30 お掃除
「”浄化”」
まるで2人が同時に発声しているような不思議な声で言葉が紡がれると、ラァトの掌の上の魔石が砕け散り、同時に途方に暮れるほど埃まみれだった室内が一瞬のうちに輝きを取り戻した。
初めてナマの魔法を見て、ぽかんとする私。
あの淀んでいた空気も清々しいものに変わっている。
恐る恐る室内に入り、大きく場所を取っているベッドへ近づき掛け布をめくってみる。
「中まで綺麗になってるっ」
心なしか、リネンから爽やかな香りがする気がする(気のせい)。
「当然だ。 今の魔石の大きさですら、この部屋をここまで浄化することができるんだ、虹色魔石の凄さが判るか?」
全然わかりませんが。
「もっと大きな魔石だったら、この家丸ごと浄化できるの?」
できる、との答えに、大急ぎで居間に置いてある荷物から、魔石のストック袋を1つ持ってくる。
「このくらい? もっと大きい方がいい?」
2センチ魔石を取り出してから、これじゃ小さいかと3センチ魔石も取り出した私の手から、ラァトは2センチの魔石を拾い上げた。
「…コレで十分だ」
「じゃ、それでお願いします!」
すばらしいね魔法って! 異世界に来て初めて魔法に大感激です。