52 新居へ
「………おやこ?」
そう聞きたくなるのはわかります。
この身長差なので私もそのように見られる自覚はありますし、今まで通ってきた町でも似たような反応でしたから。
でもラァトは違うようで、ギロリとした視線で門番を睨みつけている。
「夫婦だ」
地を這う声、引きつる若い方の門番。
「失礼致しましたっ!」
慌てて頭を下げさせる、年上の門番。
無事門を通りながら、横を歩くラァトをちらりと見上げる。
………大人気ないなぁ。
私の心の声が聞こえたのか、私の視線に気づいただけか、ラァトがこちらを見下ろす。
「どうした? 疲れたなら荷台に乗るか?」
気づかってくれるラァトに、多少大人気なくてもいいかな、と思ってしまう。
「大丈夫、歩きます」
へらっと笑って前を向くと、頭をグローブのような手でそっと撫でられた。
門を3つ潜り…ってことは、官舎と富裕層の住む地域だね。
一般居住区域もそうだけど整然と区画整理されている。
内側に最も近い区画に建つ、同じ建物が並ぶ一つの前に馬車を泊めた。
「ここだ」
家に番号がふってあるので間違えなくていいねー。
番号以外はまるっきり同じ形だから…迷子になりそうだけど。
そして、既視感。
誰も住んでなかったのか? いや、生活していたらしい痕跡はある。
一階の玄関から居間、トイレ、シャワーのみに。
この生活動線は……。
ちろりとラァトを見上げる。
まぁ、先住民に思いを馳せるのは止めておこう、会うことも無いだろうし。
家に入る前に、肌身離さず持っている小袋から2センチ程の虹色魔石を取り出しラァトに渡した。