66 朝餉(むしろブランチ)
さて、魔道具を勝手に作ってしまった私ですが、結果を申しますと何の罰もないそうです。
「………そういえば、マモリは異国の人間だったか」
そういえば、そういう設定でしたっけ?
自分から異国云々って言った覚えは無い気がするんだけど、ラァトがそれで納得するならそれでいいや。
異国人でこの国の法のことを良くわかってない私に教えてくれました。
うん、今後も異国人設定でいけば色々便利かも。
さてラァトが教えてくれたことを要約してみると。
・記述棒を購入するには資格が必要である。
・魔術式記述資格者証を得るには、金を積んで師匠に弟子入りをし、師匠から認められ、魔道具協会の行う資格試験に合格する事が必要である。
・資格を得た後は、師匠の下で修行を続けるもよし、独立するもよし。
・しかしながら、魔道具の不正販売については罰則があるが、魔道具を自主制作し自分で使う分には罰則がない。(自動車が敷地内ならば無免許でも問題ないのと同様)
そんなわけで、とりあえず罰はなかったのですが。
「年間何人もの人間が魔道具の製造で怪我をしたり…場合によっては死んだりしているんだ。 だから、頼む……」
テーブルの上に置かれたラァトの手がギュッと握りしめられた。
真剣なその表情に気圧されて思わず頷いてしまった。
……本当は魔道具に未練たらたらなのに。
「それで、記述棒はどうやって手に入れたんだ」
おぉぅ…っ!
食後のお茶を飲みながら、ラァトに突っ込まれて視線が宙を舞う。
「まさかとは思うが、私が何処かに落としていた…か?」
不安気に聞かれて首を横に降る。
「落ちてないよ」
むしろ落としてくれたら有り難いんだけどね!
「実は、街で買い物をした時に見知らぬ女の子から買いました」
素直に教えるとラァトの目がスゥっと細められ、購入した際のことを根掘り葉掘り聞かれましたので、すっかり自白しておきました。
このラァトのお仕事モードの眼光の前に隠しごとができる一般人は少ないと思うのですよ。
今日はお休みだったはずなのに、急に用事が入ったからと仕事に行くラァトを見送りました。
行ってきますの出掛けのキスが頬じゃなくて唇にチュッに変更になりました。
まぁ、良しとします。