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幕 間
『――誰か、助けて』
誰かが泣いている。
まるで直接頭の中に語り掛けてきたような声は助けを乞うていた。
視線を下に向けると、そこには最近見惚れた銀色の長髪をした少女が、カノウの胸に寄り添うようにくっついている。
しかし、カノウは何もしない。
何もできない。
それはこれが夢である事を自覚したからではない。
それはこれが現実でない事を俯瞰したわけではない。
ただ、この夢での出来事に、カノウという何者でもない村人にはどうする事も出来ない状況にあった。
多くの人々が涙を流していた。
多くの人々が悲鳴を上げていた。
多くの人々が怯えていた。
だけど、誰もどうする事もできない。
誰も救う者など存在しない。
何故ならその光景の原因となる人物が、血塗られた姿でカノウの前で涙を流しているからだ。