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プロローグ
もうすぐ、もうすぐのはずだ。やっと辿り着けたのに体は自由を失っている。
怖くて見ることが出来ないが、左足の感覚がなく血が流れているのはそういうことだろう。
目の前を立ち去る男の姿が見える。あれだけのことをしでかしたのに責任も取らずに逃げる姿は大人の恥だ。
男が後ろに隠していた赤いボタンは手を伸ばせば届く位置にある。
「動けぇ! あと、もう少しで……」
死に向かっている体を懸命に奮い立たせ、ボタンをその目に焼き付ける。
建物はもう崩落しかかっている。どうせこの状態では助からないだろう。
「それならせめて、最後だけでも……!」
いつだって思った通りの結果を得られなかった。いつだって失敗ばかりの人生だった。
けれど仲間のためにも最後だけは成功したい。この一瞬に全ての希望がかかっている。
「もう少し……!」
少年はボタンに手を伸ばした。