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面倒事はいつでもやって来る   作者: TO~KU
第二章 召喚した国―――リオン国―――
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06 城から脱走

「どうされました? 城内は供を付けずに出歩かれませんよう……」


扉を守っていた護衛に阻まれるが、言葉を聞かずに横をすり抜ける。

榊君も反対側からすり抜け、そのままお互いダッシュした。


慌てて捕まえようと追ってくる護衛二人は、大声で制止や応援を叫ぶ。

いや、待たないよ。


【マップ】スキルで人気がなく城外へ繋がっている道を探し、榊君を誘導していると、大声に反応して前方から五人の騎士が駆けつけてきた。

榊君が拳を握り構えるが、私の結界で弾き飛んでいく。

胡乱な目で榊君から見られたが、知らんぷり。


いや、時間がもったいないじゃん。

自分の戦闘能力の確認なんて、ここを出ればいくらだって出来るし、怪我したら面倒じゃない。

え? 俺のやる気を返せ?

そのやる気は召喚陣破壊につぎ込んでくれ。

それより、鎧を着てる人がポーンと跳ね返っていくの、シュールじゃない?

ん? あんたを怒らせることはしないようにする?

たぶん滅多な事じゃ怒らないと思うけど……。


駆けつけてくる騎士達は必死だが、私達はのほほんと会話をしながら城内を疾走する。

いや~、私の身体全然疲れないんだよね。

榊君も、息を切らしている様子はないので、平気なんだと思う。

しみじみと自分の体の頑丈さに有り難く思いながら、やっとたどり着いた階段を下りていく。


実は、私達が案内された部屋は三階だった。

たぶん、逃走出来ないようにだと思う。

王様と対面した『謁見の間』(?)の天井の高さからすると、地球の感覚では六~七階分の高さはあったように思う。

ま、この国の人、皆背が高かったしね。


それに普通の人は、いや、従来の勇者がそこから逃走することは今までなかっただろう。

なにせ、個室の窓の下は庭園になってて、そこを突っ切って城壁さえ何とかすれば外に出られるし。

本当は私達がそこから飛び降りて逃げたかったが、一応高校生三人に譲った。

それに気付いているといいんだけど、まあ、飛び降りる勇気がないと難しいかも……。


さて、階段を下りると、この階は人気があまり無く変に広い部屋がある事が【マップ】で分かっている。

私の予想では、ダンスホールか会議場、大穴で食堂ではないかと考えていた。

その広い部屋に向かって走っていると、後ろから追って来ていた騎士から、


「なんだってええ?!!! 本当か?!!!」


という驚愕の叫びが聞こえてきた。

恐らく、高校生三人も行動を起こしたんだろう。

おかげで複数の足音が遠くに消え去っていき、私達の追手の数が少なくなった。

ラッキー♪

ニヤリと口元を歪める。


目の前に目的の部屋のドアを見つけると、榊君に先に部屋へ入るよう言い置き、私はクルリと方向転換して騎士達へ突っ込んでいく。

ふふふふふ~。人間ボウリング~。

打ち身や骨折くらいで、死にはしないと思うから勘弁してね~。

なにせ、この国の行った勇者召喚で私は巻き添えを食らったんだ。

少しは気を晴らさせてもらっても構わんだろう。


飛んでくる同僚にびっくりし、その攻撃をしている私に戦き、後続の騎士がたじろいで足を止めた瞬間、また踵を返して走る。


扉の前には、部屋に入らずに呆れた顔をしてこちらを見る榊君が立っていた。

あれ? 入らなかったの?

誰かいたら怖えし、結界があった方が安心?

え? 今、榊君の周りにも結界張ってるよ?

それを早く言え?


眉間にしわを寄せた不機嫌な榊君と部屋に入る。

すると、まさかの図書館でした。

そりゃあ、人なんて居ないわな。こんな夜中に。

【光魔法】で球体の灯りを作り、奥へ進んでいく。

だけど、迷路になっていて、思うように先へ進めない。

扉の向こうからは、沢山の駆け寄ってくる足音と、「出入り口はここだけだから―――――」という話し声が聞こえてくる。

早く進むために、仕方がないので本棚の上に飛び乗る。


榊君も飛び乗って来たので、そのまま棚の上を走っていく。

違う棚に行きたい時は、ジャンプ。

そして、目的の一番壁際にある本棚に到着すると、床に飛び降りる。


「なあ、さっき後ろで出入り口は一つだって言ってたよな」


どうすんだよ? という疑わしい眼差しを貰うが、気にせず本棚を調べていく。

ため息は、幸せが逃げて行くよ~。

と心の中で突っ込みながら、六段目にあったうっすらと壁と魔力が繋がっている本を触る。

それが何かって?

こうするんだよ。

手前に倒してみる……が何も起こらない。


……ごめんごめん。そんなに怒った顔しなくてもいいじゃん。

気を取り直して、本を引き抜くと、本棚が後ろへ動いた。

一メートルほど沈むと、本棚の左側に人が一人通れる隙間が出来る。


二人でその隙間を通ると、そこには四畳半程の空間があり、右の壁に下へ降りる階段を見つける。

その階段の方へ行くと、沈んだ本棚の背板が一か所だけくり抜かれている所があるのに気が付いた。

ん? これ?

持っていた本に、榊君と同時に視線を向ける。

そっと本を差し込んでみると、本棚が元の位置へ戻って行く。


「……あんたを疑う訳じゃあないが、これで外へ出られるのか? つうか、あんた何でこんな仕掛けがあるって知ってるんだ?」


説明をせずに連れて来た事が悪かったのか、とうとう榊君から低い声で言われました。


「ごめん。たぶん外に出られる。仕掛けを知っていた訳じゃない。空間があるっていう事だけ分かってたのよ。ほら話した【マップ】スキル。本当は、知らなくても建物の構造を表してくれるの。その代わり、椅子とか机とか障害物は私が認識しないと反映されないけど」

「はぁぁぁぁぁ。あんたホンっと便利なスキル持ってんな」


どうやら、諦めて……いや、呆れて許してくれたらしい。

本当は、見たいと思ったら人や動物とかも【マップ】に出るんだ。すまん。

コツコツと靴音を立てて、何度か曲がりながら階段を降りて行くと、まっすぐに通路が伸びている場所にたどり着いた。


その通路をしばらく歩くと、今度は上る階段が出てくる。

恐る恐る階段を上り、かなりの段数上ったてっぺんにあった木製の片手ドアから気配を窺う。

警戒したものの、【マップ】上でも【気配感知】でも人の気配がほとんどしないので、ゆっくりとドアを開ける。

そこは、古びた石造りの三畳ほどの空間で、埃が溜まっている以外、窓も他のドアも無かった。


「……出れねぇじゃねぇか」

「……いや、この壁の向こうはちゃんと外なんだよ。ちょっと失礼」


壁中をよ~く調べてみても、魔法の痕跡も取っ手も引きずった跡も無い。

困り果てて、しゃーない、【地魔法】を使って壁一面を取り外す。

【地魔法】に唖然としていた榊君を促して外へ出れば、……そこは墓地でした。


慌てて光の強さを抑え、私達が通った痕跡を隠すために、【風魔法】で埃をたたせて壁を元に戻す。

これで、足跡も消えるだろう。

一仕事終わった、と満足のため息をつくと、榊君がじっとどこかを見ていたので、つられて視線を向けると王城だった。


この墓地は山すそを切り開いて作ったようで少し小高くなっていて、城壁の外にあった。

周囲には、私達が出てきた石造りの小さな小屋のようなものと同じような物が数十個並び、坂を下る途中に石や木でできた墓標を表す立て板のような物が無数にあった。

榊君を後ろにつかせて、小走りで坂を下りていく。


腰の高さの小さい木が乱雑に生えている平地にたどり着くと、遠目に五メートルはある壁と閉ざされた門、そしてたき火が十数個見えた。

壁の周りにはテントが張ってあり、閉門に間に合わなかった人達がここで野宿するつもりだという事が見て取れる。

榊君と顔を見合わせ、どうやら城壁どころか王都の守護壁の外まで出てしまった事を実感し、お互い顔が緩んでしまう。


「これ、逃げれたんだよな?」

「一応ね」

「……追手が来ると思うか?」

「……あの子達が捕まってなけりゃね……ただ、指名手配されたら黒目黒髪だからバレ易いかも……」

「……これからどうする?」

「ん? 初めのダンジョンまでは私に任せてくれるの?」

「ああ。あんたのやり方を見て勉強するさ。今後の為に」

「そう。じゃあ、神様お薦めのダンジョンが南西方向にあるからそこに行こうか」

「分かった」


守護壁に沿うように設営されていたテントに背を向け、私と榊君は暗闇に消える様に歩き出した。

リオン国……いや、世界の法則に反して神の怒りに触れた国よ、あばよ!


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