第3話
『…こちら情報本部!たった今…韓国から宣戦布告されましたッ!』
命令やら目撃情報やらで怒鳴り声が絶えなかった無線に一瞬の沈黙が訪れた。
宣戦布告——それは向こうが本気で攻撃を仕掛けてくるということだ。
狙いは既に竹島なんかでは無い、日本本土である。
『敵はもう目の前にいるぞ!これは戦争だ、全力で叩き潰してこい!』
隊列を組んでいた戦闘機は一斉に広がっていき、応戦の体制に移る。
敵は既にわずか15Km先だ。射程の長いミサイルならば余裕で狙える距離である。
『BVRミサイルが来るぞッ!回避運動を取りながら反撃開始だ、AAM-6を打ち込め!』
あくまでも先に手を出さない「やられたやりかえす」という考えのため、敵の攻撃が確認できてから反撃ができるようになる。
そのような制約があるので、こちらから遠距離のミサイル攻撃が基本的には不可能なのだ。
それが影響しているのかどうかは分からないが、ミサイルを打ちながら次々と味方が撃ち落されていく。
『クソッ、奴らめ!』
命中率100%とも言われているBVRミサイルの前ではどんな戦闘機でも無力化してしまうため、回避しようとしても既に10機程は撃墜されている。
LASCFIISで着弾予測は可能なので射出座席を使うことで乗員ごと爆破されることはないが、確実に戦力は削られるのはかなり痛い。
『こちらアスター、敵機の情報入りましたッ!』
前線の後方上空から支援をしている早期警戒管制機からの無線が入った。
『竹島西約10KmにはF-15Eが22機、F-16Cが18機、F-5Eが6機の合計46機、 南西約17KmはF-15Eが24機、F-16Cが14機、F-4が20機の合計58機だ、健闘を祈る』
『タイタスとアルフォースは南西の方を、支援がくるまで近接戦闘を避けて持ちこたえてくれ。それ以外は西側だッ!各機とも簡単にはやられるなよ!』
2方向に分かれ始める。
「こんな奴らやられてたまるかよッ」
そう呟くとエンジン出力を上げながら高度を上げる。
ほかの機も同様に上昇し始め、完全に戦闘状態になる。
「いたいたァ」
豆粒のようにしか見えないような小ささだが、敵を目視できる程の近さまで来ていた。
まるで鳥の群れのように見える戦闘機が超高速で近づいてくる。
前方から来る戦闘機にミサイルを打ち込みながら左に旋回すると、飛び回っている戦闘機に一つ狙いを定めて追いかけ始める。
「まずは貴様からだァ…」
速度を更に上げながら追いかけていく。
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今回の兵器紹介
陸海空軍中央情報統括システム(LASCFIIS)
2004年から日本軍で採用されたシステム。
早期警戒管制機(AWACS)や早期警戒機(AEW)からの情報や作戦本部、戦闘機、軍艦等の通信を一つのシステムに纏め、通信の隠匿性を上げつつ情報を円滑に共有できるようにした。
また、各機で入手した情報を全て共有するため複数の場所からの視野を得ることができ、精度の高い着弾予測や近接戦闘の支援等が可能になった。
名前の通り日本軍全ての兵器に搭載されているため、海軍と空軍の統合作戦などが容易にできる。