魔法使い
「学校行きたくない」
目の前にいる小さな女の子は憂鬱そうだった。
夜、一緒に寝室に行こうとする途中。彼女は悩みを打ち明けた。
身長が190cmある僕はかがんで、背を低くする。
目線をあわせて、僕は聞いた。
「どうして、行きたくないんだ?」
「もっと、ダラダラしてたい。魔法の勉強疲れたんだもん」
「なんだ、そんな理由か。一瞬心配して損した。あのな、学校はちゃんと行ったほうがいいぞ、将来のためにもな」
「そんなこといわないでよ。親子なら、もっと私の心に寄り添ってよ。優しくしてよ」
「優しくすると、お前のためにならないからな」
「なにそれ、もういい。このわからずやっ!」
プンスカ怒ると、彼女は、僕から手を離して、寝室に向かった。
僕は少し困ったように、彼女の後に続いた。
一緒のベッドに入ると、彼女は不機嫌そうに、目を閉じた。
やれやれ、思春期の女の子は僕に手が余る。
僕と彼女は親子の関係だった。
僕が親で、彼女が娘……と普通は思うだろう。
でも、違う。
僕が息子で、彼女が母親なのだ。
僕、ウィルは生み出されたのだ。まだ、12歳でしかない、魔法使いのミーシャによって。
彼女の髪の毛を元に、彼女の魔法、人体生成魔法によって、この世に生を受けたのだ。