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面倒事はいつでもやって来る   作者: TO~KU
第二章 召喚した国―――リオン国―――
6/26

02 話し合いも厄介

やっと話が進みます。

すみません(;・ω・)

話し合い中、両サイドから刺すような視線をいくつも頂戴し、背中がむず痒かったが、言いたい事はほぼ言えたのでオッケーだろう。

ホッと一息ついていると、長めのチュニックにズボンを履いている男に促され、来た時とは違う騎士に囲まれて移動させられた。

王太子と白ローブの男は部屋に残るようで、ついては来なかった。ただ、顔色があまり良さそうではなかったけど。


廊下、階段、廊下、階段、廊下と、しばらく歩いて連れて来られたのはかなり広い部屋だった。

リビングと思われるところには、キンキラの八人掛けのダイニングテーブル、三人掛けのソファーがテーブルを挟んで二脚あり、奥の観音開きになっている扉からは、木製のダイニングテーブル、二人掛けのソファーが向かい合って二脚、一人掛けのソファー四脚が見えた。


「わ~、すごい」

「ほぁ~、すげえな」

「うわー、凄すぎないか?」


感激の声を上げながら部屋に入っていく制服三人。

ついキョロキョロしてしまうのはしょうがないだろう。

こんな部屋に泊まった事ないから逆に緊張する~。

と一歩部屋に足を踏み入れれば、ふかふかな感触。


後ろを歩いていたツナギ君も「うわっ、すっげ」とこぼしていた。

先に入っていた制服の女の子は、きゃっきゃしながら茶髪の男の子の手を引いて部屋の探索を始めた。黒髪の男の子もそれに続き、部屋には彼等の感嘆の声が響いていた。


その様子を部屋の入り口付近で立ち止まって私は見ていた。

ツナギ君も隣で部屋をキョロキョロと見渡していた。


「あの、後ほどメイドがお茶をお持ちします。食事もこちらの部屋でお取りください」


案内してくれたチュニックの男が話しかけてきた。

一緒についてきた騎士の人達は部屋の中には入ってこなかった。

だけど、扉の前で待機とかするんだろう。


「わかりました。食事の時間はいつでしょうか?」

「只今、二の鐘が鳴った後ですので、三の鐘が鳴りましたら昼食の時間です。夕食は、五の鐘が鳴った後にお持ちします」

「あの、鐘って何でしょうか? 時間の単位とかサラッと教えていただけませんか?」

「失礼いたしました。鐘は――――――――――」


リオン国では、朝六時・九時・正午(十二時)・三時(十五時)・六時(十八時)に鐘を鳴らし、国民に時間を知らせているとの事。

なぜなら時計は遺跡から発掘されるものしか無く、持っているのは金持ちだけという大変高価なものだった。


また月日は、一日が二十四時間、一週間が六日、一か月が五週間(三十日)、一年が十二月(三百六十日)だった。

この、チュニックの男に教えてもらった知識は、神様から貰った知識と大差なく、地球に似た月日の数え方であったので胸を撫で下ろした。


「お手洗いは、手前のリビングのこの部屋、奥のリビング、各個室にありますので、どれを使っていただいても構いません。また、お風呂の使い方は夕刻にご説明いたします。では、失礼いたします」


と言って、トイレの説明をして部屋を出て行った。


「はあぁぁぁ~~~~~」


やっと、緊張から解き放たれ、脱力して三人掛けのソファーにドサリと腰を下ろす。

そして、背凭れに頭を乗せ、両手で顔を覆う。

マジ疲れた。マジ緊張した。

そういえば、今までの召喚は【魂だけ】って神様達言ってたし、神様とお話ししてるから、あんな対応でも今までは大丈夫だったのかも。


そう思って知識を探ると案の定、神様からある程度の説明を受けるから今までは混乱がなかったみたい。

たぶん、今回初めて拉致とか誘拐とか帰せとか言われたんだな、この国。

そりゃあ、対応に困るしびっくりもするわな。

っつうか、帰る手段なんてあんの?


あと、この部屋に来るまでに、何となく気を惹きつけられるような感覚に陥る事が多々あったんだよね。

その気になる物を見つめると鑑定出来、魔法陣や魔道具である事が分かった。

それはどうやら魔力を秘めている物らしく、なぜだか私は魔力を感じられるようになっていた。

うん、なんでだろう。有り難いからいいけど。

それに廊下を歩いている最中、こそこそと色んな物を視てたんだけど、この部屋も変な感じがする箇所がいくつかあるんだよね~。

どういう事?


疑問に思いながら、制服三人の楽しそうな声をBGMにぐったりとソファーに身体を預けていると、ツナギ君がギシリと音を立てて隣に座った。


「何で偽名っすか?」


こそっと小さな声で話しかけてくる。

……まあ、気になるわな。

一方的に共感というか、同情というか、私と同じ【巻き込まれた】子の手助けになればと思ったんだよね。

【マップ】スキルをカスタマイズすれば、場所の検索だけでなく、人や魔物の検索まで出来るみたいだから、同じようなスキルを持ってる人が居てもおかしくないと思ったんだよ。

なら、本当の名前さえ分からなければ検索できないだろうし。

ただ、鑑定とかされて名前を知られたらアウトだけど。


……【巻き込まれた】だけでこの国に義理も何も無いんだし、帰れないなら今後は自由に生きたいと思うのは、私だけじゃなく彼も同じなんじゃないかと思う。

だから、さっさとここから出て自由に生きられるように、そのための手助けとして、偽名を薦めたんだけど。

まあ、全部を一から正直に話すのも時間がかかるし、【巻き込まれ】同志としてちょっとした信用を得られるように、情報を出すか。


そう考えをまとめて、他人に、特にこの国の人に聞かれたくないので、廊下を歩かされている間に確認した【結界魔法】スキルで、結界内の話し声が漏れない設定をして発動する。


「ん~、用心の為」

「……」

「君、神様……ええと女神様に逢ったでしょ?」

「―――っ!! 何でそれをっ!」

「私も逢ってるんだよね。神様に。でもあの子達は逢ってないの」

「え……」

「たぶん私が一番事情を知ってると思う」

「っ……」

「ただ、時間が無いから今は話せない」

「なぜ?」

「誰かに聞かれるかもしれないから」

「!!」


お互いボソボソと小声で話していると、顔にビシビシとツナギ君の視線を感じるが、顔は手で覆ったまま。

これなら覗かれてても、私が何を言ったかは解らないだろう。


「とりあえず、あの子達にもステータスの開示を控えて」

「わかった」

「私、結界スキル持ってるから夜にでも話そうか」

「……ああ」


渋々な返事を聞いて、結界を解く。

はあ……。さっさと勇者召喚に関する話し合いを終わらせて、逃げる算段したい……。

内心ため息をつきながら、部屋の探索をしていた制服三人を呼んで、向かいのソファーに座ってもらった。


「ほんと、凄かった!」

「個室もすごく広かったな!」

「スイートルームみたいだった!」

「そうなの? 良かったわね」


興奮冷めやらぬ状態の三人をひとまず宥めて、話が出来る様に落ち着かせる。

いや~、ホント若いわ~。

すると、ハッとした顔をして茶髪君が自己紹介を始めようとしたので遮った。


「あ! さっきはありがとうございました! 僕は」

「初めまして。自己紹介だけど、誰が聴いてるか解らないから、そこの所よく考えて言おうね」

「―――っ!!」


茶髪君は目を見開き、他の制服二人も驚いた顔をした。

そして、三人は顔を見合わせた後、頷いていた。


「私は、小畠と言います。三十代です。会社員でした」

「……俺は、榊だ。二十代で、会社員」

「僕は、徳田。高校二年生です」

「俺も徳田と同じく、高二の高橋です」

「私も高校二年生で森本です」


私から自己紹介をすると、皆も同じように簡単な自己紹介をしてくれた。

ツナギ君が榊君で、茶髪君が徳田君、黒髪短髪が高橋君、女の子が森本さんね。

二十代に高校生か……若いなぁ~。

彼等の年齢を羨ましく思いつつも、下手な発言が出てくる前にさっさとやるべき事をしようと、私が議長のような役割をして、賠償・魔族領までの移動手段確保についての私達の要望を五人で話し合う流れに持っていった。


その話の途中、可愛いメイドさんがやって来て、皆注目。お茶を持ってきてくれたのだが、生メイド登場でつい話が逸れてしまったのは仕方がない。

軌道修正して話し合いの続きをした結果、賠償・魔族領までの移動手段確保は、確実に目に見える形が良いという事になり、『常識を学ぶための教育一か月』『賠償金』『旅費並びに護衛』という結論になった。


そして、勇者報酬についての話を勧める前に、ちょっとした爆弾を突っ込んでみた。

彼等の性格や考えを知るためにも。


「ふう。次は勇者の報酬・待遇なんだけど……。皆は自分のステータス確認できない?」

「……出来るな」

「出来ます。僕、小畠さんが王様に話してる時に確かめてみました」

「私も」

「俺も」


ステータスは『ステータスが見たい』と思うと頭の中に出てくるから周囲には分からない。

だから、確認してるんじゃないかと思ったけどやっぱりね。


「じゃあ、なんで勇者じゃない可能性を話したかわかる?」

「「「「―――っ!!」」」」

「そう、私は【称号】に【巻き込まれた異世界人】とあるけど、【勇者】は無いの」


苦笑いしながらキッパリと言うと、高校生三人は愕然とした表情になり、榊君は驚いたように見つめてくる。


「……俺もだ」


私に続いてぼそりと榊君が言うと、高校生三人の視線は私と榊君を往復し、口をパクパクとさせる。言葉が出ないようだ。

皆びっくりさせてごめん。

でも、私は神様から聴いてて何となく分かってたんだ。


「だからね、勇者の報酬・待遇は勇者の【称号】がある人で話し合って、勇者でなかった場合の待遇は【称号】の無い人で話し合った方が良いと思う」

「え? でも僕達よく解らないから……」

「そうよ。私達じゃ……」

「俺等だけじゃ、無理です……」


不安そうにしながらシュンと落ち込む三人。


「申し訳ないけど、一緒に話をする事は出来ない。だって、私は勇者じゃないから。私と榊君は、この国の人達に【不良品】として放り出される可能性だって十分あり得る。だから、自分で自分を守るために私は榊君と相談したい。貴方達も自分を守るために、勇者になるのかならないのか、勇者になるならどれだけの給料やどんな衣食住が良いのかを話し合って欲しい。そして、お互い話が纏まった後に意見交換したらいいと思うんだけど」

「……わかりました」

「でも!」

「いいから。小畠さんは後で話を聞いてくれるって言っただろう」


三人は渋々といった様子で奥のリビングに移動していった。

聞き分けが良くて助かった。

これなら、向こうは勝手に考えて行動してくれるかな?

そうしてくれれば、こっちはこっちで勝手にするし。

その方が逃げ易くて有り難い、と思っていると、


「くくく。あんた厳しいんだか、優しいんだか、解んねえな」


と榊君に評価されました。

ああ、榊君には区別している事が分かったんだね。


「そうかな? まあ、優しくないかもしれないけど厳しくもないと思うけど」

「あいつ等にはもっと解らんだろうな。だが、自分達で決めさせるのは俺も賛成だ。ただ、あんたがまさか【巻き込まれた異世界人】とはね……」

「……それは後で話すわ。先に今後の事だけど、私は教育一か月の後すぐに城を出たい。なんなら、利用される前に、明日にでも出たいくらい」

「奇遇だな。俺もだ。だが少しくらいはこの世界の知識が無いと路頭に迷いそうだからな。何もなければ教育を受けた方がいいと思う」

「そうだね。じゃあ、城を出る事は決定で。時期は一か月後か、この国の対応次第ね。その時に何か貰う?」

「何かとは?」

「迷惑料。間違えて召喚したんだもの。それくらいは許されるんじゃないかと思うけど」

「賠償とかとは別にか?」

「そう」

「……貰えるか? 無理そうな気がする」

「じゃあ、交渉してみて、無理そうだったら無しね」

「ああ」

「あ、あと、部屋とか一か月間の生活水準だけど、――――――――――」


私達の話し合いは、ほんの十五分で終わってしまった。

その中で、今居る部屋は確実に【勇者】用だろうから、明日から違う部屋にしてもらおうという事や、一か月の間は下位貴族か王城使用人ぐらいの待遇にしてもらおうという事になった。

まあ、お互い神様から使命的な事を授けられてるから、過度な待遇受けるよりも早く城を出たいもんね。

ただ話し合い中の榊君は、意外に口が悪うございました。

年上の私にため口。いや、いいんだけど。いいんだけどね。なんかモヤっとする。


「はあ。暇だし、ちょっと部屋みてくる」


気分を変えるためにソファーから立ち上がると、何故か榊君もついてきた。

奥のリビングに行くと、高校生三人から「え? もう終わったんですか?」とびっくりされた。

その後三人がアワアワと焦った表情になったので、「私達は話し合う内容が少なかっただけ」「三人が納得するまで話し合って構わない」と声をかけて話し合いの続きを促しておいた。

そうして、三人の邪魔にならないように各部屋の探索をした。


うん。あの子達が感嘆の声を上げていたのに納得。

どの部屋もキンピカでゴージャス。

クローゼット完備で、トイレとお風呂も各部屋にあったし、何より広い!

全てのベッドがキングサイズで、四人掛けのテーブルと二人掛けソファーが二脚、どの部屋にも設置してあった。

すごいという言葉しか出てこない宿泊場所に、喜びよりも「これ壊したら弁償できるの?!」という気持ちの方が強くなってしまった。

榊君も初めは「……マジですげぇな」と感嘆していたが、最後には顔が引きつっていた。

うん。そうだよね。


お部屋探索が終わると、また暇になる。

高校生三人の邪魔にならないように、さっき座っていたソファーに舞い戻って来た。

さっき鏡でみた自分の容姿がかなり若気だったので、なんでだろう? と考えながらしばらく無言でお茶を飲んでいると、榊君から話しかけられる。


「なあ、あんたここを出てどうする?」

「ん? ……とりあえず仕事見つける」

「……そうか」

「お金稼がないと路銀が尽きたらアウトでしょ」

「……まあ、そうだな」

「……」

「……」

「おかわりいる?」

「……ああ」


暇な私達は、ちょっとした小話をしてはお茶を飲む、というサイクルを繰り返した。

たまに会話が途切れると、自分の容姿が若返っている理由をメニューから探ってみた。

……魔(動)族神のせいでした……。

【完璧身体】の『全耐性を持ち、劣化しない』の『劣化しない』が若返りの原因だと思う。その【完璧身体】は【ルラノスの恩寵】の効果でした。

ははははは。


でも、なんで【魔(動)族神】っていう表記何だろう?

まあ、いいか。

他にも、創造神【ファイの寵愛】には『固有スキル【神の息吹】』、人族神【ネウリピュアの恩寵】には『固有スキル【スキル譲渡】』のスキルがついてたし。

これ、神様からのお礼とお詫びが凄すぎないか?


榊君と小話をしたり、他にもやられてるかも?! とメニューをつついたりしていると、

『カーンカーンカーン』と甲高い鐘の音が聞こえてきた。


静脈麻酔って、面白いですね(笑

四次元のワープ世界に飛ばされました。

が、麻酔が切れたら痛みで悶えて最悪ですけどね・・・。(;・ω・)


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