85 脱走する?
……また違う部屋だ。
起き上がり、見回した室内は昨日寝かせられていた部屋より若干生活感のある部屋だ、小さいタンスや机まで置いてある。
ということは…どういうこと?
寝過ぎるほど寝た気がする、窓の外は薄暗くて窓を開ければ入ってくる空気は朝独特の透き通るような冷たいものだった。
ということは、早朝。
窓から見える景色にはちゃんと城壁があるから、街の外に連れ出されたわけではないね。
ただ……なんか、この家、大きいよね…庭まであるよ?
ここ基本城壁の街だから、一軒一軒の敷地って狭くて庭なんて持てるのはかなりのお金持ちなのに。
……そうか、かなり金持ちなのか。
それで、金持ちが私みたいなのを攫って何か良い事あるのか?
魔道具士の認定試験まで受けさせて?
虹色魔石を作り出せる事がバレてるわけ…ないよね、いや、あんな作り方バレるはずもないとは思うんだけど。
ただ、ポーチを未だに返して貰ってないことが気がかりなんだよね。
……ポーチは諦めて、今のうちにここから脱走しておくか。
とりあえずセオリーとしては窓から逃亡だが、どうやらこの部屋は二階で、窓の外に飛び移れそうな木もないし、そもそも有ったとしても私の身体能力では枝につかまれず落下する。
……普通にドアから出ておこう、そうしよう。
案外堂々としていればバレないかもしれない。
なるべく音を立てないようにドアを開ける。
「おはよぅ、奥さぁん。 早起きだねぇ」
またこいつか。