第6話
遅れたあああああ
『……繰り返しお伝えいたします。先ほど、正午ごろに韓国政府が日本に対して宣戦布告をしました。これにより、九州地方全域、中国地方の西部に空襲注意報と避難勧告、避難指示が出ています。避難指示が出ているのは福岡市全域、長崎市全域、北九州市全域……』
「どういうことですか……これ…」
衆議院議員の新人秘書、高蔵雅人はテレビを見て唖然としていた。先週総理が韓国に喧嘩を売って帰ってきて、今日竹島でドンパチするのも知っている。だが宣戦布告なんて話は今初めて聞いたのだ。
「分かっていただろ、こうなることは」
この部屋の主、改新党所属の衆議院議員 武藤博人が答える。
「元々日韓の関係は最悪な状態と言っていいほど悪かった、そこに竹島奪還という爆弾を投げ込めば爆発するのは当然だ」
テレビの前にあるソファーに腰をおろすと、煙草をふかし始める。そうしているといきなりドアが開けられて人が飛び込んできた。
「先生ッテレビ付けて下さい!大変な…」
「知っとるわ!!」
突然部屋に入って来たのは同じ秘書の佐藤暁美だ。あの話を聞いて慌てて知らせにきたのだろうが、ドジを踏んだのを知ってがっかりしている。
「あと先生、総理が例のアレをすぐに使うそうです。なのでこれから先は…」
「やはりそうか……」
「国防法第4条ですよね……確か…有事の際は総理大臣が国会の機能を弄れるようになるってやつ…」
「あのバカ首相が……いくらなんでもあれだけはやっちゃいかんだろう」
フゥーと息を吐くと灰皿に煙草を押し付けて火を消す。
「こうなる前に奴等を止めたかったのだがな……はやり少数派の野党だけではダメか。」
テレビではアナウンサーが休むことなく避難指示やら国防軍からの情報やらを伝えている。どうやら既に竹島では戦闘機が大量にやってきて戦闘になっているらしい。
「先生、念のため避難をしましょう。ここからですと国会議事堂前駅の地下避難所が近いはずです。」
おっちょこちょい秘書がそう急かすが、中々武藤は動こうとしない。
「いや、この国の軍が首都空襲なんてさせるわけがないだろう。ここは十分安全だ。」
「でもッ」
「今するべきことは違うんじゃないのか?」
ちょうどテレビでは官房長官の発表の生中継になったようだ。良く見る顔のおっさんが作業服のような物を着て出てくる。
「今こそ腐った憲民党を潰す絶好の機会じゃないか?」
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今回の兵器(?)紹介
憲民党・改新党
国防法成立当初からの与党、野党第一党で、今日に至るまで政治の場で熾烈な争いをしてきた日本の二大政党。
両党共に元は日本の安全を第一にと考える憲友党であったが、米軍撤退を機に意見が分かれた。その際に憲民党が圧倒的な支持者と有力な議員が集まった為、今現在の日本が出来上がったと言っても過言ではない。




