82 作るともさ
「魔道具を作成してください」
言うのは簡単だけどさぁ……。
いえ、ここまで来たんだから作りますよ、作りますけれどもね。
なんで扇風機にしちゃったかなぁ、それも無羽式の。
只今絶賛工作中であります。
土台にする箱の内側に式を書き込みます。
うん、長さのある記述棒は使いやすいね。
魔石は土台の底面に嵌めこむようにして、あとは土台の上に輪っかを載せる。
この輪っかの内側から風が出て周囲の空気も巻き込んで素敵扇風機になると、そういうことです、それもファンが無いので音が出ないし、お子さんがいる家庭でも安心安全設計!
ついでに、火の魔石を入れる場所も作っておいて、ここに火の魔石を入れるとあら不思議、素敵ファンヒーターになるって寸法ですよ奥さん。
温風の温度設定は50度で固定、ダイアル作ったり式を追加するの面倒くさいとかそういう理由で。
七三に監視されながらも何とか完成。
ああ、おなかがすいた。
朝食抜きの昼食抜きか、せめてポーチがあればあの中にハムとかソーセージを入れてあったの……あぁぁぁぁ! すっかり忘れてたけど、餃子! 私の餃子が! 多分干からびてる……なんてことだ…。
思い出すと、お腹の虫がグーグー鳴り出した。
水餃子が食べたい…当分焼き餃子は見たくもない、ヤツのせいでこんな目に!(八つ当たり)
「完成ですか? それで、コレは一体何でしょう?」
まじまじと扇風機を見る七三は、なんだかワクワクしているようだ。
私が答えようとしたら、ソレを片手を上げて止められた。
「この丸い部分が重要なんでしょうね、土台があるわけですから、この輪の部分を壁などに掛けるわけではなさそうですね。 輪が若干内側を向いているのも意味があるのですか? そうですか。 使う魔石は? 風ですか! ほほう! ではこれは風を送るための?」
満足すると、丁寧な手つきで扇風機を倒し、底面にある魔石用のスロットの一つにポケットの一つから取り出した水色の魔石を嵌め込んだ。
「おや? もう一ついれるのですか?」
「もう一つは、後で火の魔石を入れてください。 とりあえずは、扇風機として実験したいので」
七三はフンフンと頷き扇風機を起こすと、レバー式のスイッチを入れた。
「ふおぉぉぉぉ!!! 風が!!」
いや、だから扇風機って言ったじゃ……あれ、なんか嫌にいいイキオイで七三の髪がなびいて……あわわわ! 七三が七三じゃなくなった!!
だが髪が乱れるのも構わず七三は扇風機の前に陣取り、かなりの風量を発生させている扇風機の輪っかの中央の空間に手を突っ込んだりしてキャッキャしていた。
ひとしきり扇風機の”確認作業”が終わると、おもむろにスイッチを切り、今度は火の魔石もセットしてスイッチオン。
「おぉぉぉぉ!!! 暖かい!! 何という心地良い暖かさ!!」
またも風に髪をなびかせて、七三が感動している。
とりあえず茶々は入れずに、七三がクールダウンするまで温かい目で見守っておいた。