第1話 手紙
「ピンポーン」
「白犬宅急便でーす」
インターホンの音で目が覚める
「はーい、今行きます」
「休日のこんな時間に来んなよ…」
時計を見ると午後1:00が過ぎていた
「もうこんな時間かよ、そりゃ宅配便も来るはずだ」
〜〜ガチャッ〜〜
「野上さんにお届けものです」
「こちらにサインいただいてよろしいですか?」
「はい…」
「ありがとうございまーす、すいません失礼しまーす」
ネットで買い物をした記憶もないし、誰かから荷物が送られてくるような覚えもない。宛名を見ると『野上 透』自分の名前が書いてあった。
「何だよこれ…?」
新手の詐欺じゃないかと疑いながらも恐る恐るその段ボールを開け中を覗くと『将来の自分へ』と汚い字で書かれた手紙と筆箱が入っていた。中身を見てようやく思い出した、小学校の卒業式の日自分に宛てて書いた手紙と思い出の品として入れた当時使っていた筆箱だ。
「何で筆箱だよっ」
「もっと他に思い出あっただろ」
つい昔の自分にツッコミを入れてしまった。
「字も汚いし…小6だったらもう少しまともに書けるだろ」
そんな事をぼやきながら手紙を開ける
『 将来の自分へ
元気にしていますか?働いていますか?今付き合っている日奈子ちゃんと結婚していますか?
僕は今日小学校を卒業します。中学校に行くのがすごく楽しみです。友達をいっぱい作ってバスケ部に入っていろんなことをして遊んで楽しく過ごしたいです。
3月19日 野上 透 』
「元気に働いてはいるけど日奈子ちゃんとは中学に上がってすぐに別れたよ」
ブラック企業勤めで彼女もなしの自分のことを少し惨めに感じた。