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0-1 そして彼女はいなくなった
思い出とは――ただの過去。
今日でも、ましてや明日でもない。永遠に届かぬ夢幻。
いくら思い出そうとも、いくら浸ろうとも、何も変わったりしないのだ。
「……ごめんね。友達としかみられない」
もう靄がかかって曖昧にしか覚えていない彼女の顔が、この時ばかりはハッキリと悲しい表情を見せる。
全てを過去にする万能の時間の波も、たった4年ではこの記憶を風化させるにはまだ年月が足りないらしい。
記憶の中で苦笑いを浮かべる君は、この時何を思っていたのか。
残された事実は、この時から俺の中の歯車は止まってしまったということだけだ。
『友達としかみられない』、この言葉がこびりついて離れない。
歯車が再び動き出すときは、果たして訪れるのだろうか……