58 ポーチ完成
結局三日間下書きと実験に費やした。
そして清書に一日。
実験の産物として、異空間につながってるだけのポーチが1つ、空間自体は50センチ六方なので大きくはないんだけど、こちらから中は見えず、時間の固定をしてあるだけなので怖くて手を入れて取り出せない、取り出す時は逆さまにして振るという強行手段しかない、メリットは異空間に保存するので、入れたものの重さが無いということ…空間の数値を書き換えて大きくして無限ゴミ箱として使える優れものです。
他にも盗難防止の防犯ブザー的なもので、私以外の人間が持つと鳴り続ける鈴付きストラップとか。
四日間昼食もろくに摂らずに頑張ったお陰で、なんとか完成したポーチがここに!
私がいつも魔石を入れて持って歩いているポーチだ。
革製で腰のベルトに通せる優れもの。
ポーチを一度ばらしてから記述棒でみっちり式を記入し、その上から薄い革を貼りつけて擦れて消えないようにしてもう一度縫い直した。
ポーチの横に作った小さなポケットに虹色魔石をセットすれば、魔道具として起動する。
ドキドキしながら魔石をポケットに入れる。
起動したからといって、一見なにも変わらないので実感が薄いが、問題はここからだ!
ポーチのスナップを外し、フタを開く…同時に検索窓が現れた。
よしよしよしっ!!
小さくガッツポーズをしながら、次は検索だ。
手元に現れた主要キーしか無いシンプルなキーボードで * を入力してエンターを押し、中に入れたものを総て表示させる。
まだ何も入っていないので、現れた一覧表には何も表示されない、よし、これもオッケーだ。
次にポーチに小さめの魔石と中くらいの魔石を一つずつ入れた。
表示させたままだった一覧表に”虹色魔石(小):1”と”虹色魔石(中):1”が表示された。
なんというレスポンスの早さ!
よしよし、じゃぁ、魔石小を選択して個数を指定。
命の危機的ドキドキ感だよ、手、入れて大丈夫だろうか、いや、大丈夫だよね、とりあえず小指を…。
よし、小指よしっ!
そろそろと指先からポーチに手を突っ込んでゆく、手がすっぽりとポーチに入ったが異常なし、その指先にコツンと固いものがあたったのでそれを掴んで手を引き出す。
「――――っく! やったぁ……」
手の中にある小さな魔石を握りしめ、感動に打ち震えた。
こうして保身の第一歩が達成されたのであった――――むふふん!