表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
面倒事はいつでもやって来る   作者: TO~KU
第二章 召喚した国―――リオン国―――
13/26

番外編 side 高橋正也(たかはしまさや)   04

十五時の鐘が鳴り、メイドさんがお茶とお菓子を持ってきてくれたが、何故かセティングは俺達が話していたソファーにだった。

不思議に思っていたが、風呂の使い方を教えられ、『魔石』『魔物』という言葉に小説と同じじゃないか?! と興奮し、翔馬達とスゲェスゲェと騒いでしまった。

そんな俺達に、


「ねえ、ごめんだけど、大事な話があるんだ」


と小畠さんが真剣な目をして言ってきた。

興奮してペチャクチャと喋る俺達を、さっきまで俺達が使っていた二人掛けソファーのセットへ連れて行く。

その途中、手前のリビングと奥のリビングの間にある開けっ放しの扉を閉め、一人掛けソファーを俺達のソファーの直角に運んで小畠さん達は座った。


三人掛けソファーを翔馬が進めるが、何故か小畠さんはこっちがいいと言った。

不思議に思ったが、目の前にあるお菓子に視線が釘付けになる。

クッキーか? 美味そうだな。


「あのね、食べながらでもいいから聴いてね」


そう言われ、お菓子を食べながら聴いた内容は衝撃的過ぎた。

小畠さんは、俺達とは違う理由でこの世界に来ている、と言う。

そして、小畠さんの召喚について、淡々と説明された。


玄関出たら召喚された事、創造神に召喚された事、召喚手順改造による世界崩壊の危機、召喚の理由、創造神との交渉、三柱と報酬相談、巻き込まれの存在(榊君の事)、神罰の事を。

唖然として、小畠さんの言っている事が中々頭に入ってこない。

最後に、


「さっき神様から神託が下りてきて、人族に罰が下るのが三日後、他の人に神託が下りるのは二日後」


と言われ、不安と混乱と憤りで、頭がぐちゃぐちゃになる。

何から確かめたらいいのか、何を訊けばいいのか、どうすればいいのか、頭の中が上手く処理しきれずにこんがらがって訳が分からない。


召喚手順を改造したこの国は悪いんじゃないか?

俺達は勇者だろう? なのに何で神様に逢ってないんだ? 

神様に逢っていないのに、俺達が本当に勇者なのか?

召喚陣破壊って、俺達帰れるのか?


「え? なに? この国って悪い国?!」

「私達、神様に逢ってないよね?!」

「なあ、俺等帰れるのか?!」

「この国出た方が良いんですか?!」

「私達の召喚はおかしいの?!」

「帰還用の魔法陣も一緒に消えないよな?!」


混乱したまま俺達はそれぞれ小畠さんに尋ねる。

困った顔をして答えてくれる様子が無い事に腹が立って、段々と声がキツくなり身を乗り出してしまう。

そして、何でもっと早く言ってくれなかったのか! という怒りの想いに囚われて、小畠さんに掴み掛かろうとした。


「やめろ!!! お前等、この人に散々助けてもらっておいて、よく言うな。お前等だけだったら、交渉の余地も無く、強制的に勇者にされて、即刻使い潰されてるぞ」


空気をビリビリ震わせ榊さんが怒鳴った。

そして、ゾッとするほど低い声で脅され、俺達はカチンと固まった。

この人に逆らったらマズイ、と恐怖が湧いてくる。


そして、小畠さんからもキツイ口調で俺達を逆なでするような事を言われた。

勝手な言い分だな! と三人揃って「はあ?!」と言うが、また榊さんに怒鳴られる。

この女、マジでムカつく。

と思っていたが、


「じゃあ、アドバイスも相談も選択肢の提示もしないし、明日の交渉は自分の分だけするから、貴方達は自分達で勝手にすれば?」


と突き放された瞬間、冷たい水をぶっかけられたように冷静になった。

怒りやムカつきはあるが、小畠さんは一番年上で王様も言い負かせるくらい口が達者だ。

自分達で何とか出来るなら何とかしたいが、自信が無い。

この人に頼らなきゃどうにもならないからと、俺達は怒りを抑えて話を聴いた。


人のせいにはしない事、各々が自分で決める事、自己責任である事を説教され、約束もさせられ怒りが再燃しそうだったが三人でお互いの上着の裾を引っ張り合い我慢した。

そして、小畠さんは明日城を出るつもりである事、賠償は全て金銭にしてもらう事、を話した後に選択肢を教えてくれた。


「一つ目は、すぐに帰る。二つ目は、この国でずっと勇者をする。三つ目は、他国でずっと勇者をする。四つ目は、この国で何年か勇者をして帰る。五つ目は、他国で何年か勇者をして帰る。六つ目は、勇者をせずにこの世界で生きる。くらいね。ただ、本当に帰れるのかは私も知らないし、勇者するならさっきまで報酬内容を考えてたんだから自分達で交渉しなさい。」

「……本当に帰られるか知らないんですか?」

「知らないわ。私は地球に戻れないから訊いてない」

「……本当に?」

「はぁ。くどい! 消されるってね、親にも兄弟にも友達にも認識してもらえないし、戸籍も職も学歴も財産も一切合切無くなってる状態なの。そんなんで、どうやって地球で生きて行けばいいのよ。だから、私は帰れる事に興味が無いのよ。知りたきゃ自分で調べな!」


上から目線の言い方にカチンときて、ぶっきらぼうな口調で疑心的に訊くと、小畠さんはひどく冷たい目をして俺達を突き放した。

イライラするけど、ここで怒りを表せばまた勝手にやればと完全に切られる。

それはマズいのでしないが、本当に帰られるのか、自分達だけで交渉できるのか、不安で不安で仕方がない。

なんでこんな事になっているのか、あんたが悪いんじゃないか?!

そう思うと、目が潤んでくるし、小畠さんを睨んでしまう。


だが、小畠さんは完全に俺達を視界から外し、お茶とお菓子を食べ始めた。

……本気で小畠さんを怒らせたんだろうか……。

榊さんは、助けてもらっておいて文句言うなと言うが……。

……だって、この人が早く言えば……、……言えばどうなったんだろうか。

俺達だけで何とかなったんだろうか……。

心の中に様々な思いが混ざり合い、どうすればいいのかがどんどん分からなくなる。

だが、小畠さんは助けてくれる様子が無い。


仕方なく翔馬達とボソボソと話し合う。


「どうする」

「何が?」

「勇者すんのか?」

「この国は悪い事したんでしょ?」

「じゃあ、どうすんだよ」

「逃げるにしても俺達だけでどうやって逃げるんだよ」


話し合えば話し合うほど自分達の考えに自信がなくなる。

途中困って、小畠さんに訊いてみるが「あんたはどう思うの?」と淡々とした口調でこちらも見ずに質問で返される。

今までは、優しく答えてくれていたのに小畠さんの考えを俺達に教えてくれなくなった。


「一緒に帰れる方法を探してもらえませんか?」


の質問に、


「私は帰れないのに?」


と答えられた瞬間、この人は俺達と根本的に選択肢が違うんだと気付かされた。

そして、今までは好意で答えてくれていた事にも気づいた。

そうだ。ムカついたら教えてやらなきゃいいんだもんな。

小畠さんもさっき言ってた。「わざわざ教えてあげた」と。

ヤバイ。怒らせた。

味方になってもらえないかもしれないという不安に襲われながら、三人で多数決にしようと話していた時、再度、小畠さんから恐ろしい事実を言われた。


遮音の結界ってどういう事だ? マジで誰か聞いてたのか?

ちょっとでも内容盛らしたら、監禁されるのか?

最後の勇者と最後の異世界人ってなんだ? 俺が望んだ訳でもないのに。

訳が分からない。どうすればいいんだ? 何でこんな事になってんだ?


耐えていたものが色々と溢れ出て、涙が止まらなくなる。

俺が悪いんじゃない。

俺はいつものように学校に行っていただけなんだ。

なんでこんな事が起きたんだ。


「……泣いても誰も助けに来てくれねぇぞ」


榊さんの冷たい言葉に、助けはないんだと、絶望が足元から押し寄せてくる。

なんでだ? どうしてだ?

それしか言葉にならない。

誰か、だれか……。

心の中で助けを求めても、答えてくれる人は居ない……。

助けてくれるのは目の前のこの人達以外に居ないんだ……。

これから俺はどうすればいいんだ。どうすれば助けてもらえるんだ。どうすれば……。


涙は止まったが、心が闇に染まったように真っ暗で、空っぽだ。

ボーっとしていると、風呂で頭をスッキリさせて来いと言われて、言われるがまま三人で同じ部屋へと入って行った。


評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ