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8 誘拐
率直に言おう、誘拐された。
手ごろな小石を小袋に程々に収集して帰ろうとしたとき、見知らぬおっさんが近づいて来た。
「お嬢ちゃん、こんなところで何をしているのかな? お父さんやお母さんはどうしたの?」
おっさんこそどうした、この河原は街道から外れていて人なんか来ない場所だぞ。
十分に警戒していたが、あっさりと捕まってしまった。
仕方が無いだろう、私は魔術師でもないし剣士でもないんだから。
ついでに言えば足も遅い。
「やぁっ!! 何よ! 私を誘拐して身代金でも取ろうと思ってるの!?」
腕を拘束され、肩に担ぎ上げられて運ばれる。
「いやいや、君は十分価値があるよ」
そう言いながらお尻を撫でられぞっとした。
これはあれか、身代金目的の誘拐じゃなくて、人身売買目的の営利誘拐か……。
どっちにしても絶体絶命だ。