4 入学式(4)
淡々としたセクションです。
ツマラネェと思っても口に出さないで下さい。
筆者は打たれ弱いので、お願いします(涙目)
ブクマいただけると復活します。
「名前を呼ばれたら"はい"と返事をして起立。」
「向かって右側の階段から演壇に上がるように。」
「講演台に挨拶文の紙を置いてから、正面を向いて一礼。」
「ゆっくりでいいので、ハッキリと発音する事を心がける様に。」
美乃梨は今、体育館にいる。
新入生代表挨拶を絶賛予行演習中だ。
西川から段取りを聞いているのだが捲し立てる様に説明されて、処理能力が追いつかない。
「覚えられたかな?」
「は、はいぃ…」
歯切れの悪い返事をしてしている。大丈夫なのか?
やらかすか否かは筆者の気分次第ですね。
「じゃあ、実際にやってみるぞ。適当な椅子に座って。」
西川に言われて、体育館に並べられた椅子の中央あたりに座った。
私はなんでこんな事してるの?
美乃梨は職員室でのやり取りを思い返す。
◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇
「私が代表挨拶するのですか?」
「すまないねぇ。代表挨拶は入学試験の首席がするのが慣例なんだが知ってたかね?」
「いいえ、知りませんでした。」
林の説明を聞いて美乃梨はドキッとした。それって私が首席って事かしら?と思ったのだ。
確かに受験後に自己採点してそれなりの手応えは感じていた。さすが私!と天狗になりかけたが、フラグはすぐにへし折られる。
「ところが諸事情で首席が入学式を欠席する事になってしまって…」
私、入学式に出席するよね?という事は首席じゃないのか〜と凹む。
「次点だった君に白羽の矢を立てたという訳だ。」
「わかりました。お役目、務めさせてもらいます。」
「そう言ってもらえると助かる。段取りについては、彼方にいる西川先生に教えてもらいなさい。」
「あのぉ、挨拶の内容は私が考えるのですか?」
「あぁ、すまん。挨拶文については既に首席が書いた文書があるので、それを読んでくれたらいい。西川先生が持ってるので、事前に目を通しておきなさい。」
「はい、わかりました。」
「では、宜しく頼みますよ。」
そう言って林は職員室を出て行った。
「いきなりの事ですまなかったなぁ。」
今まで黙っていた黒木が平謝りした。
「いいえ、大丈夫ですよ。」
「桧山って勇者なのか?」
ここで『勇者』という単語が出てきた理由がわからなかった。それを言うなら『聖女』の間違いぢゃね?
美乃梨は思った。
黙っててあげるのが大人の対応。
黒木は平然としているので、間違えた事を気づいていないのだろう
「では、西川先生のところへ行きますね。」
と言って黒木から離れた。
◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇
という経緯を経て、今に至る。
予行演習を問題なく終えると、西川に教室で待機する様に言われ、美乃梨は体育館を後にした。
教室のドアの前に立つと、中はガヤガヤと騒がしいのがわかる。
ガラガラッ
引き戸のドアを開けると、音に反応して全員の注意が美乃梨に集まる。それまでの喧騒が潮が引く様に静かになった。
「おかえり〜!」
沙也加が声をかけてくれたので、
「ただいま。」
と応えて自分の席へと向かう。クラスメートの視線が美乃梨を追いかける。
美乃梨は自席に着くと椅子に座った。
「ゴメンねぇ。」
先程まで談笑していたのであろう三人の女子生徒に断りをいれてから美乃梨の所へやってきた。
沙也加は人当たりが良く、誰とでもすぐに打ち解けるスキルを保有している。
課金スキルだろうか?おいくら?
「なんで呼び出されてたの?」
「なんだかね。新入生代表挨拶を任されちゃった。」
「え?それって美乃梨が首席って事?凄〜い!」
首席が代表挨拶する事を沙也加は知っていた様だ。
「違うよ。私は次席だってさ。」
「じゃあ何で美乃梨が代表挨拶するのよ。」
「理由は教えてもらってないけど、首席の人、今日欠席なんだって。」
「そうなんだ。重責に耐えらずに休んだへっぽこだね。うん、間違い無い。」
「そうかもね。」
沙也加の容赦の無い想像に美乃梨は笑ってしまった。
「待たせたな。全員廊下に整列してくれ。」
いつの間にか黒木が教室に来ていた。
時刻は9時45分。全員揃って入学式会場の体育館へ移動するのだろう。
廊下に出ると他のクラスも同様に廊下に整列していた。
◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇
入学式自体は大きなトラブルも無く、粛々と滞りなく終わった。
強いて挙げるなら、美乃梨が代表挨拶をした時ぐらいだろう。
美乃梨が演壇に上がった途端、体育館にいた男子生徒の八割以上が呆けてしまった。
あちらこちらから、
「うぉっ!」(すげぇ美人!)
「ぐふっ!」(や、やられちまったぜ)
「ジュルルルル」(う、美味そう…)
と言った唸り声が上がる。最後の奴はヤバいよね。110コールしようか?
…あれ?何故か既視感があるな。
これで美乃梨は一年生男子の絶対的アイドルという立ち位置が確定した。上級生男子へ存在感が拡散するのも時間の問題だろう。
◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇
教室に戻ってからのホームルームは、生徒手帳や時間割などプリント類の配布。食堂の利用方法など学校生活に必要な注意事項が、黒木から一方通行で流れてくるだけだったから、筆者としても弄り甲斐がない。
つまんねぇの…(石ころを蹴ってみた)
簡単な自己紹介も出席簿順にしたが、淡々としていた。
美乃梨が自己紹介をし終えた時だけは、主に男子から盛大な拍手と唸り声があがった。
「うぉっ!」(同じクラスでラッキー)
「ぐふっ!」(や、やられちまったぜ)
「ジュルルルル」(う、美味そう…)
最後の奴はヤバいよな?110コールしよっと…
…あれ?二度目の既視感があるな。
全員の自己紹介が終わると、
「今日はこれまで。気をつけて帰れよ。」
と黒木が言ったのでホームルームは終了となった。
「美乃梨、帰ろ〜?」
沙也加が鞄を持って美乃梨の席まで来た。
「うん、帰ろっか。」
美乃梨も鞄を持って立ち上がる。
チラリと隣の空席を見やった。
「隣の早川って人が首席なのかな?」
「ほら、独り言を言ってないで帰るよ。」
「えっ?」
美乃梨は心の中で呟いたつもりが、声に出していたらしい。
「何処か寄って帰る?」
「そうね、お昼食べて帰ろ。」
沙也加の誘いに美乃梨は乗った。
駅前にあるカフェでランチをしている時に美乃梨のスマホがブルルと震えた。
スマホのロックを解除すると、美代子からメッセージが着信していた。
『6時ごろに帰るから、晩ご飯の用意お願いね』
16時00分に家のな近所にあるスーパーへと吸い込まれていく美乃梨の姿を確認したと、筆者が雇っているエージェントから報告があった。
美乃梨、やらかしませんでした。
何故かと言うと、グフ、グフフ…
初めてブクマをいただきました!
ありがとうございます。




