スノー・ブラインド
人々は、黄金時代を手に入れた。
石油無機成因論の確認と核融合炉の実用化により、エネルギー問題が無くなったことが原因と言われている。
エネルギー枯渇といった人類発展のボトルネックが無くなった瞬間から、世界の国はこぞって産業の発展化を発展化させた。
まず、食物の問題を解決する為、人々は頭を捻った。
必須アミノ酸を主原料とした食物パウダーを、ゼラチン質で包み込み、軽く味付けした食料ボールが開発され、人々は餓えから無縁の存在となった。
続いて、住居の問題を考えた。
宇宙移住も案としては上がったが、費用の面で断念された。
その代り、海洋都市がいくつも開発され、人々は海の上に生活の場を移していった。
人間の寿命限界にも人々は手を出した。
脳の機械化、クローンボディへの意識コピー、人意識のクラウド化など、限界を超える技術は確立していったが、あまり普及はしなかった。
世界は飢えから解放され、住む場所も余るようになり、寿命すらも超越した、まさに黄金時代を謳歌するのであった。
今、地球はスノー・ブラインドと言われる惑星になった。
なんてことはない、ただの強烈な氷河期が到来しただけである。
海は氷、地表はすべて雪で覆い尽くされる。
ただ一面白い世界。
動くものは何もない。
そして、何世紀もかけて作り上げた黄金時代も、今では雪の下でただ眠り続けるだけであった。