第四話 短慮
「この身分証どうすればいいんだよ警察に届けるにしてもこの遺書と一緒に渡せば絶対に事が大きくなる。かといって身分証だけを渡したところで遺書は捨てるわけにもいかないし、持ち主のところまで届けるしかないか…」
この考え方はあまりに不謹慎かもしれないが毎日同じことの繰り返しで飽き飽きしていたところにこんな出来事が起きた。いつもだったら絶対にしない行動だと自分でもわかっている、この非日常を少し楽しんでしまっているのかもしれない。
幸い如月 日奈子の家は身分証に記載されてあり、この青葉公園の場所から歩いて30分程の距離だった。
「よし、行くか」
青葉公園を後にし如月 日奈子の家に向かう30分間いろいろ考えてしまう、別れて以来あの子とはほとんど話していないそれなのに自殺を図ったあの子になんて声をかければいいのか、はたまた何も聞かず知らないふりをするのが正解なのか、何も答えがでないまま歩き続けついには目的地に着いてしまった。家の前で悩んでいてもらちがあかないので、出来るだけ平然を装いインターホンを押す。
「はーい、どちら様になりますか?」
如月 日奈子の祖母だろうか?60歳半ば位の女性が玄関を開け顔を覗かせた。
「夜分にすいません、如月 日奈子さんのご自宅でよろしかったですか?」
「はい、そうですが…」
「近くでこちらの封筒を拾いまして届けに参りました」
突然おばあさんが泣き崩れる…
あぁそっかそういうことか、僕は何て無神経なんだ…当たり前の反応だ封筒には遺書と書かれているんだ気づくべきだった。人が死のうとしているんだ非日常だと楽しんでしまった数分前の自分をぶん殴りたい。
「おばあちゃん…?」
如月 日奈子が泣き崩れるおばあさんに歩み寄る。
「ごめんね日奈子何もしてあげられなくて」
自殺を図った事がばれてばつの悪そうな顔をし僕を睨む。
「透…君?」
「久しぶり…」
「もしかして公園で私を止めたのも透君だったの?」
「あぁ偶然通りすがってな」
気まずい時間が流れ一秒が長く感じる。
「あなたが日奈子を止めてくださったのですね」
「少し日奈子と話をしていってくださいませんか?」
「はい、それじゃ少し…」
流されるまま家に上がり、日奈子の部屋に通される。
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