91 あに2
お兄ちゃんにお茶を用意している間に、ラァトが帰宅しました。
どれだけ急いだのか、珍しく息が切れてます。
「イーシニアル…っ! あれほど、一度私の、ところへ、来てからと、言っておいたのに…っ」
息を切らせながら詰め寄るラァトに、イーシニアルさんはヘラヘラっと笑っている。
「嫌だなぁ、そんな前フリされたら直接来るに決まってるじゃないか」
さすがは兄、ラァトの怒気など綺麗に流してます。
「それよりも、驚いたよ! いつの間に結婚したんだ? 連絡の一つも寄越さないで! 知っていたらお祝いの一つも持ってきたのに。 ああ、マモリ、お祝いは後でちゃんと持ってくるからね」
丁度イーシニアルさんの前にお茶を出していた私の頭が、クリクリッと左手で撫でられた。
外見に似あわず大きくゴツイ手のひらは、少しラァトと似ている。
そんなイーシニアルさんの手から離すように、ラァトに腕を引かれてラァトの座っている隣に座らされた。
イーシニアルさんはそんなラァトの行動に、温かい微笑を浮かべています。
うん、兄弟関係は悪く無いのかな。
「それで? 散々避けてた俺に頼ってくるなんて、よっぽどなんだろ? 何をして欲しいのか、ほら、お兄ちゃんに言ってご覧?」
えぇと…、兄弟仲…悪いの?
ラァトを見上げると、気まずそうな顔。
「……虫のいい事はわかっている。 すまないが、マモリを…魔道具士にしてやってくれないか。 弟子にしてやってくれ」
え?
ポカンとする私と、嬉しそうに笑うイーシニアルさん。
「やっと俺が魔道具を作ることを認めたか! 15年だぞ! 長かったなぁ。 あぁ、マモリを弟子にすればいいんだな? 素質があるならいいぞ!」
どうやら私はラァトの兄で魔道具士であるイーシニアルさんの弟子になるようです。
びっくり。