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晩秋:秋の晴れ間と、ドノスティアでの弟勇者の行い・中


 ドノスティアを陰から守っている無頼者らの長との会見はそう長くはなかったが、弟君は丁重に頭を下げて引き払ったのだった。

 後ろで聞いていただけの私にしても、話は意外なもので、少し考えさせられる内容だった。


「なるほど。ようやく合点がいったかな」


 滞在先の領主宅に戻ってから、しみじみ弟君は語る。私もうなずいた。

 無頼者を束ねているあの男によると、この都市には――いや、この都市に限らずこの近辺の都市にはいま、流民が流入している。

 それというのも、ここ最近の天候不順が関係している。

 最近の長く続く雨により、地滑りや落石、川の氾濫などで山沿いの村に被害が出ており、廃村となった村さえ出ているという。廃村とまではいかなくとも、応対に追われた末に命を失った者たちも少なくない。

 無論、対処に当たった者の多くは男衆だ。そうして稼ぎ頭を失うことになった女子供などが多く流民となっているのだという。

 いつだって、もっとも弱い者たちが苦しまねばならない。そのことに、私は少なからず心を痛めた。私もまた、そうして王都へと到った一人だったのだから。


「これはつまり、勇者に滞在してもらうことで話題を提供してもらおう、あわよくば派手なことの一つでもしてもらって、市民の目線をそらそうってことでいいんだよね」

「でしょうな。祭りで一時的に目をそらす。無論、それだけではないでしょうが」


 カストロは弟君の言葉にうなずいた。

 二人の会話に、私も心を落ち着け、考えを巡らせた。流民の流入に対し、今日会ったあの男らは義舎を設けて炊き出しを行い、一時的に対応しているのだそうだ。だが、それも長くは続けられるものではない。となれば、治安面での問題が発生するのは必定である。

 身の振り方がすぐに決まる者もいるだろう。だが、流民の多くは着の身着のままで村を出てドノスティアにたどり着いている。先行きの見通しなどないのが実状だ。

 流民自身が起こす問題も出てくるだろうが、何よりそうした流民の流入を嫌がる都市民との諍(いさか)いも心配される。

 すでに、炊き出しのために都市民は特別な寄付を求められているのだという。この上の負担は求められないし、治安が悪化すれば反感は流民へと向けられる。

 一時的であっても、そうした不満が噴出するのを避けるために、目線をそらすための何かを求めている、ということは十分考えられる。勇者パーティなどはうってつけの話題だろう。


「もちろん、領主殿もこの問題への対応は考えておられるでしょう。それにしても一朝一夕で解決はせんでしょうから、一時しのぎですな」

「労働需要が急に増えるってこともないだろうしね」


 という弟君の言葉に、目をぱちくりさせた私とカストロ。

 弟君は笑いながら「人手に余りがあっても、仕事が急に増えるわけじゃないってことだよ」と答えてくれた。


「理想を言えば、何か仕事を作れたらいいんだけど。ああ、もう、本格的に政策じゃないか、これ。公共事業だよ」

「そこまでは領主殿も望んでおられぬでしょうな。むしろ、下手な動きは邪魔立てしかねないかと」

「だからって、無視していい問題じゃないし」


 と考え込む弟君。

 カストロはそんな彼の思いこみを解くように、繰り返し語りかけた。


「勇者殿。勇者としての仕事は、そこまで手を出さねばならぬものではないですぞ。むしろ、その場しのぎ以上のことをしては、邪魔になるかもしれぬのです」

「まあね。そんなに手の込んだことをしてる時間もないし」


 胸元をいじりながら、弟君は首をかしげた。


「ただ、何か、ある気がするんだけど」

「勇者殿には、何か腹案があるのですか?」

「いや、なんか、引っかかってるんだよね」


 私の質問に、さらに考え込む弟君。

 その姿を眺めながら、少し困っていた私とカストロであったが、その状況を崩した者が居た。

 朝からドノスティア内の僧院へと出向いていたレスカが帰ってきたのだ。


「勇者殿。レスカ殿が帰られましたぞ」


 そんな声かけに顔を上げた弟君は、少し眉をひそめてから「あっ」と声を上げた。

 突然の声に、さすがのレスカも少し目を瞬かせていた。


「弟君、どうされました」

「あ、そうそう。そうだそうだ。思い出した。レスカと話してた話だった」


 手招きして「ちょっと教えてほしいんだけどさ」と言う弟君に、レスカは身を寄せた。


「この国の国教会ってさ、巡礼ってあったりするの?」

「巡礼でありますか。古くは盛んでありましたな。司教区を巡る者は、今はそう多くはありませんが……」

「そっか。じゃあさ、いまもお隣の第五司教区に巡礼者が来てるのかな。それが知りたい」


 唐突な問いかけに、レスカは力無く首を振った。


「すみませぬ。詳しくは知らぬのです」

「あ、いいよ。また明日、その辺もちょっと聞いてきてほしいなって」

「わかり申した。司教殿にお聞きしてまいりまする」


 レスカは生真面目に深くうなずいたのだった。




 翌日、私とカストロは弟君に連れられて、再びあのならず者たちの頭のところまで赴いていた。レスカは単身、第五司教区へと駅馬車で向かっている。

 弟君からの要望を聞いてから、ならず者の頭は胡散臭そうな顔で聞き返した。


「人手が欲しい?」

「うん」

「無理に決まってる」


 一蹴した男に、私はムッと一歩踏み出す。だが、私が何かを言うよりも、弟君が話を続ける方が先だった。


「単純な力仕事なんだ。だから、流民で、力のありそうな若者を何人か紹介してくれればいいんだけど。それならできない?」

「ああ、なんだ、そういう人手なのか?」

「うん。おあつらえ向きでしょ」


 軽く言う弟君に、男は鼻を鳴らした。


「紹介料」

「あ、うん」

「そいつらへの日雇いの労賃も、払え。こっちにな」

「カストロ、いける?」


 振り返って問う弟君に、カストロはうなずく。

 外套の隠しから国府の証書(勇者事業への国費割り当てから必要分を引き出せるもの)を出したが、男は首を振る。カストロは別の隠しからいくらかの貨を取り出して絨毯の上に載せた。


「人足に払われる労賃の歩合は、公正な範囲を守ってくれるのでしょうな」

「馬鹿言え。炊き出しの肩代わりにするに決まってる」

「冗談でしょう。勇者パーティがそんな取引に応じるはずがない」

「なら、自分で手配しろ」

「自分で行っても構わぬので?」


 冷たい目で見る男に、カストロは笑顔を絶やさない。目線をそらさぬまま、貨を加えて取り出した。

 やがて、男は舌打ちをしてから、絨毯の上に載った貨を手に取った。


「金払いに免じて、聞いてやる。おい」


 と後ろに構えていた部下の一人に声をかけて、人の手配をさせたのだった。

 細かい話を詰めるカストロを横に、私は弟君に声をかけた。


「勇者殿。何をしようとしているのですか?」

「あ、言ってなかったっけ」


 とちょっとホッとした様子の弟君は、うなずいて言った。


「ちょっと穴掘りしようかと思って。人手があった方が助かるなって」

「穴掘り……?」

「うん」


 弟君の言う意味がよくわからなかった私だったが、じきに、理解できた。

 弟君は何かの例えで言ったわけではなかった。本当に、穴掘りを始めたのだ。




 程なく集められた三人の若者を引き連れて、弟君は北の門外へと進んだ。そうして、やや離れた位置にある公路脇の平地まで進むと、しゃがみ込んで地面を叩いたりして、なにやら確認していた。

 置いてけぼりの私たちを後目に、弟君は五歩ほどの幅で円を描いてから三人の若者に声をかけたのだ。「この丸の中を掘ってほしい」と。


「本当に、穴を掘るのか……」


 と思わずつぶやいてしまった私を、カストロが口元を隠しながらうなずき笑った。


「いや、まさかですな。本当に思いもよらぬことを始めたものです。面白い方だ」

「面白い……いや、確かにそうだが」


 これはいったいどういう意味があるのか、こんなことがどうして町おこしになるのかと私は頭を悩ませる。

 カストロは涼しい顔で、穴掘りを指揮する弟君を傍観していた。


「カストロ殿は、なにゆえこうして、その、穴を掘るのかは聞いているのか?」

「いえ、ちっとも。今朝方、人員が欲しいから渡りをつけてほしいと相談を受けただけですな」


 それにしては、ただ穴を掘るだけの弟君に疑問を感じていない様子である。

 そうした私の疑問に、カストロは作業を眺めながら答えた。


「元より、無理難題ですからなあ。勇者殿が望むようにされればよろしいのですよ。それが何かに繋がれば、それでよろしい」

「どんなことをするかは関係ないと?」

「関係ないと言いますかな、むしろ何かがあっては不味いと自分は思いますな。街のことは街の者が、領主殿がどうにかすべきこと。そこに我々のような無関係な者が入り込んで口出し手出しを行っても、そうそう良い結果に結びつくものではありませんからな」


 冷淡な物言いである。

 カストロの方を見ると、彼はいつものように愛想の良い顔で変わらず弟君を眺めていた。


「街には街の力関係がある。国もまた同様。勇者殿はどこまでそのことをわかっておいでなのやら」


 思わず無言で見つめる私に、カストロは笑いかけて続けた。


「もちろん、弟君が気がつかぬところは、自分やローザンヌ殿が裏方として働けばよい話ではあります。しかし、それにしてもあまりに事が大きくなると厄介になりますから」

「……カストロ殿は、もしや、裏方で働くのが気に食わぬのか」


 そうだ。元はと言えば、彼こそが勇者となるはずの人なのだ。事情が事情だけに、裏方へと立場を変えているが、本来は表舞台に立つはずの人だったのだ。

 それゆえ、思わず問いかけてしまった私に、カストロは大きく手を振って愛想良く否んだ。


「まさかまさか。そのようなことは決して」


 その返答もまた笑顔を絶やさぬものであったけれど。それがどのような思いから発されたものかは、私には判断が付きかねた。

 どう言うべきか迷い、言葉に詰まった私に代わるように、いつの間にか戻ってきていた弟君がカストロへと声を掛けた。


「カストロ、いろいろありがとね。今回はだいぶ助けられちゃった」

「そんなことはありませんぞ。それが付け人の仕事ですからな」


 なんでもないかのように先ほどと同じ言葉を口にしたカストロは、「ところで」と弟君に問いかけた。


「そろそろ、事の委細を教えてもらいたいのですが、勇者殿」

「あれ? ああ、そういや、なんで穴を掘るのか言ってなかったっけ?」


 と目をパチクリさせた弟君は、ビックリしたように問い返す。

 カストロとともにうなずく私を見て、弟君は「あらら」と頭を掻いた。


「ごめんね。勝手に突っ走っちゃった。思いついたことがあってね」

「思いついたこと、ですか?」


 私が問いかけると、弟君はうなずいた。


「いや、前にね、レスカが不満そうに言ってたんだよね。湯浴みどころか水浴びもまともにできない旅路だってさ」

「なるほど。王院育ちのレスカには、そのような不満がありましたか」


 なんとも贅沢な話である。王都であってさえ、頻繁に浴場を使える人は限られているのだ。

 王都の東、大陸公路から外れた辺地に本拠地を置く南都騎士団所属のカストロにしても、私と同様の思いがあったに違いない。苦笑いを浮かべている。

 対する弟君には、同情のような感情が見て取れた。


「うん。まあわかるよ。僕の国でもね、普通は毎日風呂に入るものだったからさ。この旅もさ、あんまり水浴びだってできないし、参ったよ。最初はホント気持ち悪かったからね」

「……毎日、風呂に入ると」

「うん」

「それは、その、貴家の者や有力な商家での話ですかな」

「いや、老若男女、だいたいみんな入ってるよ」


 思わず真顔になるカストロに、当たり前のようにうなずく弟君。

 弟君はわかっていない様子であるが、どうもカストロは驚愕しているようであった。かく言う私も同様である。ほとんどの人間が、それも毎日風呂に入っているという状況が、うまく想像できないでいた。

 なんでもないかのように話を続ける弟君。


「だいたいの家には風呂があるし、なくても近くに必ず公衆浴場があるからね。よほど貧しくて節制してるか、無精の人でなければだいたい毎日入ってるよ。この国ではあんまり入浴の習慣がないんだったっけ?」

「そう、ですね」


 ついに絶句したカストロの代わりに、私はうなずいた。


「だから、作ろうかなと」


 なんの気負いもなく、弟君は言った。

 ようやく立ち直ったカストロが、やや強ばった笑みを浮かべて問いかけた。


「すると、あそこは湧き水が出ると、勇者殿はそう見抜かれたのですな」

「うん、まあ、と言っても――」


 と言葉を続けかけたとき、ボッと言う鈍い音とともに、弟君の背後が白く染まった。

 吹き上がるような水しぶき。水の粒は雨のようにぽつぽつと降り注ぐ。秋風の冷えた空気の中、雨は不思議とぬるく、その場をむっと温める。

 振り返って、人足を務めていた若者らに手を振っていた弟君は、こちらに向き直って続けた。


「水じゃなくて、温水。温泉なんだけどね」




 弟君の言うところによると、山脈の麓にあるこの付近では、特別な力の籠もった温水が地底を流れているのだそうだ。

 その温水で湯浴みをすると、体の冷えや不調がたちどころに治り、節々の痛みや折れた骨などもたやすく治るという。


「効能は泉質によるけどね。ここは良い質の温泉なんだよ。大陸を巡る神気も含まれてるから」


 とこともなげに言う弟君に、私とカストロは絶句した。なんだそれは。稀なる神泉ではないか。

 湧いた温水はそのままに、人足の三人を帰した弟君はその足でまた無頼者を束ねている男の元を訪ねた。

 弟君の説明に初めこそ怪訝な顔を見せていた男だったが、説明が進むにつれ理解したか、つと、これ以上ないほどに目を見開いた。だが、さすがに人の上に立つ者だろう、すぐに表情を改めて、次いで考え込むような素振りを見せた。


「温泉と、そう言うのか」

「うん。僕の国では観光名所として定番だったんだ。湯治って言い方もあって、足が弱ったり体が痛んだりしてる人が治療のために入ったりもする。すごく体にいいんだ」

「それが、この近くで湧いてると」

「そう。ぬるめくらいのお湯だから、そのまま使えるよ。排水さえちゃんとできれば、本当にそのまま」


 男の目つきが鋭くなった。


「それで?」

「うん?」

「お前は、それでどうしろって言うんだ」

「流民に仕事を与えてほしい。温泉のための施設を作る仕事はできるはずだからね。小間使い程度にしか使えないかも知れないけど……。それに、宿泊施設も作って観光地としての価値を高めれば、そこにだって仕事が生まれるはずだから。温泉は清潔にしなきゃいけないから、毎日管理する仕事はできるよ。観光地としての土産物を作る仕事だってできるかもしれない」


 弟君が言い終えた途端、男はくつくつと笑った。あざ笑いだった。

 後ろで聞いているだけだった私は話についていくのでやっとだったが、この素振りにはさすがに頭に来た。一歩前に出る。だが、それも、手で制した弟君にぐっと遮られた。

 男が口を開く。


「わかんねえやつだな。金なんてない。そんだけのことを動かせるヤツもいねえ。俺たち無頼者に、何を期待してやがる」

「人のとりまとめをお願いしたいんだ。流民に仕事を回すための、そのための温泉だから。どこかの商家に独占されるようなことだけは避けたい」


 なんでもないような口振りで、弟君は言った。


「場所取りとか建設計画とか資金の捻出とか現場の指揮とか、難しい仕事は全部ここの領主がやってくれるからさ」

「なんだと……なんだと?」


 さすがに、男も絶句していた。

 当然ではあるが、私もカストロも、同様に絶句していた。




 そこからは、もはや私の領分を大きく離れすぎていて、ただただ見ているしかなかったと言うほかない。

 男と別れてそのまま領主と面会した弟君は、なんの駆け引きもなしに直言した。温泉を掘ったから、それでどうにかしてくれと。

 初めは意味がわからずにいた領主であったが、次第に説明が進むにつれて、顔色が変わっていった。青ざめていったのだ。

 弟君は言う。奇跡は起こしたから、後は任せたと。

 勝手な真似をして、と怒り狂うのではないかと私は危惧していた。だが、領主は青ざめながら、小さくうなずいたのだった。


「なまじ、仕事ができる人だから、ってことだろうね」


 となんでもないかのように弟君は言う。


「勇者に頼んでおいて断れないのがわかる。初期投資の莫大さがわかる。各所への調整の難しさがわかる。並大抵の苦労でないことがわかる。でも、並外れた利益になることもわかる。いろいろわかりすぎて、それで、怒るよりも先に怖くなっちゃったんだと思うよ」


 指折り数えている弟君には、領主ととんでもない駆け引きをした後とは思えないほどの余裕が見えた。


「これで、後はあのお頭さんと領主さんを集めて話し合いして、上手く進めていく算段がついたら発表して、それで出ていけるかな」

「……まさか、あの二人を、面会させるつもりなので?」


 弟君は「あ、冬至の日は工事を中止するように言っておかないと」などと、気楽に言っている。

 信じがたいような顔で問いかけるカストロにも、弟君はあっさりとうなずいた。


「まあ、公式に、ってのは無理だろうから。こっそりとね」

「それにしても、やくざ者を領主に会わせるなどと……前代未聞ですな」


 ただただ呆れかえった様子で、そうつぶやくカストロに、弟君はあははと笑った。


「ごめんね。僕、異世界出身だから、こっちの常識に疎いんだ」


 やがてレスカが帰参して、このときになってようやく弟君の構想の全貌が見えた。

 弟君の言うところによると、こういうことだ。この地に温泉を作ることで、隣の第五司教区への巡礼者も合わせて、このドノスティアに立ち寄る旅人を増やす。その旅人を出迎えるための仕事を作る、ということだった。

 それらの施設を作る工賃や工程などはドノスティアの領主に丸投げして、目玉となる温泉を掘り当てる役割だけを弟君は果たしたのだと、そういうことである。その意味で言えば、カストロが言うように、街のことは街の人間で、ということではある。

 その辺の説明を終えてからレスカに第五司教の話を聞けば、第五司教区への巡礼者は絶えてはいないが、それほど多くないのだという。やはり巡礼そのものが廃れつつあるのだろう。

 なるほど、とうなずいた弟君は提案した。


「なら、温泉という付加価値をつけて布教するといいんじゃないかな。第五司教区の僧院を詣でてから、ドノスティアで湯治する。信仰を深めながら、体も治せる。悪くないと思うんだけど、やっぱり不信心かな?」

「は、はあ」


 さすがのレスカも、あまりの事態に開いた口がふさがらないまましばらく唖然としていた。

 隣の司教区と、ドノスティアの領主と、ならず者と、流民と、あらゆる者を巻き込んでの大事業が、なかば強制的に始まろうとしていたのだった。


(下に続く)

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