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面倒事はいつでもやって来る   作者: TO~KU
第二章 召喚した国―――リオン国―――
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番外編 side ????(榊)   04


お茶を持ってきたメイドに、この人は奥のリビング、三人組が話しているソファーセットの所へセティングを指示する。

セティングを終えると、メイドは風呂の使い方を説明した。


バスタブに湯船、馴染みのある形状に少し安心した。

ただ、魔石に魔力を流してお湯を出す事に、ああここは異世界なんだと実感した。

お湯を出す練習もして、いつでもお風呂に入られるようになった。

メイドも、いつでもお入りくださいと言ったから、好きな時に入ってくれって事だろう。

次の鐘が鳴ったら夕食を持ってくる事を言うと、メイドは部屋から出て行った。


三人組に裏事情を話す気でいたのに、そんな気も知らず、三人組は『魔石』や『魔物』が存在することが分かってはしゃいでいた。

……今は和やかな雰囲気だが、絶対ぇめんどくせぇ反応するんだろうな。


「ねえ、ごめんだけど、大事な話があるんだ」


キャーキャー騒いでいた三人組にこの人が声を掛ける。

この人は三人組をそのまま奥のリビング誘導し、開きっ放しだった扉を閉めて一人掛けソファーを奥から持ってきた。

俺も一人掛けソファーを同じように持って来て、この人の対角に移動して座った。


徳田が三人掛けソファーを勧めるが、この人は「ここがいい」と言ってぶっきらぼうにドサリとソファーに腰かけた。

さっきまでとは少し違うこの人の様子に一瞬、三人組も不思議そうにしたがすぐに目の前のお菓子に目が奪われていた。


その時、また周囲に何かを感じた。

結界を張っているんだろう。


「あのね、食べながらでもいいから聴いてね。実は、私は皆とは違う理由でこの世界に来てるのよ」


この人が言葉を口にすると、三人組はお菓子を口に運んだ状態で固まった。

そりゃあ、ビックリするだろう。


三人組の様子に構わず、玄関開けたら召喚された事、創造神に召喚された事、世界崩壊の修正のために召喚された事、その原因の事、報酬交渉の事、巻き込まれが居る事、神罰の事、さっき神託が下りてきた事を、スラスラと話していく。

報酬内容や俺が本来の召喚されし子である事、ダンジョン報酬などは、言わなかった。

きっと、俺がコイツ等に攻撃されないように、本来の召喚されし子である事を言わなかったんだろう。

他の報酬についても、コイツ等の妬みや嫉妬を煽らないように配慮したんだろうな。


この人の、懐のデカさを感じながら三人組を見ると、愕然として話が心の奥に響いていないようで、アワアワと混乱し出した。


「え? なに? この国って悪い国?!」

「私達、神様に逢ってないよね?!」

「なあ、俺等帰れるのか?!」

「この国出た方が良いんですか?!」

「私達の召喚はおかしいの?!」

「帰還用の魔法陣も一緒に消えないよな?!」


各自違う事を機関銃のように尋ねだし、口を開く隙も与えないくせに困った顔をして黙っているこの人を罵りだした。


「あんた!! 自分だけ知ってて何で黙ってるわけ?! ずるいわよ!!」

「なんでもっと早く教えてくれなかったんだ!!」

「そうだ!!」


挙句の果てにこの人に掴み掛かりそうになっていたので、大きな声で怒鳴った。


「やめろ!!! お前等、この人に散々助けてもらっておいて、よく言うな。お前等だけだったら、交渉の余地も無く、強制的に勇者にされて、即刻使い潰されてるぞ」


思っていた事を口にすると、三人組は青い顔をして固まった。

その様子を見て、この人は心底面倒臭そうに口を開いた。


「はあ~~~。とりあえず座ったら?」


ぎこちない動作で三人組がソファーに座ると、


「ねえ、私、地球での存在まで消されて、強制的に働かされたの。これ以上面倒事に関わりたくないのよ。それに、早く教えろと言うけど、そもそも話す話さないは私が決める事。貴方達に話さなくても私は何も困らないのに、わざわざ教えてあげたのよ?」

「「「はあ?!」」」

「黙れ!!」


優しい口調も面倒になったのか、この人は歯に衣着せぬ物言いで話した。

それにカチンときたのか、三人組が声を張り上げるので、黙らせた。


この人の言うことはもっともだ。

コイツ等に関わると面倒事がひっついてくる。

話す話さないもこの人の自由で、話してもらいたいなら下手に出るなり仲良くなるなりして、話す気になってもらえるようにするのが当たり前だ。


だが、自分達の想いで頭がいっぱいのコイツ等には、勝手な言い分に聞こえるんだろう。

イラついた態度をする三人組に、返り討ちにする気満々のこの人は口を開いた。


「だったら、これで全部話したんだもの。貴方達ともう関わらないでもいいでしょ? アドバイスも相談も選択肢の提示もしないし、明日の交渉は自分の分だけするから、貴方達は自分達で勝手にすれば?」


それを言われると、三人組はサッと血の気が引いたのか、大人しくなった。


「私は私の考えで行動しているの。貴方達も貴方達の考えで行動しているでしょ? 私は言っても言わなくても状況が変わる事はないから黙ってた。でも貴方達は情報収集しようとか一つでも知りたい事を増やしたいとか思って、何かしたの? 早く言えばよかったのに、って人のせいにするんじゃなくて、それを聞く前に貴方達は何か行動を起こしたの? ねえ、自分が何もしていない事を今更私の責任にするなんて、人としてどうなのかしら? 結局自分が判断して行動するんだから、自分の責任でしょ? 言動全てに貴方達自身の責任があるの。自分が決めて自分で行動を起こしてるんだから、人のせいにしないで。それに、各自がどうしたいかなんてそれぞれ違うし、自分のしたい事は自分で決めているでしょう。どういう状況になっても、どんな事態になっても全ては自己責任なの。そこの所、きちんと理解しなさい。解った?」

「「「……はい……」」」


この人の冷たい視線は怖かった。

まあ、この人はこう言ってるがコイツ等にアドバイスとか結構してるんだよな。

三人組はこの人の言い分に納得しているようには見えないが、一応返事をした。

そんなコイツ等にこの人は、明日城を出るつもりである事、賠償は全て金銭にしてもらう事を話して、コイツ等がとれる選択肢を提示した。


「一つ目は、すぐに帰る。二つ目は、この国でずっと勇者をする。三つ目は、他国でずっと勇者をする。四つ目は、この国で何年か勇者をして帰る。五つ目は、他国で何年か勇者をして帰る。六つ目は、勇者をせずにこの世界で生きる。くらいね。ただ、本当に帰れるのかは私も知らないし、勇者するならさっきまで報酬内容を考えてたんだから自分達で交渉しなさい。」

「……本当に帰られるか知らないんですか?」

「知らないわ。私は地球に戻れないから訊いてない」

「……本当に?」

「はぁ。くどい! 消されるってね、親にも兄弟にも友達にも認識してもらえないし、戸籍も職も学歴も財産も一切合切無くなってる状態なの。そんなんで、どうやって地球で生きて行けばいいのよ。だから、私は帰れる事に興味が無いのよ。知りたきゃ自分で調べな!」


面倒臭そうにしていても、コイツ等にアドバイスするから、この人根が優しいんじゃねぇか? と思い始めた。

が、グチグチと言ってくる高橋に、この人はついにキレた。

高橋も残りの二人もマズいと思ったのか、目に涙を浮かべて不安そうにはしているが、怒りの方が勝っているのかイライラした瞳でこの人を見ていた。


謝りたくないけど、突き放されても困る……とでも思ってんのかもな。

今更だぜ、それ。

この人は俺を含め、適度なラインを引いて接している。

そのラインは面倒を持ち込むか持ち込まないかで、またラインが引かれている感じがする。

なにせ、俺にはここまで突き放すような言動はしないからな。

特に、この人の気を悪くさせるようなことを言ったことも無いし、することも無いしな。

……この人は面倒事というか、責任を押し付けられるのが嫌なのか?


よく分からないが、人のせいにするコイツ等の態度は傍から見ていてもイラッとする。

この人も、勝手にしろと言わんばかりの態度で、お茶を飲み始めた。

……ホント、コイツ等この人に何を求めてるんだ?

この人、巻き込まれた赤の他人で、お前等の親でもねぇんだぞ?

そう思って、眉間にしわを寄せて三人組を凝視していた。


ボソボソと三人で話し合いを始めるが、途中この人に「この国の人は良くないですか?」とか「どれが一番良い選択肢ですか?」とか質問しては「あんたはどう思うの?」と切り返されて黙る三人組。

「一緒に帰れる方法を探してもらえますか?」という質問ではなくお願い事に、「私は帰れないのに?」と冷たく返すこの人。

さっきまでは改善点やアドバイスを交えて答えていたが、一切それをしなくなった。

そんなこの人の様子に諦めたのか、三人組は質問することはなくなった。


そして、三人組の選択肢が決まりそうなタイミングでこの人は口を開いた。


「今、この部屋には遮音の結界を張っているの。だから、世界を崩壊させそうになったとか明後日に神託が下りるとか三日後に罰が下るとか、この部屋で話した内容はこの国の人には知られてない。だけど、知られたら私達は間違いなく監禁されるでしょうね。だって、最後の勇者と最後の異世界人だもの。そこら辺をよく考えて、明日発言してね」


一気に裏事情を聴かされまだ処理しきれていない所に、追加の情報という名の爆弾を投げ込まれて、三人組は泣き喚きだした。

うるせぇ。


「……泣いても誰も助けに来てくれねぇぞ」


事実を突きつけてやったが、ふと気付いた。

ああそうか。俺もそうだったように、コイツ等も誰かに助けてもらえるのが当たり前の感覚なのか。

だから、面倒くせぇのか。

感謝も労わりも無く、助けてもらえるのが当たり前の傲慢な思考回路。

しかも、それに気付こうとしない幼い自律心。

この人は面倒事が嫌いだと言っていたが、面倒事を運んでくるコイツ等みたいな人格の奴が嫌いなのかもしれないな。

泣き喚きながら不満と不安を口にする三人組を、俺は侮蔑の眼差しで見つめた。


しばらくして、鼻水をすする音だけになると虚ろな顔をした三人組にこの人は風呂を勧めた。

コイツ等、やっと自分達で何とかするしかないって理解した感じか……。

言われた事に従って三人組はフラフラと風呂へ入りに個室へ歩き出す。


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