小話 ある日の三人
※本編とだいぶテンションが違います!
本編のイメージを壊したくない方はご注意を。
※会話だけのお話。短い習作ですのであしからず。
2つ収録。
【ある日の会話 ―昼―】
「ヴァスカ、私が年老いて、しわくちゃのおばあちゃんになっても、私のこと、見捨てないでね」
「……? 突然、どうした」
「だって、私ばっかり年とって、ヴァスカはこのまま若い姿でいるなんて……私、自分がみじめになりそうで怖いの。でも、ヴァスカが、もっと若くてかわいい人のところへ行きたくなったとき――もちろん行ってほしいとは思わないけど――おばあちゃんになった私はきっと、あなたのこと、気持よく送り出してあげられないから……。せめて、私がいなくなってからに、してほしいなって」
「待て、勘違いしてる。俺も年はとるぞ」
「年はとるけど、老いないでしょう? 実は、ずっと聞きたかったの。本当は、何年生きてるの? ヴァスカ」
「はぁ、まったく」
「……ヴァスカ?」
「俺は、確かに魔族の血を引いて魔力も大きいが、体は普通の人間とまったく同じだ。だからレイナと同じように年をとるし、体も老いる。年齢だって、見た目通りだ」
「えっ……! 私、てっきり、半永久的な命なんだとばっかり……。なあんだ、よかったあ。じゃあ、一緒に老後を楽しめるのね」
「そうだな。それに、元々そんな心配はいらん。俺はどんな姿になったって、お前を愛する」
「ヴァスカ……」
「はいはいはい、お二人さん、ここに僕がいること忘れないでねー。はいそこ、ヴァスカ、睨まない。お願いだから二人の時にやって、ね」
「……無粋なやつめ……」
「ん? なんか言った?」
「いいや。さあレイナ、そろそろ町に下りる時間だ。行こう」
「…………。なんだなんだ、あの最後の一瞥は。良いだろう、みたいなさッ! あー、早く、僕も独立しよう……」
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【ある日の会話 ―夜―】
「ねえ、お昼のとき、見た目通りの年齢だって言ってたけど、ヴァスカって何歳なの?」
「この秋で、26になる」
「えっ!」
「なんだ、そんなに驚くことか?」
「じゃあ、セルヴィも同い年ってこと?」
「当り前だろう、双子だ」
「信じられない……セルヴィってば、こんなに子どもっぽいのに」
「レン、まだ僕のこと、子どもに見えてるのー?」
「うーん、否定できないかも。セルヴィ、私の弟にも似てるしなあ。弟が生きていたら、こんなかなって」
「……そういうお前は、いくつなんだ?」
「あれ、言ってなかったっけ。この春で、18になったの」
「……」
「ヴァスカ?」
「いや……随分、若い妻をもらったんだなと思って」
「やだ、私、老けて見える?」
「いや、そんなことはない」
「……ヴァスカ?」
「ん、いや……嬉しいよ、いくらでも、励めるな」
「……励める?」
「いや、なんでもない。さあ、今日は早く眠ろう。疲れただろう」
「うん、そうね、さすがに……疲れちゃった」
「それじゃあ、おやすみ、セルヴィ」
「お先におやすみなさい、セルヴィ。あったかくして寝てね」
「うん、おやすみ! …………。ちょっと、ヴァスカ、あれ完全に寝かす気ないでしょ……。……ほんとに、早く結婚しよう、僕も。早くこの家出よう……」
鉄面皮な兄の、相好崩しっぷりに辟易するセルヴィを書いてみようと、したんだけ、ど。
やっぱり私はコメディが苦手です。勉強します…。