呪いのDVD…ですよ?
久々の執筆だったからgdgdになっている気がする。
『呪いのDVD』を手に入れた。
とある友人から頂いたこの呪いのDVD。
話によれば、この呪いのDVDを見たものは、テレビから這い出てくる女の人に殺されてしまうらしい。
呼ばれて飛び出てジャジャジャジャーンである。
ちなみにその友人は鑑賞しなかったらしい。
チキンな奴はこれだから困るのだ。ふぅ。
「ふむ。まあ、鑑賞しようか」
DVDをDVDレコーダーにセットする。
そして、スイッチ、オン!
ザザー…と音と共に、画面が砂嵐に変わった。
なんだこの緊迫感。オラわくわくしてきたぞ!
「!」
すると、すぐに変化は始まった。
画面がまるで水面のように波打ち始めた。
「!!」
波打つ画面から右手が出てくる。
右手から右腕、左手から左腕、そして頭から胴体。
それは、腰ほどまで届きそうな黒い長髪の女性だった。
彼女は前髪も長く彼女の眼は完全に見えない。
そんな彼女はテレビから這いでてきた。
「……よし」
決心できた。
俺は彼女の前に座った。正座した。
そして床に手をつけ、頭も地面に擦り付きそうな距離まで下げる。
それすなわち、土下座である。
ザ☆土下座。
「貞子さん! 俺をどうか弟子にしてください!」
「…………は?」
長い前髪で見えないが、その女性の顔はおそらく「え、何言っちゃってんの? こいつ」みたいな理解不能な顔だと予想できた。
あ、ちなみに『貞子さん』とは、彼女の名前らしい。噂だからよくわからないけど。
「いや、わからない。わからないわからない。なんで初対面の貴方がいきなり私に弟子入りするのかわかりません」
「どうか、俺を弟子にして、二次元に入る方法とかコツとかご伝授してください!」
「変態だ!」
頭を上げた俺は、ドン引きしている貞子さんに擦り寄った。
「どうか!」
「……現実逃避はやめて、男だったら三次元でどうにかしなさい」
「は? 三次元なんてただの飾りでしょ? 二次元の飾りだよ」
「すごい考えをお持ちで………。と、とにかく、私はそういうのは…」
貞子さんはテレビの画面に手を伸ばす。
はっ! まさか帰る気なのか!? そんなことさせん!
俺は、壁にもたれかけさせていた金属バットを握った。
「ホワチャアアアアッ!」
俺はその金属バットで、テレビの画面を叩き割った。
「ぎゃあああああああああああっ!」
ものすごい悲鳴を上げる貞子さん。
まあ、唯一の帰宅手段を失ってしまったのだから仕方あるまい。
「ふぅ、ギリギリセーフ」
「アウトだよ! なに叩き割っちゃってんの!?」
「大丈夫。そのテレビはアナログテレビだし。もうそろそろでアナログ放送終了だから、新しいのに買い換えないとって思ってたから」
「そんな心配してねえ! てゆーか、アナログ放送終了っていつの話!? 時間軸がいつかわからない!」
「まあまあ、落ち着いて、麦茶でも出すよ」
「いやいやいや! そんな落ち着けない!」
「んなことどうでもいいからさ。いい加減に二次元に入る方法とか教えてよ」
「だから、そんなのできないって」
「なぜ」
「だって、私、幽霊。貴方、人間。おーけー?」
「つまり、俺が人間だから、そんな芸当できないとそう言うでござるか」
「左様でござる。」
泣きそうになった。
というか泣いた。
「くそっ、くそっくそっ! なんだよなんだよ、期待して損した!」
「そんな勝手に期待されても………」
「くそう。……まあ、ここで会ったのも何かの縁だ。お話でもしよっか。貞っち」
「いきなりフレンドリーな呼び名を付けられた!? てゆーか、ここで会ったのは必然だけどね!」
「夜もまだまだ長いから、さ」
「それを言われると、なんだか怖い………」
「ああ、心配しなくても、現在三次元の貞っちには欲情なんてしないから。CGになって出直してこい」
「ねえ、殴っていい?」
まあ、そんな感じで、貞っちと雑談をすることになった。
テーブルを挟んで座っている。
もちろん麦茶もテーブルの上である。
「えーっと、まず、俺の自己紹介からだな。まずh」
「二次元大好きなオタク。おーけー?」
「おーけー」
「私には、名前ってないんだけど。まあ、貞子ってよく呼ばれてるかな。………で、こんな扱いになったのは、生まれて初めてなんだけど」
「ほほう。初体験と」
「貴方が言ったらなんだか、いやらしく聞こえる」
「あれ? 俺の扱いが不憫すぎねえ?」
「普段の行いが悪い」
「あ、ところで、貞っちって特技とかある?」
「なんつーいきなりの話題転換なの!?」
「いやいや、やっぱりこういう話のひとつやふたつ、必要じゃない? 初対面だしさ。……で、あるの?」
「あるよ。声真似」
「やってみてくれ」
「えー、ちょっとだけだよー」
そういう貞っちは、案外嫌じゃないらしい。
こほん、と態とらしく貞っちが咳をして、首元に手を添える。
「『ぴっぴかっちゅー』」
「うわ、すげー似てる!」
あの黄色いねずみそっくりだった。
うわ、すげー。小説だから、全然うまく伝わってないだろうけどすげえ!
え、これって、小説なの? もったいねえ!
「…ど、どうだった?」
「うん! パーフェクト!」
そういうと、貞っちは何故か頬を赤く染め、俯いた。
恥ずかしかったのか? 最高だったぜ?
「って、そんな場合じゃなかった! 私、どうやって戻ればいいの!?」
「とりあえず、テレビを買うまでは無理」
「テレビを買うまで、この変態とひとつ屋根の下で暮らさないといけないの!?」
「安心しろよ。いくらお前が萌えキャラになったところで、三次元のお前にトキメクはずがないだろう?」
「安心できん!」
はあ…、と深いため息をついた貞子さんは、カーペットに横になった。
「どうすれば、いいのかなー……」
もはや半分諦め気味の貞子さんは横になったまま、部屋を見渡した。
「…ん?」
そして、部屋の片隅のデスクに設置された一つの物を発見した。
「ねえ」
「ん?」
「あのパソコン、DVD再生とかできるよね?」
「んー? まあ、できたと思うよ。」
そう。パソコンだった。
俺が、ネトゲやエロゲをするときに使用するパソコンだった。
貞子さんはDVDプレーヤーからDVDを取り出して、パソコンに入れ、読み込ませる。
その手つきは、まるで手馴れているようだった。
はっ! まさかあのドラ○もんはこいつ仕業か!?
呪いのDVDにド○えもんをダビングしたのはこいつなのか!
そんな思考をしている間に、俺のマイパソコンの画面が砂嵐に変わる。
「やった! 成功した!」
貞子さんは、両腕を上げて喜んでいた。
うん、そこまで俺と一緒にいるのが嫌だったんだな。
涙が出そうだぜ。
「良かった。戻れなかったら、自殺するところだった」
「お前もう死んでるんじゃないかなー」
「とりあえず、」
貞子さんは、俺の言葉をスルーし、俺の方に振りかえる。
「久しぶりに人間と話ができて良かった。ありがとう」
「そうか。来たくなったら、いつでも来ていいぞ☆」
「来ねえよっ!」
貞子さんは、帰った。
パソコンの画面の中に入り込んだら、画面の砂嵐がプツンッと消えた。
短い間だったけれど、楽しかったぜ、貞っち。
取り出した呪いのDVDを見つめながらそう思った。
◆
数日後。
呪いのDVDは近くの田んぼの烏よけに使われていた。
ちゃんちゃん。
第3弾は狸の予定です。