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友達としかみられない  作者: ルン
四章 友達としかみられない
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4-2 法則と誘導

 貴理の表情は動かない。驚きはない。

 もはや、演技は不要ということ。


「……じゃあ、被害者の名前は? 関係ないの?」

「いや……さっきの法則を前提としたうえで被害者の名前を考えれば、犯人の狙いが見えてくる」


 1人目、『渡貫 詳』

 2人目、『刈谷 光輝』

 3人目、『信濃 朱音』

 4人目、『田中 光莉』


「被害者の名前から、被害にあった順番に漢字を取っていく。例えば、俺の場合は1番目だから『渡』。刈谷からは『谷』、信濃さんからは『朱』、田中さんからは『莉』。そしてそれをつなげると、『()() ()()』。あの日俺を振った女性の名前だ」

「なるほどね。確かに偶然とは思えない。それが法則性だったってことね。……でも、それがなんだっていうの? 私が犯人であることは示せていない」


 貴理は自分が犯人であることを、隠す気はないはずだ。余裕な態度がそれを物語っている。

 だが、あくまでも俺にすべて説明させるつもりなんだろう。


「それはこれから説明するさ……ここまでで、真の法則が別物だったことは分かった。ではなぜ、俺は最初予想を外してしまったのか? それは、犯人によってそう誘導されていたからだ」

「誘導?」

「そうだ。まずはこのメモだ」


 そう言って、貴理から借りていた手帳を取り出す。

 そこには、いつも貴理が被害者や事件の概要を簡潔にまとめてくれていたメモが書かれている。


「俺はいつも、お前がまとめたこのメモを通して犯行の概要を確認していた。それが第一の罠。このメモの『盗まれたもの』欄に書かれていることからは、先ほど言った『場所を示す情報』が欠落している。そして、ご丁寧にも『ABCの法則』に合うように頭文字まで一致させてある」

「単なる偶然よ」

「そうか? 確か、映画のチケットのことを最初に『鑑賞券』だと言ったのも、お前だったはずだ」

「私は普段から、『映画のチケット』ではなく『鑑賞券』と呼ぶ。ただそれだけのことね」

「……次に、第二の罠。3人目の被害者の時、お前は俺にそろそろ関連性が見えてくるはずだと言った。そしてその後、偶然を装って俺に『ABC殺人事件』の情報を与えたんだ。俺自身がその法則に気づくように」

「なんでそんな面倒なことするの? 本当にそうなら、私自身から『ABCの法則』に則っていることを教えた方が簡単じゃない?」


 もっともらしい意見だ。だが、俺は静かに首を振る。


「いや、それではダメだ。人は他人から与えられた解答は疑うが、自分で導いた解答は真実だと思い込みがち。お前はそこを突いた」


 他人を騙すには、1から10まで全ての情報を与えてはいけない。それでは警戒されるだけだ。

 ある程度の情報を与えて、その先はカモ自身に気づかせることが重要だ。

 『自分は誰も気づいていない真実にたどり着いた』、その思い込みが目を曇らせる。

 そして、多少の不都合があっても、自らの考えを守るために目をつむってしまうのだ。


「もし仮に、お前から『ABCの法則』を持ち出されれば、俺は多少なりともそれが合理的か考えただろう。そして、『カッターの件』から真の法則に気づいた可能性がある。お前はそれを避けたかった。だからこうしたんだ」


 偽りの解答を導かせ、盗まれたものの重要性から目を逸らせつつ、次のターゲットすら誤解させる。

 実にうまい作戦だ。


「なるほど? 確かに、そう言われれば誘導と取られてもおかしくないわね。でも、それは全て偶然だと、2つ程度ではまだ言い張れるはずよ。もっと説得力のある話をしてくれない?」


 貴理は、言い逃れをしようとしているのではない。

 貴理が犯人であるという、もっと説得力のある説明ができるようにしてあると、そう言っているのだ。

 俺に、それを暴いてみせろ、と。


「それに、忘れてない? 私にはアリバイがあるのよ? 4件目の時、あんたと一緒にいたでしょ?」


 その通り。田中さんがビラを盗まれたと言っていた今日の午前11時頃、貴理は俺とずっと一緒にいた。

 普通に考えれば、貴理に犯行は不可能だ。


「あぁ、そうだな。……誘導の話は前座だ。本題はここから」

「そう? 楽しみね」

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