63 応え…?
君に……好きだと、伝えても、いいだろうか――――――
えぇと、それってもう伝えてるじゃーんってツッコミを入れたほうがいいんでしょうか!?
動揺している私の沈黙に、私を包むラァトの腕が強くなる。
これは、実質的な告白だと思うのですが、ほ、本気なのかな。
本当に私のことを好きだって思ってくれてるの?
だって、虹色魔石を確保する為だけに結婚したんだよね?
私は守ってもらう為だけに結婚に承諾して……。
なのに、好きだなんて言っていいの?
本当に私の事が好きって……。
息が詰まって、さっきまで冷静だったはずの頭がくらくらする。
胸が熱くなるのはなんでなんだろう。
これがこたえなんだろうか…。
そう思うのに、声が出ない。
えぇと、なんて返事すればいいんだろう?
不意に私を抱きしめていた腕が緩み、小さなため息が聞こえた。
「……悪かった」
腕が離れる。
ラァトが起き上がり、ベッドを降りようとする。
え? え? えぇぇ!?
ちょ! ちょ! ちょっと!!
「ちょっと待ったぁぁぁ!!!」
ベッドから降りようとするラァトを体当たりで引き止める。
立ち上がりかけていたラァトの腰にタックルです。
ストンとベッドに座ることになったラァトを、逃すまい! と座ったラァトの膝の上に向かい合わせで座る。
膝の上にいるのに、目を合わすのに上向かなきゃならないってどうなのよ。
突飛な私の行動にラァトの目が大きく開かれる。
ああもうっ!
「いいよ」
キッパリと言う。
「………」
なのに、なんだその沈黙は。
”スキって言って、いいよ”って言えば通じる?
でもこれじゃ、不遜すぎるよね。
そうじゃなくて、そうじゃなくて!
ラァトの裸の上半身にぎゅっと抱きつき、至近距離で見上げる。
”私も、好きって言っても良い?”
のど元までせり上がっていたその言葉を、私は咄嗟に飲み込んだ。
気付いたのだ、間一髪だったかもしれない。
ラァトを跨いだ太ももにあたる、硬質な物体X。
!?な ん な の そ の サ イ ズ は!?
ダメだ、こんな場所(ベッドの上)でこんな格好(ラァトさんぱんつ一丁、脱がせたのは私だけど)で!
このまま始まってもおかしくありません!
えぇ、えぇ! そうですとも!
いい年をした大人です、思いが通じあえば、体も通じ合いたくなるというもの。
ですが、無理です。
ソレを受入れるキャパシティは、持ち合わせておりません。
冷静に分析を行った結果、突発的に発しそうになった言葉はお蔵入りし。
目下の課題は、現状をどのように打開するかに尽きます。