97 愛してる
マモリの告白に驚かなかったといえば嘘になる。
だが、マモリが信じて打ち明けてくれたこと、そして、それによりマモリがずっと引き続けていた一線が消えるのを感じ、驚愕よりも喜びが勝った。
「愛してるマモリ」
小柄なマモリを抱きしめ、唇を味わう。
マモリの腕に抱きしめ返され、思わず強く抱き込んでしまう。
正直、問題は山積みだ。
この世界のどこにも魔石を作り出せる人間など居ない、迂闊にそんな事が世間に広まってしまえば、どれほど恐ろしいことになるか考えたくもない。
だが虹色魔石の存在自体は既に世に出てしまっていて今更無かったことになどできない。
出来れば今後は虹色魔石を作らずに平和に暮らして欲しいが、既に王宮と取引をしている今、下手に流通を止めればマモリが危険に晒されかねない。
だが、この一時は考えるのをやめよう。
この腕の中に居る、小さな妻……あぁ、やっと名実ともに妻になるマモリを愛する事に全力を尽くそう。
軽いマモリを抱き上げて、寝室へと直行する。
マモリは少し慌てたようだが、私が安心させるように口元を緩めれば、頬を染めて首にしがみついてきた。
いつも一緒に添い寝するだけだったベッドにマモリを降ろし、ポケットに入れっぱなしだった瓶をベッド脇のテーブルに置いた。
「はちみつ?」
「……いや…あぁ、甘いし、似たようなものだ。 イーシニ…兄貴、が結婚祝いとしてくれた」
言い直した私にマモリが小さく笑う。
「結婚祝いに"はちみつ"なんだ? それにお兄ちゃんの事、名前で呼ぶのやめたの?」
それは聞かないで欲しい。
「他の男の話は止めだ。 マモリ、今は私だけを見てくれ」
今だけでなく、ずっと私だけを見てほしい。
覆いかぶさり深く口付ける。
若干長く舌を絡めていたら、突然ハッとしたようにマモリが私の肩を叩くので、名残り惜しく唇を離した。
「どうした? 苦しかったか?」
「違くて! あ、あんまり長く、してたら、その……ラァトの舌が、虹色になったら……っ!」
言われて気づいた。
なるほど、石を舐めて魔石ができるならば、その可能性もあるのか。
………もしかすると、上の口だけでなく…下の(自主規制)
一瞬愕然としてしまったが、魔石を作るためには暫く舐めつづけなければならないのならば、手早く(自主規制)
いや、それでは本質的な解決にはならない。
それに今後、子供ができた場合はどうなる? もし最悪の結果だとしたら……。
この問題は早急に解明する必要があるな。
「マモリ、どんな条件下で魔石となるのか、二人で確かめていこう」
愛しさを込めてそう告げると、マモリは安堵したように強ばっていた頬を少し緩め頷いてくれた。