2 入学式(2)
話がなかなか進みません。
ごめんなさい…
「何かあったのかな?」
「ま、私達には関係ないでしょ。行くよ!」
教職員達が出ていくのを見て、美乃梨がなんとなく疑問を口にしたが、沙也加は無関心を決め込んで教室へ行こうと促した。
階段を四階まで上がり、廊下を見渡す。
目の前に『1-A』と表札のついた教室の入り口があり、視線を廊下の奥へと移動させると『1-B』『1-C』と表札が見える。少し見えにくいが一番奥の教室が『1-F』となっている。一学年六クラスあるので、四階は一年生だけの教室が並んでいる事になる。
美乃梨達が『1-C』と表札がある教室に入ると、既に二十人程の生徒がいた。
複数で集まって雑談してる者。椅子に座ってジッとしている者。窓から外を眺めてる者。
全員の視線が美乃梨に集まり、先ほどまでざわついていたのがピタリと静かになった。
「あは、あははは…分かり易いなぁ。」
「はぁ〜。」
沙也加は苦笑いしながら美乃梨の右肩をポンポンと叩く。
溜め息をついたのは美乃梨である。また一つ幸せが飛んでいった。どんな幸せが飛んでいったのかは、筆者の知るところでは無い。
黒板には今日のスケジュールと座席表が書かれていた。
8時45分 ホームルーム
9時〜10時 入学式
10時〜12時 ホームルーム
教室の壁掛け時計は8時30分を回ったところである。
座席表を確認すると、沙也加は廊下側の列で前から三番目。美乃梨は窓側から2列目の一番後ろであった。
各々、割り当てられた座席に向かい鞄を机の上に置いた。
美乃梨が椅子に着座すると、沙也加がやってきて美乃梨の隣りの窓側の席の椅子を引き出して座った。黒板の座席表では『早川』と書かれている座席である。
ホームルームまで未だ時間があるので二人して雑談をしているのだが、他のクラスメート達は静かである。一部グループ化している所からはヒソヒソと声が聞こえてくるが内容は聴き取れない。
視線は当然、美乃梨に集中している。
後からやってきたクラスメート達も、教室の異様な空気に戸惑い、男子生徒などは皆んなの視線の先を見て、
「うぉっ!」(美人かいる!ラッキー)
「ぐふっ!」(や、やられちまったぜ)
「ジュルルルル」(う、美味そう…)
などと唸る。最後の奴などは絶対にヤバいな。110番コールしようか?しないけど。
中学校の時もクラス替えの度に同じ様な事象を体験しているので、美乃梨には耐性が備わっている。HPポーションは不要。
8時40分を過ぎてクラスメートはほぼ揃っている。未だ来ていないのは沙也加が座っている座席の主だけとなった。
8時45分になって男性教師が教室に入ってきた。三十代前半と言ったところか。イケメンと言えばイケメン?と言う微妙な顔の作りである。
黒板の空きスペースに『黒木大介』と自分の名前を書くと、教卓の天板を右掌でバンと叩く。
「皆んな、座ってくれ。」
と言われて全員が指定された座席に着く。
「また後でね。」
と言って沙也加は自分の席へと戻っていく。全員の着席を確認して黒木が声を出した。いや、一人まだ来ていないのだが黒木は気にしていなかった。
「一年間、このクラスを担任する黒木大介だ。担当教科は英語だ。宜しく。」
黒木はクルリと回れ右すると、黒板のスケジュールを書き換えた。
10時〜11時 入学式
11時〜13時 ホームルーム
再びクルリと回って教室を見渡す。
「入学式の時間が…」
と言いかけた時に教室に設置されたスピーカーから、校内放送が流れてきた。
「教頭の林です。入学式の開始時間を10時に変更します。新入生諸君は教室で。生徒会はじめ入学式に出席する上級生諸君は、決められた待機場所で時間になるまで待機して下さい。」
放送が終わるのを待って黒木が言った。
「聞いてのとおりだ。トイレ以外は教室で待機してて欲しい。あと、桧山美乃梨は居るか?」
「はい、私です。」
美乃梨は立ち上がって返事をした。
「俺と一緒に職員室まで来てくれ。以上だ。」
そう言って黒木は教室を後にした。美乃梨は訳が分からず首を右に傾ける仕草をしてから、教室を出て黒木の後を追った。
◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇
黒木は職員室とドアを開けると、美乃梨が追いついて来るのを待った。黒木が職員室に入った後に続く。
「失礼します。」
ペコリとお辞儀をして職員室に入った。黒木は既に教頭の机の前に立っていて、こっちだと美乃梨に手招きをした。椅子に座っていた林も美乃梨の姿を見て立ち上がった。
林は後数年で定年退職を迎える。髪が不自然に盛り上がりを魅せているところからしてハゲだなとわかる。この設定は教頭先生のお約束?
美乃梨は二人のところまでやって来た。
「教頭の林です。桧山さんだね。」
「はい、桧山です。」
美乃梨はペコリと頭を下げた。
「急なお願いで申し訳ないのだが。」
「はい、何でしょうか?」
「入学式の新入生代表の挨拶を君にして欲しいんですよ。」
「へっ?」
そんなの聞いてないよ〜と美乃梨は声に出しそうになったのを堪えた。
今、初めて聞いたのだから当たり前だろ?(筆者ジト目)
筆者も書きながら、今知ったんだから。(マジっすか?)




