LHR(ロング・ホーム・ルーム)
「明菜ちゅわーん!」
「秋蘭ちゅわーん!」
翌日の授業開始二十分前、いつものように大きな声が廊下中に響きました。
「こらー秋蘭待たんかーい」
続いて笹城美稀の声が聞こえました。
「いつもご苦労様」
続いて山内禾の声が聞こえた気がしました。
「みちるちゃーん!!」
五組のドアを勢いよく開けて飛び込んで来たのは、翠園若の貴公子こと在寺院隆也です。
「ごめんねーみちるちゃん。僕のバク宙のせいで女の子がほとんど担架で運ばれちゃって、投票者の大半が男子になったから、女の子の票を獲得するもくろみが丸潰れになっちゃったね~!」
どが。貴公子は即座に制裁されました。
「ほんま、とんだ骨折り損やわ」
机に頬杖を突き、何かにダメージを食らわせた右手首を振りながらそう言ったのは、春日浦みちるです。
「草臥れ儲けやな」
同じく、先日惜しくも優勝を逃した神ノ崎かおるが言いました。そして本のページをめくります。
結局、ダンスコンテストを制したのは保健室のお色気先生でした。笑いも涙も友情も、男子を目の前にして色気には勝てませんでした。嗚呼、無念。
「もう、そんなことないですって!」
二人を必死になだめる黒崎桃ちゃん。
「お二人はもっと大切なことを再確認できたじゃないですか。それは何よりの報酬ですよ?」
「……」「……」
二人は何の反応もせずしらっとしています。
「まあな」「まあな」
そう呟いた二人は、遠い記憶の中の二人と同じでした。彼女たちはこれからも、他の誰より歴史ある想い出を未来へ繋いでいくのでしょう。
いつまでも、いつの日も、幼なじんでね、マイ・メモリー☆
遠藤*end*