71 夫婦のしるし1
夕飯後、ソファでくつろいでいるラァトの隣に座り、いつものように少量のお酒を口にしていたのだがしかし。
本日の日中にヒルランドから聞いた、ミツゲツの事が気になって仕方がない。
むしろ、お酒が入ったせいか、解明したくてしょうがない。
「マモリ? どうした、さっきからソワソワしているようだが」
そうラァトに声を掛けられ、意を決して聞くことにした。
「あ、あのね? 私の故郷にはなかったんだけど、ミツゲツって、どういうものなの?」
風習的なものなら、この聞き方をすれば問題が無い…よね?
「今日、町に買い物に出た時に、ミツゲツなのについてないですねとか言われたんだけど、なんの事かわからなくて」
そう言うと、ラァトの視線が泳いだ。
うむ、これは、”ついてない”っていうのが何の事かわかってるな?
「あー、そうだな。 だが、私とマモリは…契約、結婚ということだから……」
歯切れの悪いラァトに、グラスをテーブルに置いて体ごとラァトの方を向く。
「契約っていっても、それがないと不信がられるようなことなんだよね? それって凄く難しいことなの?」
契約結婚だから…必要以上のことはしたくないとか、そう言うことなら仕方がないのかなって思う。
だけど、ラァトは瞬時に否定する。
「難しくはない。 マモリが許してくれるなら、今すぐにでも」
今すぐどうこうできる問題なのか?
いや、しかし、この食いつきようは……。
「で、一体なにがあれば、おかしくないの? そして、ミツゲツって何?」
ミツゲツ=蜜月
新婚初期、いちゃつきまくる期間、ぶっちゃけていいますとイタしまくる期間、この時期は本来仕事もほとんど行かないのが通例。
ヒルランドが言ってた、蜜月に付いているものというのが。
「キスマーク?」
確かにイチャつきまくる期間なら、付いていてもおかしくはないかもしれないけど。
「本来、結婚したらすぐに一箇所固定の場所を作って消えないように毎日痕をつける、それが既婚の印でもあるからな。 蜜月ならば、それプラス数カ所に痕があるのが普通だ」
……結婚指輪的なものがキスマークですか?
それも消えないように毎日。
「マモリが敢えてそのことに触れないようにしているのだと思っていたが。 そうか、風習が違うのだから知らなかったか」
え、ちょ…! その期待に輝く瞳は…っ!?
期待されると裏切れない、日本人体質が恨めしいです。
ベッドに行こうとか言われたけど、それは流石に身の危険を感じるので却下しました…寝る時は一緒なんだけどね。
少し首周りをくつろげて、吸いつきやすいように傾げる。
一応お風呂に入った後だから綺麗だとは思うが……ちょっといたたまれないので、早く終わらせて欲しいです。
「どこが良い?」
いや、聞かれても困ります。
「つけやすい所でお願いします」
「……わかった」
ラァトに腰を引き寄せられ髪を掻き上げられた。
首の付け根に息がかかり、唇が触れ、濡れた感触がそこを舐めながら肌を吸い上げられる。
覆いかぶさるように私を抱きしめ、何度も首筋を吸っては離れして、少し痛くなったころで唇が離れた。
「ついた?」
「ああ」
腰を抱いたまま、キスマークをつけたところを指で撫でる。
「あと数箇所つけるが……いいか?」
蜜月だからか! うぅぅっ、まぁ仕方あるまいっ!
髪を掻き上げ、首の後ろや耳の後ろ、鎖骨等に付けられました。
終わった時にぐったりしてしまったのは、あれです、酒がまわったんです、きっと!