第6章 五島君の想いを乗せて その6打ち上げの席での事
「みなさーん。今晩、これから、打ち上げがあります。各科、全員参加です。宜しくお願いいたします。」
仲間マネージャーが楽屋にて両手を口にあててスピーカー代わりに大きな声で叫んだ。
「みんなが顔をあわせるなんて、年に一回のチャンスですから。場所は、各担当の先生方から聞いて下さい。」
仲間マネージャーは、ボソッっと付け加えた。
各科にわかれて席に座った。各自に飲み物が配られて、宴は、始まった。話の中心になると思っていたのは、サックス科だって、武田先生は、わかっていた。各科からねぎらいのことばをかけられるは、赤間川夫妻と武田先生だった。
まずは、五島君が、武田先生とありさの元に話かけてきた。「新人さんのサックスの音について。」五島君が真剣な面持ちでふたりを見た。
「うちの旦那、なんで、女性に感動をあたえられるかってか? まずは、練習の数が違うよ、きみたちとは。後、女性の気持ちを根っから知り尽くしていりからだよ。音に愛があるのよ。女好きだよね。うちの旦那は!」
ありさは、五島君をチラリ見て微笑んだ。
「才能もあるのよ。練習もあるけど。昨年末で辞めた、紀子さんも赤間川を絶賛してたの。うまく、育てろって。生来楽しみなサックスプレーヤーになるって。」
武田先生も五島君とありさの顔を見て微笑んだ。
「ゆいちゃんや島野さんは、もっと早く聞きにきたんです。どうしたら、あんなに素敵な音が出るのかって。だから、同じような事を言って聞かせたわよね。だから、ふたりともなかなか、良い音、出るようになったと思わない?私は、そう思うのよ。みんなも音に愛を込めてみてください。ちょっと音がかわるわよ。」
武田先生は、サックス科のみんなの顔を見渡して微笑んだ。
「楽器って、ただやってるだけじゃ、つまらないもんね。自己まんぞくだよ。ゆいちゃんと島野さんは、さすがだな。今日のふたりの演奏良かったわよ。」
ありさがゆいちゃんと島野さんの目を見てニヤリとして、手元のワインを一気に飲み干した。
「私毎でごめん。私、結婚するの。子供もお腹にいるしね。今日で最後。よかったわ。今日の発表会は、卒業式ね。みんな良い演奏、ありがとう。後は、サックス科のもう一人の先生に申し送りしておきます。男性の先生で、谷 守先生です。ソプラノサックスの名手よ。新人さんなんか、ソプラノサックスに持ちかけるといいかもね。たぶん。あなたなら大丈夫です。」
武田先生は、申し訳なさそうに全員の顔を見渡して、ニコリと笑った。そして、五島君の想いは敵わなかった。
「おめでとう!ございます。急な事でビックリしました。」みんなが労いの言葉を口にした。




