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59 本気の怒り

 出来上がったポーチに色々なものを入れたり、キーボードで空間サイズの変更をしたり、異空間に腕を肩まで突っ込んで中をぐるぐるかき混ぜたりして、遊…じゃなくて、動作確認!


 

「―――マモリ」


 ぎくり……。


 聞きなれた低い声に名を呼ばれて硬直した首を、無理やり居間のドアに向ける。

「や、やぁ、お帰りなさいませ。 きょ、きょうは、早い、ね?」

 さりげない動作で試作のポーチとストラップを後ろに隠しながら、ラァトにお帰りの挨拶をする。

 完成品のポーチは腰にあるから、むしろ隠さない方がいいだろう。

 い、嫌だなぁ、その目。

 ツカツカと近づいてきたラァトに背中に隠した腕を囚われる、勿論手の中には実験の成果であるポーチとストラップがあるわけで。

 手を片手で掴まれたまま、物を取り上げられる、けたたましく鳴る鈴にラァトの眉間にシワが寄る。


 ギシッと、腕を握るラァトの手が強くなった。

 ラァトが手にしていたストラップをテーブルの上に放り投げると、音がやんだ。


 握られた腕が、痛い、痛い、痛い。


「何をしていた」

 ひぃぃぃっ

 地を這う声、剣呑な眼光、怒り心頭のその表情。


 気を失うかと思いました、いや、いっそ気を失いたかった。


「っ……ごめ、なさっ」

 青痣になるのが確実の腕の痛みを堪えながら、謝る。

「何をしていたかと聞いている」

 低い、低い、低い声。

 ぴゃぁぁぁぁぁっ

 泣いてもいいですか!? 泣いてもいいですか!? 泣かないけどねっ!!

「ま、魔道具を作って、ましたっ」

 歯を食いしばって痛みとか諸々を堪えて答える。

 泣いてたまるかー!

「前に、私が何と言ったか覚えているか」

「ご、ごめ…っ。 お、覚えておりますっ」

 反射で謝りかけたら鋭く睨まれ、慌てて言い直す。

「何と言ったか復唱してみろ」

 怖っ!! 超怖っ! 視線で殺される!

「ま、魔道具を作るのは危険を伴うので、作ってはいけないとっ」

「そうだ」

 ちゃんと答えたのに、なんで腕を握る力が増すんですかー。

 泣くっ、もうそろそろ限界っ。

「不用意に魔道具を製作し、暴走する事故が過去に何度もあった、無論今もある。 死ぬことだってあるんだっ」

 ミシッ

 骨が軋む音が聞こえました。

 反省とか反省とか反省とかもうそんなのどうでもよくて、とにかく腕を離して欲しいっ!

 もう、ラァトが何言ってるのか痛みでわかんないしっ!

 我慢の限界がキて、私の左腕に食い込んでいるラァトの指を必死で剥がそうと足掻く。

 痛みで涙がボタボタと零れ落ちる。

 がむしゃらにラァトの手から逃れようと暴れて、足でラァトを蹴る。


 多分、攻撃が決まったとかじゃなくて驚いて正気に戻ったんだと思う、緩んだラァトの手から腕を取り戻したが消えない痛みに、床の上に膝をついて腕を押さえて痛みに悶える。


 痛い、痛い、痛い、痛いっ


 腕を抱えて背中を丸めた私に、ラァトが狼狽している。

「だ、大丈夫か?」

 ビクビクした声に、私の脳の片隅でカチーンと音が鳴った。

「大丈夫なように、見える?」

 ぎりっと奥歯をかみしめて、涙でボロボロの顔を上げる。

 掴まれていた腕は真っ赤に腫れあがり、打撲を通り越してにヒビが入ってるんじゃないのか!?


 ありえない。



 制止するラァトを振りきって自室に逃げ込んだ。

 新居に引っ越してきて初めて自分のベッドを使いました。

H24.4.17

『骨折なしはヒビが入って』を訂正。


拍手にてご指摘いただきました(ヒビも骨折ということで)。

拍手の人ありがとー!!


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