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5 来訪者

少し短めです。

 入学式の翌日は土曜日だった。


 公立学校なら土曜日は休みなのだが、星城学園は私立。カリキュラムの自由度があるので、土曜日は午前中だけ授業が組まれている。


 その代わりと言ってはなんだが、夏期休暇(夏休み)の期間は長い。

 七月一日から八月三十一日までの二ヶ月もある。

 欧米の学校制度に(なら)っているそうだ。


 昨日と同じ様に、美乃梨(みのり)と沙也加は駅で待ち合わせをして、一緒に投降した。

 沙也加の右手には白いハンカチを結びつけた棒が握られている。校門で風紀指導に立っていた教師に二人は武装解除を命じられていた。謎だ。


「おはよう。」

「おはよ〜。」


 二人でハモるように挨拶しながら教室に入った。


「「「おはよー。」」」


 昨日、沙也加と仲良くなった女子三人組から挨拶返しがあった。

 確か昨日の自己紹介で、赤城千恵・南條明美・白崎佳奈と名乗っていたなぁと美乃梨(みのり)は思い出していたが、顔と名前は未だ一致していない。筆者も右に同じく。三人の容姿はキャラ設定していないからね。


 他のクラスメートからは応答がなかった。恐らく気恥ずかしいのだろう。


 沙也加の席は出入り口に近いので、鞄を机の上に置くと美乃梨(みのり)と一緒に美乃梨(みのり)の席へと向かう。


 美乃梨(みのり)の席は廊下と反対の窓側になるので、教室の中をある程度移動する事になる。

 男子達の視線が美乃梨(みのり)を追いかけている。当の本人は気にしていないようだ。


 美乃梨(みのり)が自分の席に着座すると、沙也加は美乃梨(みのり)の前の席の椅子に座った。


美乃梨(みのり)はクラブに入るの?」

「うーん。どうしようかな。沙也加は入るんでしょ?何にするの?」

「私は中学に無かったクラブがあれば入ろっかな。」


 エージェントの調査資料によると、沙也加は中学時代、全てのクラブに所属した経験を持つ。自分が夢中になれるモノってなんだろうと思い、全クラブ活動を一通り体験してみる事にしたのだ。どのクラブでも良い仕事をするので、三年の時には全クラブが取り合いバトルを繰り広げていた。

 と報告書に書かれている。



「私達も会話に混じっていい?」


 赤城・南條・白崎の三人組がやってきた。


「いいよ。」


 断る理由も無いので誤認で話を続けることになった。


赤城 「なんの話をしていたの?」

沙也加「クラブを何にしようかなって。」

白崎 「ミドルホールよね。」

南條 「私はスプーンかな。」

沙也加「じゃ、私はバッフィで。」

美乃梨(みのり)「渋いのチョイスするわね。」



 教室を見渡せば、そこかしこでグループができていて、それなりに談笑している。孤独を好む者も若干名いるにはいるが。



「失礼するわよ。」


 教室全体に響くしっとりと落ち着いたメッヅォソプラノの声に、全員が教室の出入り口を注目した。

 

 昨日の入学式で見覚えた女子生徒が立っている。

 生徒会長の冴島涼子だった。


 冴島もかなりの美形である。

 切れ長の目。鼻筋もシャープ。キリッと引き締まった口元。

 艶やかな黒髪はワンレングスのショートボブ。

 一言でまとめるならクールビューティー。

 美乃梨(みのり)程ではないが、出るところは出ているスレンダーボディ。

 三年生の間では、女王様と呼ばれている。誕生日に鞭をプレゼントした強者がいたと言う都市伝説もある。


「桧山美乃梨(みのり)さんはいるかしら。」

「はい。なんでしょうか?」


 美乃梨(みのり)はスッと立ち上がった。冴島は教室に入って美乃梨(みのり)の右横まできた。


「単刀直入に言います。貴女(あなた)を勧誘しに来ました。生徒会に入りなさい。」


 勧誘だと言うけど命令じゃん。


「え?私が何故、生徒会に入らないといけないのでしょうか?」

貴女(あなた)が首席だからよ。」


 美乃梨(みのり)が新入生代表挨拶をしたので、冴島は美乃梨(みのり)が首席だと認識している様だ。


「私は首席ではありません。次席なんです。」

「え?そうなの?」

「はい…」


 美乃梨(みのり)は申し訳なさそうに返事をした。


「質問していいかしら?」

「どうぞ。私に答えられる事でしたらお答えします。」

「何故、貴女(あなた)が代表挨拶したのかしら?」

「詳しくは知りませんが、首席が入学式を欠席したので、私にお鉢が回ってきた…みたいな?」

「あははは…」


 冴島は突然笑いだした。


「あはは…ごめんなさいね。突然笑ったりして。」

「いえ。」

「正直な人なのね。気に入ったわ。」


 冴島はビシリと美乃梨(みのり)を指差す。確かに美乃梨(みのり)は美尻だ。関係ないか。


 人様を指差してはいけません。と注意しても冴島には効かない気がする。

 この辺りが『女王様』と呼ばれる所以(ゆえん)かもしれない。


美乃梨(みのり)。生徒会に入りなさい。」


 名前を呼び捨てにする程、冴島ほ美乃梨(みのり)が気に入ったようだ。


「少し考えさせて下さい。」

「返事は何時(いつ)でもいいのよ。気軽に生徒会室に遊びにきなさい。待ってるわ。」

「あ、ありがとうございます。」

「本当に来てね。」


 そう言って冴島は教室を出ていった。


 美乃梨(みのり)以外、全員が冴島の迫力に呆気(あっけ)にとられていた。



 いや、沙也加だけは別だった。


「どうしようかなぁ、クラブ。」


 沙也加は一人、まだ悩んでいた。


「ゴルフ部ってあるのかしら?」



 あるんだな、これが…

文字メディアの特性を生かして遊んでみました。

同音異義語ってありがたいです。


お読み下さりありがとうございます。

ブクマもお願いいたします。

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