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49 いつもより余計に喋っ……

 ひとしきり泣いてすっきりした。

 うん、当分は泣くの我慢できると思う。




「―――これから、私たちの住む街は」


 静寂をそっと破り、ゆっくりとした言葉で少しかすれた低い声が話し始めた。


「ルルージュという街を。 …マモリも魔石を扱うなら知っているか?」

 聞かれたので首を横に振る。

 そうか、と呟かれたあとに優しい声で話が続けられる。

「我が国の…いや、この世界で最も多く、魔石を産出する地方だ。 我が国の貿易のかなめと言っても過言ではない」

 へぇ~、へぇ~。

「魔石は地下深くにある鉱脈から採掘するのだが、その採掘現場の入り口を守るように都市が形成されている」


 社会の勉強を彷彿させますねラァト先生。

 そうそう、高校の時の社会の先生はテストに100問出す鬼畜だったな。

 お陰で毎回平均点ぎりぎりで、社会科が嫌いになったよ。


「地下への入り口近くには国軍の駐屯地があり、その周囲に第一の防衛壁があり、その外側にまつりごとに関係する人間の宿舎や、富裕層が住む第一区画がありその外側に第二の防衛壁がある、さらにその外側は商業区画と平民層の暮らす第二・第三区画があり、その外側に第三防衛壁があって、更にその外側に第四防衛壁がある」


 ……脳内でドーナッツが出来上がったよ。


「要塞と言っても過言ではないだろう。 王都よりも厳重な作りだ」

 え、えぇぇぇー

「それでいいの!?」

 思わず声をあげれば、頭の上でラァトが小さく笑った。

「王都は王都で騎士も魔術師も多く常駐しているし、ちゃんと安全は図られているから大丈夫だ。

 さぁ、日が登ったようだ」

 

 幌の隙間から太陽の光が差し込んでいる。


 先に起き上がったラァトが、起き上がりかけた私を見下ろし。

「マモリ、泣きたいときはいくらでも泣けばいい。 ただ……」

 少し迷ってから言葉を続けた。

「泣く時は私の腕の中にしてくれ」

 そう言うと、照れたように少し笑って、中途半端な姿勢で固まっていた私の唇に触れるだけのキスを落としてそそくさと荷台から降りていった。



 ……あ、あれ? こんなキャラだっけ? 旦那様(仮)?

 お陰様で涙が吹っ飛びました。

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