が相手だろうと関係なかった。
最終的に、俺は一日で、
Bランクまで一気に駆け上がってしまったんだ。
もちろん、最初から最後まで、
<ウォー・キャスターⅠ>は
あのボロい皮装備の見た目のままだ。
木刀を持ったギルドのベテラン試験官たちが、
「そんな安物装備のガキに負けるはずが……」と、
目を丸くして床に転がっていたのは、
心の中で小さくガッツポーズをするくらい
最高に面白かったな。
ただ、何回も連続で高ランク of 試験を受けて、
ガチの戦闘を繰り返したことで、
この鎧の本当のヤバさが身を以て分かってきた。
<ウォー・キャスターⅠ>の真価はさ、
ただ肉体を保護したり、
筋力をサポートしたりするだけじゃないんだよね。
戦闘中、スーツの内側に張り巡らされた
センサーと俺の神経が完全に同調して、
スーツ自体に蓄積されている
世界最高峰の膨大な戦闘データを、
直接、俺の脳内にブチ込んでくる感覚なんだ。
まるで何十年も修羅場の最前線を生き抜いてきた
超一流の傭兵の動きや戦術が、
そのまま自分の経験として体に馴染んでいくみたいな。
だからこそ、まともな実戦経験が少なくて、
昨日までトゲ付きこん棒を回していた俺でも、
身体が勝手に最適解の動きを選択して戦える。
間合いの取り方、重心の移動、敵の隙の看破。
すべてが最初からプロフェッショナルだった。
「よし、それじゃあ早速、
新しく潜れるようになった
Bランクのダンジョンにでも向かうか」
これまでの出来高制のレッサー素材納品で、
1時間這い回って5000円しか稼げなかった
あの世知辛い日々には、もうこれでおさらばだ。
そう思って、ランクが更新されたプレートをポケットに押し込み、
ギルドのロビーをのんびりと歩いていた。
すると、出口の自動ドアの手前という、
最悪なタイミングで、あいつに出くわしてしまった。
元クラスメイトであり、
学生時代に俺を散々いたぶっていた
いじめっ子の隆太だ。
ちなみにあいつのランクはCランク。
案の定、隆太は俺の姿を見つけるなり、
取り巻きを引き連れながらニヤニヤしながら近寄ってきた。
「おいおい、何してんだよ他人の野郎!
お前みたいなFランクのゴミが、
そんなボロい皮装備でギルドに何の用だ?
もしかして、またレッサーコボルトの牙でも
後生大事に抱えて売りに来たのかぁ?」
いつものように大声で俺をからかい、
周囲の笑いを取ろうとする隆太。
だけど、中身がBランクの実力になり、
脳内に一流の戦闘データが詰まっている俺からすれば、
Cランクのあいつの言葉なんて、
もう蚊が鳴いているくらいにしか聞こえない。
響くのは、あいつの底の浅い浅薄さだけだ。
「……用件を聞こうか。
あいにく、ゴミを相手にしている暇はないんだ」
と、脳内でちょっとだけ某映画の
寡黙な主人公の気分になりながら、
隆太の言葉を冷ややかに聞き流す。
相手にするだけ時間の無駄だから、
そのまま軽く身体をかわして、
ランカーギルドから出ようとした。
――だけど、背後から服の肩を掴まれ、
荒々しく引き止められた。
振り返ると、隆太が顔を真っ赤にして、
プライドを傷つけられた生ゴミのような目で
俺を睨みつけていた。
「調子に乗ってんじゃねえぞ、Fランクが!!」
怒り狂って叫ぶ隆太の顔の前に、
俺はポケットから取り出したばかりの
ピカピカに輝くランクプレートを、
これでもかとばかりに突きつけてやった。
そこには、はっきりと【B】の文字が刻まれている。
「な、なんだこれ……!?
B、ランク……? 嘘だろ、何かのバグか!?」
突きつけられた現実を理解できず、
目玉が飛び出そうなほどに見開いて
ガタガタと震え出す隆太。
取り巻きの連中も、言葉を失って硬直している。
そりゃそうだよね、Cランクのあいつから見れば、
Bランクは遥か雲の上の存在なんだから。
「現実を見ろよ。これでもまだ、
俺をFランクって呼びたいか?」
冷ややかに告げると、隆太は屈辱と
嫉妬で顔を歪ませ、さらに逆上した。
もうプライドがズタズタで、後に引けなくなったらしい。
隆太はギルドの衆人環視の中で、
俺に向かって大声で「決闘」を申し込んできた。
ロビーにいた他の探索者たちが、
一斉にこちらに好奇の視線を向ける。
ここで、この世界の
「決闘」について詳しく補足しておこう。
ーーーー決闘とは、ーーーー
探索者同士の私闘を厳しく禁じているこの世界で、
唯一、対人戦が公式に許可された
修練場の一角にある『闘技場』での戦闘のこと。
ギルドが定めた本来のルールブックによれば、
両者がそれぞれ、戦う前に
「勝利した場合の要求」と「負けた場合の要求」
を明確に書類に述べ、
お互いのサインによる許可を得た後に、
安全な防壁の中で決闘が開始される。
……というのが建前だ。
だけど、現実の探索者界隈では、
そんな綺麗事はとっくに形骸化していて、
悪しき「暗黙の了解」がガチチガに定着してしまっている。
それは、
「勝者が敗者に対して述べる要求は絶対であり、
負けた側はそれを拒否できない」
「決闘を大衆の前で申し込まれたら、
男なら必ずそれに応じること」
という、理不尽極まりないマフィアのようなルールだ。
もしここで申し出を断って逃げ出せば、
「あいつは口だけの意気地なしだ」と、
周囲から一生「チキン(臆病者)」呼ばわりされる。
探索者としての社会的信用や
尊厳は文字通り地に落ち、ギルドでの活動すら
困難になるのが、この世界のリアルだった。
ーーーーーーーーーーーーーー閑話ーーーー
「おい、耳が付いてるなら返事をしやがれ!
それとも怖くてちびっちまったか?」
大声で煽り立て、
周囲の探索者たちのヤジを味方につけようとする隆太。
周りの連中も、安物装備の俺が
Cランクの隆太にどうボコボコにされるのか、
見世物を見るような目でニヤニヤと楽しんでいる。
やれやれ、本当に面倒なことになったな。
まあ、今の俺からすれば、
Cランクのあいつに負ける要素なんて、
それこそ「地獄が凍りついたって」あり得ないんだけどさ。
とりあえず、皮装備の見た目のまま、
脳内で<ウォー・キャスターⅠ>の
インナーフレームを静かに完全駆動させる。
いつでも、カチャリと内側のギミックが作動できる状態だ。
もちろん、外見は安物の防具のままで。
だけど、これだけじゃ少し退屈だよね。
あいつのその余裕そうなツラを、
一瞬で絶望に変えてやるには、
防御だけじゃなく、圧倒的な火力が欲しい。
せっかくの公式な決闘だし、
ここでもう一つ、新しい武器を
創造してみようと思う。
昨日の探索から色々とありすぎて、
ギルドで試験を受けまくっている間に
とっくに日付が変わって翌日になっていたんだ。
つまり、一日一回制限である[装備品創造]の枠は、
すでにきっちりリセットされている。
俺は目を閉じ、脳内で理想のミリタリー火器と
中世の近接武器が完璧に融合した、
男のロマンの結晶を強く、深くイメージする。
無から有を創り出す。素材なんていらない。
俺の想像力が、そのまま世界の理を書き換える。
――創造……っと。
[装備品創造]...................<白槍>
俺の手のひらの上が、一瞬だけ白く発光した。
光が収まった俺の手には、
とんでもない外見のロマン兵器が握られていた。
名前にこそ『槍』と付いているけれど、
鋭利な刃先で突くような、
いわゆる一般的なランスとは根本的に違っている。
実際には、頑強な「棍」のような打撃武器と、
強力な大型銃を一つに合体させた感じの、
質量による破壊に特化したハイブリッド兵器なんだ。
その細部を見つめると、
ミリタリー好きの血が沸騰しそうになる。
全体のベースとなっているのは、
頑丈なレシーバーを持つ大型のセミオートライフルだ。
だが、そのフレームやメカニズムは、
大口径の圧力に耐えるために極厚の金属で
何倍ものサイズにまで巨大化されている。
特筆すべきは、その分厚い頑丈な銃身だ。
その周囲には、まるで最初から一つの塊だったかのように、
鉄を削り出して作られた凶悪な「棘」が、
幾つも丁寧に溶接されている。
鈍い光沢を放つ鋼の棘が銃口の先までびっしりと走り、
銃身そのものを狂暴な質量兵器として補強していた。
これだけじゃない。
この凶悪な棘が溶接された銃身先端は、
ただ鋭いだけじゃなくて、
そのまま相手を叩き潰すような
「打撃」や「刺突」が自在に行える設計になっている。
ライフルの強力な推進力や、
スーツのパワーアシストを乗せて相手を突けば、
棘による激しい打撃と質量による刺突で、
敵の防具ごと骨を粉砕する破壊力を叩き込める。
まさに無骨さと美しさが同居した凶悪なフォルム。
ライフルとは言っても、
装填する弾丸の種類をイメージで切り替えることで、
近距離で激しい大爆発を起こす榴弾、
相手の装甲を内側から破裂させる特殊弾など、
戦況に合わせた戦術を瞬時に選択できる優れものだ。
しかもこの武器、めちゃくちゃ便利で、
使わない時は『武器の最小化』ができるんだよね。
ポケットに入るような、
キーホルダーサイズにまで小さくして持ち運べる。
街中でこんな物騒な大物を持ち歩いてたら
一発で職質だから、この機能は本当に助かる。
リロード方式や操作系には、
男心をくすぐるこだわりをガッツリ詰め込んだ。
ボルト(遊底)のコッキング動作は、
あの世界的に有名なAK系統の突撃銃の仕様をベースにしている。
右側面に突き出た無骨なコッキングハンドルを、
金属音を響かせながらガシャリと手動で後方に引き、
初弾をチャンバー(薬室)へと送り込む。
この、自分の手でボルトを叩き込む機械的な感触がたまらない。
指示通り機関部右下のローディングゲートから、
一発一発、重みのある巨大な弾薬を
親指でグッとチューブへ滑り込ませていく。
一気に複数の弾薬を押し込めるように、
専用のスピードローダーも一緒に創造してある。
ちなみに、その弾丸一個一個のサイズは、
近距離で最高峰の破壊力を放つ
ロシア製の突撃銃、あの『ASh』の口径(12.7×55mm弾)並みに極太でデカい。
指の太さほどもある巨大な金属の塊だ。
こんなイカれたサイズの重厚な弾薬だけど、
いちいち買う必要はなくて、
俺自身のMPを消費して無から出すことができる。
銃身の下部には、
スマートに格納されたチューブ式の弾倉が走っており、
装弾数は(チューブ内に7発+チャンバーに1発)の、
計8発が最大装填数だ。
さらに、この<白槍>には
セットとして「パイルバンカー付きの盾」も付属している。
こちらは空砲を1個装填することで発動可能。
こいつを闘技場の床に深く突き刺して固定し、
12.7mm弾が放つ凄まじい反動を完全に抑え込みながら、
弾丸を狂ったように連射する固定砲台になるもよし。
あるいは、盾を構えて突撃し、
相手の懐に一瞬で飛び込んで、
その分厚い装甲ごと肉体をパイルでぶち抜き、
敵の内臓をズタボロに粉砕するのもよしだ。
持ってみた感覚としては、
見た目のゴツさに反して、重くもなく、軽くもなく、
スーツのサポートもあって
不思議としっくり腕に馴染む重量バランスだった。
まだ色々あるが簡単な説明は以上!
……だけどさ、流石にこのフルスペックの
<白槍>をまともにCランク相手にブッ放したら、
決闘どころか消し炭にして
一発で警察沙汰になっちゃうよね。
(よし……とりあえず最初は、
機能を大幅に制限した手加減用の
【黒槍モード】でいこう。
銃撃は一切不可、近接のトゲトゲ棍棒機能オンリー。
スーツからのパワー供給も最低限に絞って、
盾のパイルバンカーや各種武装も、
全部ガチガチにロックをかけておけばいいな)
対人戦での暴発を防ぐため、
俺は心の中だけでそう設定し、
手元の兵器の出力を限界までセーフティモードに落とし込んだ。
突如として俺の手の中に現れた、
出力を絞ってもなおあまりに凶悪で巨大な得物の姿を見て、
腕を組んでいた隆太は一瞬、ビクッと肩を揺らした。
「……ッ、おい、なんだよそのデカい鉄クズは。
そんなハッタリだけのハズレ装備で、
この俺に勝てると思ってんのか……?」
引きつった笑みを浮かべ、強がりながらも、
あいつの顔には明らかに「ヤバいものを見た」
という焦りと怯えが混ざり始めている。
そんな隆太を冷徹に見据えながら、俺は、
某筋肉映画のあの有名なセリフを
少しだけアレンジして、あいつの鼓膜に叩きつけてやった。
「準備はいいか?
ルールを読んだのなら、大人しくしておけばよかったものをな」
俺の言葉を聞いた隆太の面が、
今度はハッキリと恐怖で歪んでいく。
さあ、そのニヤけたツラを完全に絶望へ変えてやろう。
決闘の幕が、今上がる。
Soorrrrrrrrrryyyyyyy




