漫才「お酒が嫌いな理由」
つっこみ(以下、つこ)「僕ですね、お酒が好きなんですよ」
ボケ「あんなもん不味いし」
つこ「そんなことないですよ」
ボケ「苦くて苦くて、拷問か! ってな話だよ」
つこ「全然拷問じゃないですよ!」
ボケ「酒飲むヤツの気が知れない」
つこ「いやでもお酒は会話の潤滑油になりますから」
ボケ「ろれつ回らなくなったらおしまいじゃん」
つこ「いやそこまでベロンベロンには飲まないですよ」
ボケ「じゃあ何なんだよ」
つこ「何と言うか、お酒の力を借りて言いたいことを言い合うみたいなことですよ」
ボケ「それならさ、酒なんて無くても適当に警察官連れて来て、自白のさせ合いっこすればいいじゃん」
つこ「自白のさせ合いっこって何ですか! 軽い感じに言っているけども怖いですよ!」
ボケ「いやでも自白させるのはプロの警察官だから。身を任せれば大丈夫だから」
つこ「何プロに任せれば何でもいいみたいな発想!」
ボケ「だいたいそうだろ」
つこ「まあそうかもしれないけども、警察官は連れて来れないですよ」
ボケ「一一〇番すればいいだろう」
つこ「そんなので警察呼んだらダメですよ!」
ボケ「市民が困ってると言えば来るだろ」
つこ「そういう考えが一番危険ですよ! 警察官は便利屋じゃないですからねっ!」
ボケ「じゃああれだ、拷問のさせ合いっこにしよう」
つこ「さっきから”っこ”付けてかわいくしようとしても無駄ですからね! 怖さ丸出しですからね!」
ボケ「いやいや、コショウを顔に掛けるとかその程度だから」
つこ「凡人が出来る限りの一番卑劣な行為じゃないですか!」
ボケ「後、生のサソリを食べさせるとか」
つこ「いやいや、何だとしても拷問はダメですって」
ボケ「他には嫌な物と言えば……あぁ、酒、酒飲ませよう」
つこ「だからお酒を飲むことは拷問じゃないですからね! そもそも貴方は何でそんなにお酒が嫌いなんですか」
ボケ「……酒屋の息子……」
つこ「えっ? 貴方って酒屋の息子なんですかっ? そうか、親への反抗心からお酒が嫌いに……」
ボケ「……酒屋の息子から借りたゲームが全然クリア出来なくてさ……」
つこ「それ恨む方向間違っていますよ!」
ボケ「そんなことないだろ、道理だろう」
つこ「道を外れまくっていますよ!」
ボケ「いやでもよぉ、俺、二十年経った今でもクリア出来ないんだよぉ」
つこ「だから何なんですか! というか二十年も借りているんですか! 返しましょうよ!」
ボケ「いやだってアイツ、金あるし……」
つこ「そんな理由はまかり通らないですよ!」
ボケ「まあまあ。そうやって酒屋の息子へ憤る気持ちもわかるが、俺はもういいんだ」
つこ「いや貴方に憤っているんですよ!」
ボケ「えっ? マジで?」
つこ「マジですよ!」
ボケ「あぁ、でも何だか嬉しいな」
つこ「何がですか!」
ボケ「俺ってあんまり人に叱られたことないからな……」
つこ「……えっ……」
ボケ「叱られてくれる人がいるだけ俺は幸せだよ」
つこ「……貴方って両親いないんですか……」
ボケ「いやいるよ、でも父親も母親も揃って滑舌悪くてさ……何言っているかわかんないんだ」
つこ「……何の話ですか! これ何の話ですかぁっ!」
ボケ「いやだから叱られた経験あまり無いな、って」
つこ「何か思わせぶりなんですよ! 深みを出そうとしないでよ!」
ボケ「いやぁ、それ天然だわぁ」
つこ「じゃあ逆に良かったですよ! 計算してやっていたならば殴っていましたよ!」
ボケ「カリカリするな、って。俺の両親みたいだな」
つこ「知らないですよ! 貴方の両親なんて!」
ボケ「ほら、俺の両親ってアルコール中毒じゃん? だから止めて欲しくて酒を隠すと、怒りだしてさ」
つこ「……」
ボケ「やっぱ両親って怖いじゃん? だから酒を渡すと、ベロンベロンに酔って滑舌悪くなってさ、何か怒鳴り散らすんだよ」
つこ「……いやそれがお酒嫌いな理由!」