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6 再会

日直は五十音順…

「綾部」ではなく「赤城」が先な事に気がついて修正しました。

テヘペロ(死語)

 冴島が教室を去ってから暫くして、黒木がやってきた。

 まだホームルームには時間がある。チャイムは鳴っていないので、生徒達は思い思いに過ごしていた。


 黒木は黒板に今日の予定を書いている。


8時45分〜 ホームルーム

       各委員選出

9時30分〜 クラブ活動紹介(体育館)

12時15分  ホームルーム


 八時四十五分、始業のチャイムが鳴る。


「全員、席につけ〜。」


 黒木が号令をかけると、一斉に席に戻る。


 黒木は出席簿を開いて一人一人名前を呼んで出席を取った。

 途中、早川の名前だけは飛ばしたのだが、美乃梨(みのり)以外は気付かなかった。


「窓側の桧山の隣の空席は、早川翔悟の席だ。昨日から欠席しているが、実は現在停学処分を受けている。十日間の停学なので、登校してくるのは再来週の月曜日からだ。」


 黒木が言い終わるや、教室内のあちらこちらがざわつきだした。


「初日から停学って何やらかしたんだ?」

「特待生の出来損ないなんじゃね?」

「あーそれあり得るわぁ。」


と、好き勝手な想像を発言している。


 美乃梨(みのり)は隣の席を黙って見つめていた。理由はわからないのだが、妙に気になって仕方がない。


「次いくぞ。来週の月曜日から日直に日誌を書いてもらう。日直は五十音順でまわすからな。赤城からスタートだ…」


「次、クラス委員長だが、一年間やってもらう。やりたい人いるか?他薦でもいいぞ。」


 黒木の言葉を聞いて、男子から推薦の声があがる。


「桧山さんがいいと思います。」

「俺も賛成です。」


 俺も、俺もと男子が美乃梨(みのり)を推す。

 美乃梨(みのり)の表情は変わらないが、内心では「勘弁してよぉ」とゲッソリしていた。


 それら意見を聞いて黒木が美乃梨(みのり)にとって衝撃の発言をする。


「あー、桧山なんだが生徒会からの申し入れがあってな。生徒会に入るのでクラス委員にはなれない。」

「ふげっ?」


 美乃梨(みのり)は思わず変な声を上げる。美人顔には決して似合わなかった。


 先ほど、冴島に考えさせて欲しいと言って了承されたはずなのに。

 あのやり取りは一体なんだったの?


 実は黒木が教室に向かって廊下を歩いている時に冴島とすれ違っていた。その時に冴島が黒木に告げていたのだ。

 外堀を埋める為に。


 美乃梨(みのり)が憮然としている間に、クラス委員長や風紀委員などのクラス委員が決まっていった。



◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇



 体育館で行われたクラブ活動紹介は、正直言って退屈な時間であった。

 各クラブの部長などが順番に演壇に上がり、去年の実績・過去の栄冠などをアピールして入部をお願いしているだけなので、最初こそ真剣に訊いていたが六番目のクラブあたりからは、誰も聞いてない。

 ほとんどが早く終わらないかという心境であった。

 そもそも特待生は既にクラブが決まっているので、クラブ紹介を聞く必要があったのだろうか。


 ゴルフ部がある事を確認できた沙也加は満足気ではあったのだが。



◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇



「月曜日から時間割どおりの授業開始になるからな。教科書とか忘れずに持ってこいよ。」

「今日はこれで解散。」


 黒木がそう言って教室を出ていった。


 クラスメート達は皆、疲れた表情で帰り支度をしている。早い者は既に教室を後にしていた。


美乃梨(みのり)〜帰るよ。」

「ちょっと待って〜。」


 先に教室を出た沙也加を美乃梨(みのり)は追いかけた。

 玄関で靴を履き替え、スマホを確認するとメッセージアプリに未読19と表示されている。


 アプリを開くと姉からだった。

 アイコンに『亜矢子』と表示されたトークルームを開く。


【亜矢子】や、やばい

【亜矢子】めちゃイケメンなんだけど

【亜矢子】今日からバイトに入るって

【亜矢子】アンタも見に来なさいよ

【亜矢子】目の保養になるよ

【亜矢子】あ、笑った

【亜矢子】キュン死しそう

【亜矢子】オーナーの甥っ子だって

【亜矢子】名前ゲト

【亜矢子】亮一君

【亜矢子】ガーン!高校一年!

【亜矢子】マジかー

【亜矢子】ダメじゃん

【亜矢子】条例違反になる

【亜矢子】でも食べたい

【亜矢子】ルールは破るためにあるのよね

【亜矢子】味見くらいならいいよね

【亜矢子】()っていいっすか〜?

【亜矢子】沙也ちゃん同伴ヨロ


 メッセージを見て美乃梨(みのり)は頭をかかえた。


美乃梨(みのり)、どうした?」


 ガックリしてる美乃梨(みのり)を見て、沙也加が声をかけた。

 美乃梨(みのり)はスマホの画面を沙也加に見せる。沙也加と亜矢子は面識があるので問題ない。

 と言うか同伴指定してるし。


「お姉ちゃん、バイト中に何やってんだか。」

「み、美乃梨(みのり)!」


 沙也加の目がギラリとギラつく。

 口角が上がった。

 ムンズと美乃梨(みのり)の左手を掴む。


『沙也加のスイッチ入ったなぁ…』


「行くよ!」

「はいはい…」


 美乃梨(みのり)を引きずるようにして、沙也加はズンズンと歩きだした。



◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇



 学校の最寄駅から二駅目。この辺りで一番大きなターミナル駅の近くに目的地がある。

 大型商業施設の1階に亜矢子がアルバイトをしているカフェがあった。

 モーニングサービスも営業するので、ビルに面する歩道から直接入る事ができる作りになっている。


 電車を降りて狩り場(カフェ)に向かう。


「亜矢ちゃんが喰うって言うくらいだから期待度Max!私もご相伴にあずからないと!」


 沙也加も訳の分からない事を言い出したので、美乃梨(みのり)は帰りたいと思い始めた。


『肉食女子二人の制御など私にはム〜リ〜!』




◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇



ウィーーーン


 二人は自動扉を抜けて店内に入る。


「いらっしゃいませ。お二人様ですか。」

「はい。」

「窓側と奥側、どちらが宜しいですか?」

「窓側でお願いします。」

(かしこ)まりました。此方へどうぞ。」


 案内してくれたのは亜矢子であった。


「此方のお席で宜しいでしょうか?」

「はい。」

「お冷やをお持ちしますので、少々お待ち下さい。」


 そう言ってバックヤードへと下がっていく。マニュアルとおりの完璧な接待だった。

 美乃梨(みのり)の姉である。容姿は文句ない。美乃梨(みのり)と違う点は目元が美乃梨(みのり)よりも垂れているので、一見すると気弱な感じで男からすると護ってあげたくなる。

 『()っていいっすか』と言うような肉食オッさん女子には見えない。


 美乃梨(みのり)と沙也加は案内された四人掛けの席にテーブルを挟んで向かい合わせに座った。


 亜矢子がお冷やをトレーに乗せて戻ってくる。グラスをテーブルに置きながら尋ねた。


「ご注文はお決まりでしょうか?」


 このカフェには何度も来ているのでメニューを見なくても注文できる。ランチを兼ねてパンケーキとコーヒーのセットを二人ともオーダーした。


 先ほどからキョロキョロ周りを見渡している沙也加が、痺れを切らして亜矢子に小声で尋ねた。


「亜矢ちゃん、亮一君ってどの子?」

「今ね、休憩に入ってる。パンケーキは亮一君に持って来させる様にするね。」


 軽くウィンクして亜矢子は下がっていった。


「どんな子なんだろうねぇ。甘いのかな。辛いのかな。」


 沙也加の表現がおかしくなっているので訳すると、


 甘い=優しそう

 辛い=クール


と言う事だ…と思う。誤訳でない事を願う。


 美乃梨(みのり)は頬杖をつきながら溜め息を吐いた。




「お待たせしました。」


 少し甘いテノールの声が頭の上から降り注いだ。


「ご注文のパンケーキになります。」


 声の主を見て、二人は目玉が転がり落ちるのではないかというくらい、目を見開いた。


「「王子様!」」


 二人は自然と声を合わた。

 亮一は気にも止めないで、ニコッと笑った。


「コーヒーを直ぐにお持ちします。」


 そう言って下がっていく。





 美乃梨(みのり)は戸惑っていた。


 パンケーキが食べたいのに。

 パンケーキに視線を向けたいのに。


 目が彼の姿を追い続けている。

 私の意思とは無関係に。


 目が無性に 火照(ほて)る。


 目だけが別人の様な感覚に戸惑う。

お読みいただき、ありがとうございます。

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