56 怒られた
「……ただいま」
「あ、お帰りなさい」
居間のドアを開けたまま固まるラァトに、挨拶を返すが…工作に夢中で、夕飯作るの忘れてた。
「ごめんね! いま片付けて、ご飯作るからっ!」
製作途中で出たゴミはあらかた片付けてあるので、あとは完成した作品であるライトを退かすだけ。
出窓に一時退却させていると、ラァトがそのライトを取り上げてしげしげとそれを眺めている。
「マモリが作ったのか?」
「案外なんとかなるもんだね。 ほら、式を継ぎ足して、このパネルをタッチしたら色が変化するようにしてみたんだけど、面白いでしょ?」
言いながら、金属部分をタッチして、赤・青・黄色・緑・橙・消灯と変えてみせる。
「………」
あれ? うけなかった? あんまり実用性無いからしょうがないか。
じゃ、こっちはどうかなぁ。
「あと、ここについてるダイヤルを回すと光量が調節できるんだよ」
実演してみせる。
最大光量は眩しすぎるけど、ダイヤル3ぐらいだと夜道を歩くのに丁度いい。
「………」
むむむっ、これは結構実用性がある機能だと思ったんだけど。
「確認するが、これはマモリが作ったのか?」
硬いラァトの声が確認してくる。
「はい、まだまだ荒削りだけど、仕組みはわかったから、次からはもっと完成度の高いの作ろうと思…」
って、家事をおろそかにしちゃダメだろう私ーっ!
「――――ごめんなさい」
調子に乗りすぎました、ごめんなさい。
ショボンとした私をソファに座らせたラァトは、自分も私の隣にすわって、半身をこちらに向けたので私もラァトの方を向く。
ラァトは私の両手を取って、本来ならば魔道具は工房に師事して術式を教わるものだと言った。
えぇぇ? だって、あんなに簡単にできるのに?
「……簡単ではない。 魔道具の構造を知らねば出来ぬものだ」
へぇ~……?
首を捻る私に、ラァトは小さくため息を吐く。
「それに、もしも魔道具が不完全なもので暴走でもしたらどうする。 実際そういう事故で年に何人も怪我をしたり…死んだりすることもあるんだ、だから無闇に魔道具を作ってはいけない」
そんな簡単に暴走とかするんだろうか?
だがまぁ、ここは素直に承諾しておこう。
「わかりました…自重します」
その日の晩御飯は久しぶりに外に食べに出ました……酸味が…酸味が……。