第3話 再会
外に出ると今にも雪が降り出しそうな薄暗い夕焼けが街を照らしていた。
「さっむ…」
近所のスーパーに着くと夕飯の買い物をしに来た子連れの主婦でいっぱいだった。子供を見るとどうしても手紙のことを思い出す、内容の無い手紙だったが仕事で疲れているせいか感傷的になってしまう。青葉公園はここからそう離れていない小さい山の山頂にあり帰り道少し遠回りをすれば寄れる位置にあった。いつもはめんどくさがり屋で楽な方、へと逃げている僕だが、今日だけは少しいつもとは違く帰り青葉公園に寄って帰ろうと決心する。
買い物を済まし青葉公園に着く頃にはすっかり暗くなっていた。周りを見渡し小学校の思い出に浸っていると、ブランコに人影があることに気づく。何かいい事でもあったのか自分と同じくらいの年の女の子がブランコに立って乗りながら足をばたつかせていた。
「変わった奴もいるもんだ」
そんなことを小声で呟き公園を後にしようとして不可解なことに気がつく。
ブランコに立って乗りながら足をばたつかせる…?
確認のため振り返ると、そこにはブランコの支柱で首を吊って自殺を図る女の子の姿があった。呆気に取られて一瞬呆然としてしまうが、すぐに正気を取り戻し女の子に駆け寄る。
「あっ…あがっ…うぅ…」
咄嗟に下半身を抱き抱える
「やめて!助けないで!!!」
抵抗する女の子の首から無理やり縄を外す
「なんで…何で助けたのよ…」
「いらない事しないでよ…」
「ごめんなさい」
何とか絞り出した言葉は謝罪だった。
「謝るくらいなら助けないでよ、あなたは今人助けをしたつもりかもしれないけれどそんなのあなたの自己満足よ。ようやく踏み出した一歩を無下にしたのよ」
嗚咽しながら泣いている彼女になんて声をかけていいかわからず立ち尽くしていると、形容し難い違和感を感じる。とにかく落ち着かせるために近づき慰めようとすると。
「触らないでっ!!!!!」
そう言って僕の手を弾くと泣いたまま立ち上がり二度と私に関わらないでと言い残し去っていった。
「くそっ…それじゃあ見殺しにすればよかったのかよ」
こんな時に何て言葉をかけていいのかわからない自分に心底呆れる。
彼女が泣き崩れていた場所に目をやるとそこには遺書と書かれた封筒が置いてあった。封筒を手に取ると中から身元確認用の身分証明証が落ちてきた。元に戻そうと身分証を拾い上げるとさっき感じた違和感の正体に気づく。身分証には『如月 日奈子』そう書かれてあった。