2
読んで下さりありがとうございます(* ̄∇ ̄*)
今までは生き物を迂回していたが、練習の為に迂回せず、まっすぐ南西方向にガサガサと音を立てながら歩いて行く。
【マップ】で赤点が近づいてるのに気付いたが知らぬふりをしておいた。
「っ!!」
緊張した様子で剣を構える賢哉。
じっと一方向を見つめ、剣を横に構える。
「チチチチチッ」
出てきたのは、でっかいリス。
手のひらサイズの可愛いリスじゃなくて、指先から肘くらいまである大きなリスで、目が暗闇の中で光っていて少し不気味だった。
こちらを見たリスが二ヤッと嗤ったかと思うと、ガサガサとリスの後ろから音がする。
すると、大量のリスが出現した。
「「……はあ?」」
一瞬二人で呆けてしまったが、大量のリスがこちらに飛びかかってきた。
「ちょ、やばくねぇ?!」
「なにこのリス?!」
飛びかかってくるリスに恐怖を感じ、慌てて距離を取ろうと逃げるが、リスはニヤニヤと嗤いながら追いかけてくる。
マジ不気味!!
つうか、何なのコイツ!
**********
【名称】 ビッグリース
【ランク】 E
【Lv】 7
【HP】 50/50
【MP】 10/10
【筋力】 50
【防御力】 70
【精神力】 20
【敏捷力】 80
【スキル】引っ掻きLv2 噛み付きLe2
【備考】ファイ全土に生息する魔物化した肉食小動物。
爪や牙で攻撃し、時に毒や麻痺を使う。
素材:毛皮 魔石
**********
気を利かせて【鑑定】か【解析】が発動したようで、リスの詳細が頭に浮かんだ。
「やべぇ! 賢哉! コイツ等毒持ってる!」
「マジか?! 逃げるぞ!!」
ええ、走って逃げましたよ。【マップ】もあるし、取り敢えずリス……じゃなかったビッグリースの追走をかわして、滅茶苦茶走りました。
本気で走れば、50メートルを4秒で走れるんじゃないかと思えるくらい結構な速度が出て、何とか逃げ切りました。
「はぁ……はぁ……っはぁ……」
「……はっ……はぁ……マジびっくりした」
「俺だって……」
「……っんく……アイツ等……肉食だって……。……ってか、毒消し……持ってるけど、あの不気味な嗤いに……ドン引き……」
「……確かに……」
安全な日本で動物に飛びかかられるなんぞ、猫か犬くらいだし、ましてや食べようとしてくる動物なんていなかったから、背筋がゾッとした。
だけど、こうして弱肉強食を肌でリアルに感じた事で、頭の中がスッキリした。
―――――敵対するものに情けは要らない
と。
躊躇すれば自分の命が無くなってしまう。
やはり、レベルをある程度上げておいて、自衛しておくに越したことはないな。
そう思って賢哉を見ると、賢哉も目つきが変わった。
それから、一段と気を引き締めて山の中を歩き出した。
あまり目立たないように、うっすらと光る玉を【光魔法】で出し、キョロキョロと周囲に目を向け、警戒しながら歩く。
こんな電灯も無い、暗闇の中で歩き続けているので、【夜目】も取得した。
しばらく歩くと、またガサガサと音が近づいてくる。
賢哉は足を踏み込むと、音のする方へ剣を構えた。
草から何かが飛び出してくると、賢哉はそれに向かって袈裟切りして地面に剣を突き刺した。
「ヂュ……」
赤黒い血を噴き出して生き物は息絶える。
「……ヌートリア?」
「……お? レベルアップしたぞ……?」
飛び出してきたのは、見た事のあるヌートリアらしきものだった。
賢哉は嬉しそうに、けれどどこか唖然として呟いた。
生き物を自分の手で殺した事に嫌悪感を抱く様子もない。
それよりも、簡単にレベルアップした事にびっくりしたようだ。
確かに一匹でレベルアップって……。
よく分かんないけど、こんなに早くレベルアップってするもんなの?
神様達からの寵愛・恩寵のオンパレードのステータスを思い出して、背筋が冷やっとするのは気のせいだろうか……。
「……まあ、強くなるんだからいいんじゃない?」
そうだ。強い事は死なない事に繋がる。
うん、強くなっていいじゃない!
そう、私は一人で色んな所を旅行するつもりだもの。
強くなくちゃ行けない場所もあるだろうし。
賢哉を納得させるつもりが、自分を納得させていた。
「そうだな。……あー……これって食べられるのか?」
あ、そうだった。レベルアップもそうだけど、食料の確保もしなきゃいけなかった。
「鑑定してみようか」
食料や素材になるのか知りたいと思いながら【鑑定】してみた。
**********
【名称】 グレーラット (死体)
【備考】ファイ全土に生息する草食小動物。
素材:毛皮 肉 魔石
肉は食用可だが、臭みが酷く余程の事がないと食さない
**********
「は?」
「どうした?」
「いや……」
さっきのビッグリースは『魔物化した』とあったけど、グレーラットにはない。
けど、『魔石』はどっちも持ってる。
どういうことだろう? 『魔石』は皆持ってるって事? 私も? よく分からん。
考え込みそうになるが、500メートル先に動いている魔力を感じて思考を止める。
「後で話すわ。それより、ここで解体するのは危ないから、そのままアイテムボックスに入れて先へ進もう」
「……」
賢哉に、訝し気に見つめられる。
「ちゃんと話すから。それより、強そうな生き物がこっちに向かって来てる」
「!! っマジかッ?!」
「ええ。……速い……」
賢哉は慌ててグレーラットをアイテムボックスに入れると、私が睨んでいる方向に剣を構えた。
感じた魔力は私達よりもだいぶ低めだが、【マップ】でその生き物と私達の間に表示されていた赤点がちらほら消えていく。
こちらに向かって来ているのは一つかと思いきや、赤点が一つまた一つと合流し、五つの赤点になった。
賢哉の攻撃は剣か火魔法。
周りに木があるので火魔法は使えない。
剣とて、今まで使った事が無い私達は素人だ。
短剣を構えながら、大きな音を立てることなく素早い生き物を殺す手段を考える。
「……賢哉、私が前に出る。後ろに警戒しててくれる?」
「……大丈夫なのか?」
「策はあるから」
いつも読んでくださる方も、初めての方もありがとうございますm(__)m
皆様のおかげで、本日、初投稿作品の『衝撃は防御しつつ返すのが当然です~転生令嬢の異世界ライフ術~』が発売されます。
よろしかったらこちらの作品もよろしくお願いいたします(* ̄∇ ̄*)