78 待ち時間は嫌なもの
「閉めんなよ。 大事な大事なお話があるからねぇ」
ガゴンッ!
閉まりかけたドアの隙間に靴を突っ込まれて、そのまま足で蹴り開けられました。
睨みを効かされながら、昨日通された居間へ。
朝食が出るなんて期待はしてませんよ、むしろ今日はお茶も遠慮しなくては。
流石に二回も盛られるわけには行きません。
……まぁ心配する以前に、お茶なんて出てないわけなんですけれども。
居間のソファに居心地悪くちんまりと座る。
ドアの前にはあの灰色の髪の短腹男が腕を組んで立っている。
またあの赤毛の人が来るのだろう。
あぁ、早く帰りたい。
ラァトが心配なりなんなりしてると思うのです。
もしかしたら捜索隊が出ているかも知れないのです。
私の身柄は結構重要ですよ、虹色魔石を……あぅぅぅ(思考放棄)。
嫌だなぁ、早く来ないかな、いや、来ないなら来ないでもいいんだけど。
面倒くさいことや嫌なことはさっさと終わらせたいな。
いや、待てよ。
虹色の魔石の事がバレたとしてだね。
この人達は十中八九悪い人達だとしてだね。
虹色魔石の入手先を聞かれるだろうね。
魔術師である旦那様からお借りしましたー、とか……無い、無いわぁその言い訳。
黙秘だろうなぁ。
でも、そうしたら自白剤(あるのか?)なり拷問(あるよね、間違いなく)なりに身を晒す事になると思うわけです。
なにせ、彼らは悪党ですから(もう決定)。
さぁ、どうやれば無事に家に帰れるのか。
これはもう、外的要因に頼むしかあるまい……今まで一切信じてこなかった神様、本気で助けてください、助けてくれたら貴方の敬虔な信者になりますから。
ガチャリとドアノブが回った瞬間、ビクッと肩が跳ねたのはとても人間らしい反応だと思います。