1話 文学少女になにを思うか
横井さんは文学少女だ。
だから僕のWEB「小説」という言葉を聞いて過剰に反応した。
「ネット上の小説ってことかな。どんなジャンルがあるの?」
僕はまた素直に答えた。
「異世界転生ものだよ」
すると横井さんは不思議そうな顔をしてこう尋ねた。
「それってファンタジーじゃないの?」
なるほど、これは説明が長くなりそうだ。
僕はそこでようやくスクロールする指を止め、横井さんに顔を向けた。
「横井さん、これはWEB小説なんだよ。小説じゃないんだ。つまりそういうことなんだよ」
僕は説明するのが面倒くさくなった。
なぜならば僕はWEB小説ユーザーだからだ。
「えっと、つまりどういうこと?」
僕が明らかに面倒くさそうになったことを理解しつつも横井さんは理解をあきらめない。
なぜならば彼女は文学少女だからだ。
「私は本を読むことが好きなんだけど」
横井さんは一呼吸おいた。
「小説というのは人間の心理や社会の在り方を描くものと認識しているつもりだよ。だから、どんなものであってもその背景には何かしらの作者のメッセージがあると思う。WEB小説はそのくくりにはないってこと?」
僕はそっとスマホを開いた。なぜならば面倒臭かったからだ。僕はWEB小説ユーザーだ。
「もう、無視しないでよ」
横井さんは少し僕をとがめた。
女性に注意されることにどこか気持ちよくなった僕は説明を再開することにした。
「そもそもとしてだけど、横井さんはライトノベルは読むの?」
「うん。」
「例えば?」
「そうだなー。すz「ちょっとまった」…どうしたの?」
危ないところだった。昨今では著作権とかがうるさいのだ。
僕はWEB小説ユーザーでもできる方のWEB小説ユーザーだった。
「横井さんはライトノベルを読んでどう思った?」
「え?すずm「あーーーーーー!」…を読んだときはね。単純に面白かったなって思ったよ。」
横井さんはもはや僕の奇行を無視することに決めたらしい。非常に効率的で僕としては好ましく感じる。
「なんでそう思ったの?」
「そうだなー。やっぱり世界の神秘が明かされていく楽しさがあったかな。それと私たちの青春のかけがいのなさをしっかりと描けているところもよかった。
特にえんd「おあーーー!!!」…とかは。うん。作者の「今この日々を大事にしなさい」っていうメッセージを感じちゃったかもしれない。勝手かもしれないけど。」
やはり横井さんは文学少女だ。
どんな作品であっても理解しようという努力を怠らない。
僕は素直に感心した。
確かに彼女の解釈がかならずしも作者と一緒であるかはわからない。しかし、そのような文学を理解しようとする態度は目を見張るものがある。
「どうしてそんなことを聞いたの?」
よくぞ聞いてくれた。
ようやくこの話の本質を語ることができる。
「僕はその小説を読んだことがあるが、その時僕が感じたことは、なg…無表情娘、最高!!だった。
そしておおよそWEB小説ユーザーはそのような人間で構成されてるってことを説明したかったからだよ。」