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もし日本が平和主義でなかったら(旧)  作者: R-Ryoma
開戦(単話)
22/25

第17話

約20日ぶりの投稿…(大変遅れてすんません)

ところで今回も主人公が一言も喋らないという悲劇

『こちら第34艦隊しおかぜッ!前方約30キロ地点に複数の敵艦隊を発見!』

『こちら司令ッ!これよりウルルン島南海域の航空機、艦船は回線を52番とし、担当旗艦をなみかぜとして敵へと対応しろッ!!」

「なみかぜ艦長、了解したッ!!」


いつの間にか艦長席へと移っていた三島が返答する。その横顔はさっきとは違い真剣な表情だ。


「こちら第33艦隊旗艦なみかぜ艦長三島だ、これより敵艦隊との海戦に入るッ!各艦各員は指示に従って動け!!」

『『了解ッ!』』


三島の呼びかけに各艦、船員が声を揃えて返事をした。見事に揃っている。


「まずは後方待機中の第7.8空母艦隊の航空機を今すぐに全機発艦、兵装は対空6対艦4の割合だ。F-3と対空装備のF-2を優先発艦させろ。すぐに前線に展開するんだ!」

『了解ッ』

「また、これより第7空母隊のいずもが旗艦となって空母4隻で空母艦隊を編成、航空機運用は全てそっちに任せる!」

『こちらいずも艦長、了解したッ!』

「次に、駆逐艦隊だ。前線待機中の33.34艦隊を統合して第1艦隊 19.20.23艦隊を統合して第2艦隊とする。第1艦隊旗艦はなみかぜ、第2艦隊旗艦ははつゆきだ!」

『はつゆき艦長、了解した!』

「更に、第1艦隊は船首を北へ向けながら速度20ノットで航行、単陣形に展開し丁字作戦を狙う。第2艦隊は全艦前線へ移動、海域後方は空母艦隊のみとし、所属の駆逐艦を空母護衛とする。」


三島は旗艦に任命された直後だというのにも関わらず迷いもなく命令を出す。即座に戦術を考え出したのだろうか?


「空母艦隊ッ!航空機を揃えるのにはどれくらい掛かる!?」

『こちらいずも!いま最初の機が発艦したところだッ!ある程度の数揃えるのにはあと5分は掛かる!』

「できるだけ急げッ」

「艦長ッ!!敵艦10を超えましたッ!このままでは火力劣勢になりますッ!」

「クソッなんでこんなに敵が沸いてくんだッ」


メインモニターに映る敵艦の数は徐々に増えている。このまま増えればいくら火力の高い日本艦でも数で押されるだろう。


「前線8艦は舵を北に取りながら射撃用意だッ!目標は敵艦の最前線、射程に入り次第オートでどいつでもいいから当て続けろッ!」

「主砲発動ッ!射撃よーい!!」


三上が命令を出すと、艦のあちこちで復唱する声が聞こえる。


「射程入りましたッ」

「てぇぇーーーッ」


三上の掛け声とほぼ同時にボゴンッ……ボゴンッという音をたてながら主砲が撃たれ始めた。


「弾着予想時間はいつだッ!?」

「約17秒後ですッ!」



『こちらふじ所属第2飛行隊以下8機、海域上空に到着しましたッ!』

「了解した!2機のみ前線観測に回して他はそのまま上空警戒、他機と合流しながら制空権を確保せよ」

『了解ッ!』

「15秒後に弾着しますッ!!」

『こちらかが所属3空隊!前方に敵航空機発見!数は20……いや30以上だッ!!』

「上空の全機は接触は回避して増援が来るまで待機だッ!艦隊に接近されたとしても空中戦ドックファイトに持ち込むな!!」


敵は30以上、モニターに表示された味方機の総数は出せる数の最大で52だ。全て発艦させたとしても制空権は保てるかどうかギリギリの戦力である。下手したら被害が数十機まで広がって無駄死が増えてしまうだろう。


「5…4……だんちゃーく…今ッ!」

「弾着確認できるかッ!?」

『こちら前線観測隊、弾着観測不可能ですッ!敵の対空砲火が激しすぎるッ!!』

「了解!無理せずそのまま観測を試み続けろ!発艦済のF-3は2機を前線観測隊の援護に入らせるんだ!!」

「91.92航空隊到着予想時間まであと5分ッ!」

「各機、接触を控えながら延滞させろ!!援軍が来れば奴らなんてどうとでなる!」


モニターには徐々に航空機の大群が近づいて来ているのが表示されている。確かにあれだけいればこちらの方が圧倒的に有利にはなる……というよりは、火力も航空機も足りない今の現状からすると援軍を頼りにするしかない。


『わかば以下駆逐艦8艦、まもなく前線に到着しますッ!!』

「了解、8艦全て速度はそのままに単陣形に展開、針路を南東へ向けろ!第1艦隊と共に敵艦隊を包囲する!!」

『了解した、第2艦隊展開しますッ!』



「援軍到着まであと4分ちょい…これでどうにかなるな…」


慌ただしく続いていた通信がふと途切れると、そう三島が呟いた。

二方面に艦隊を展開して空母からはある程度の戦闘機が発艦した、敵の攻撃があったとしてもどうにか対処できる筈だ。

これで一安心できる、きっとここにいる他の隊員もそう思っていたと思う。



"ヴォン"


「ん?」


突然、メインモニターの中央にに小さな吹き出しが出た。


「何だ…これ……?」

「自動管制システム停止、目標が消失しましたッ!!」

「味方艦との通信が遮断!連絡取れませんッ!!」

「どうした!?何があった!?」


とたん、次々と異常が報告されていく。


「艦長ッ!正面のモニターにッ!!」

「あれは……LASCFIISの…エラー……だと…?」


確かにその吹き出しの中には"エラーが検出されました"と出ている。


「LASCFIISに接続して制御している全ての機器が使用できませんッ!」

「修復できるか?」

「ダメです、パスワードが掛かって修復不可能ですッ!」

「どういうことだ?LASCFIISにそんなもの無いはずだろ!?」


いくら軍のシステムとは言えLASCFIISは現在の日本軍ほぼ全ての大型兵器には標準搭載されているシステムである。最初からパスワードなんてものは存在するわけがない。こんなことは教育隊の隊員でも知っている。


「チッ、こんな時にッ!!予備システムに切り替えてこのまま戦闘を継続だ!」

「艦長…予備システムも…ダメです」


技術系を担当する隊員だろうか、さっきから必死にモニターとにらめっこしていた人が顔を真っ青にしてそう言った。


「そんなことは無いだろ?もう一回確かめてみろッ!!」

「いえ、恐らく何回確かめても無駄かと……」

「どうしてだ?」


横顔からでも分かるような険しい形相でモニターを見つめながらその隊員は言った。


「この艦の通信システム全てにロックが掛かり、使用不可能≪・・・・・≫になっているからです」


————————————————————————————————————————————————————

今回の兵器紹介


・125/64型多目的速射単装砲(96式艦上単装砲)


性能(イ型)

口径 125口径/64口径長

発射速度 39~45発/分

初速 1121m/s

最大射程 41,600m(単艦時)


1996年より導入された豊和工業製の艦艇向け国産速射砲。戦後長い間外国産の主砲が主流の中、多くの兵器の国産化を願う日本軍上層部の厚い要望と熱意によって完成したもの。


米軍のMK.45 5インチ砲、イタリア オート・メラーラ社の127mm砲を参考に設計し、海軍からの無茶な要望に応えた結果完成した日本の最先端技術の結晶のような兵器で、対空・艦・地全てに対応した上に他社砲を上回る程の速射、弾速を誇る。

しかし、その高性能なスペックの代償に価格はかなりの額になり、日本海軍も流石に全ての艦に搭載する事を諦めた。

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